69. フェリシア⑤ 報告
「昨日あの後どうだった?」
エリックはにやにやしながらフェリシアに尋ねた。
いつもの昼休み、いつもの食堂には、ヴィルノアとバルトを除きいつものメンバーが集まっていた。
「何かあったのか?今日のフェリシアは挙動不審だ。」
シルビアは首を傾げた。フェリシアは何と答えていいのか分からず黙っていると、代わりにエリックがかいつまんで昨日の出来事を話した。
「でだ、昨日あの後、すぐにヴィルが来ただろう?」
「エリックはノアが見てるって気付いてたの?」
「ああ、だからちょっとだけ悪戯をしたんだ。」
エリックは悪戯っ子な笑みで答えた。
「悪戯?ノア、すごい慌ててたっていうか、怒っていたっていうか、焦っていたっていうか・・・とにかく大変だったんだよ!しかもキスしてたのかって聞いてきたんだから。」
「そうだろうな。ヴィルからそう見えるように動いたからな。だからヴィルはすぐ来ただろう?それで分かり易く、独占欲丸出しの嫉妬して見せたろう?なっ、分かり易かっただろう?」
エリックはぱちんとウインクをした。
「た、確かにノア、やきもち妬いてた。」
「だろうな。で、分かったのか?」
「はははは・・・分かったかな。」
「分かり易いからなヴィルは。特に最近はフェリシアに対する感情を隠してないしな。で、モヤモヤの正体は俺が言ったので合ってたか?」
「うん、合ってた。それで分かったの。前にエリックに婚約者公認の浮気って言ったことあったでしょう?昨日からずっと今までのこと考えたり思い出したりしてるのだけど、私も浮気してたんだなぁって気付いたの。人のこと言えないよね・・・。」
フェリシアは両手で顔を覆った。
「おっ、それって、・・・自覚したのか?」
フェリシアは顔を隠したままこくこくと頷いた。
「おっ、良かったなっ!ヴィルには言ったのか?」
フェリシアは首を横に振った。
「言ってないのか?フェリシアらしくないな。」
エリックは首を傾げた。
「今日は会ってないの・・・。」
「何でだ?」
「だって・・・自覚はしたよ。だけど今までのこと思い出したら、私ってかなり酷い女じゃない?鈍いにも程があるなって。そう思ったら情けなくなってしまって・・・ぐちゃぐちゃで考えがまとまらなくて・・・とりあえず寝たら解決するかなって思って寝たけど起きてもやっぱりぐちゃぐちゃで・・・ダメ・・・どんな顔して会えばいいっていうの?分かんないもん。」
フェリシアは頭を抱えてテーブルに突っ伏した。
「はははっ、良かったな、フェリシア!」
エリックは嬉しそうに笑った。
フェリシアは勢いよく顔を上げるとエリックを睨んだ。
「ちっとも良くないっ!もう、朝からどうしていいか分からなくて、やみくもに全力疾走したいくらいなんだよっ。ぐちゃぐちゃだよっ。」
フェリシアは口をとがらして顔をプイっと横に向けた。
「ははっ、ずいぶん混乱しているんだな。初恋って事でいいんだよな?」
エリックはニヤッと笑った。フェリシアはこくんと頷いた。
「やっぱり良かったでいいよな。恋したかったんだろう?」
フェリシアはこくんと頷いた後、言った。
「そうなんだけどごちゃごちゃでグルグルで落ち着かないの。恋を自覚したことは純粋に嬉しいし何だか恥ずかしい。それとは別に今迄ノアに言ったことが無神経過ぎだったことに気付いてしまって罪悪感が山のように高く積みあがっているの。エリックに対しても酷い婚約者だったって反省中なの・・・。」
フェリシアは再び俯いて、スカートをぎゅっと掴んだ。
エリックはふぅと息を大きく吐き、言った。
「俺とのことはお互い様だ。フェリシアは酷い婚約者ではなかったぞ。むしろ俺のことを考えて、大切にしてくれていたじゃないか。俺はフェリシアが婚約者でよかったし、フェリシアには感謝している。」
フェリシアが顔を上げるとエリックが優しく微笑んでいた。
「俺がエリザベスと婚約できたのはフェリシアのおかげだ。感謝している。」
エリックは隣に座るエリザベスに視線を送った。それまで黙って事の成り行きを見ていたエリザベスはエリックと視線を合わせると頬を赤らめつつにっこり微笑んで、こくんと頷いた。
「あとヴィルに関しては俺と婚約していたんだから仕方ないと思うぞ。ヴィルの本音は隠していた?、フェリシアにだけは隠していたんだから、な。ヴィルは何も気にしていないぞ。むしろ完全に無理だと思っていたフェリシアが手に入るってんで、相当浮かれてるぞ。堂々とフェリシアに好きっていえるって言ってたぞ。ん-、今までもしょっちゅう言ってたから変わらない気がするが・・・。」
「けな気ですよね、ヴィルノア殿下は。」
エリザベスは頬に手を当ててほぅっと小さく息を吐いた。
「フェリシアの今の気持ち聞いたらヴィルは喜ぶと思うぞ。」
エリックが自信満々で言うと、その横でエリザベスもこくんと首を縦に振った。。
黙って聞いていたシルビアもぼそっと言った。
「ヴィルの為にも早く言ってやれ。」
オスカーも首をうんうんと縦に振る。
「そういうことだ。フェリシア、頑張れっ!」
エリックはにかっと清々しい笑顔で言った。他の皆もこくんと頷いた。
「うん、ありがとう。頑張るよっ!」
フェリシアは両手を握りしめ力強く頷いた。




