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ガチ恋っ!!ってことで  作者: ゆ


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66/169

66. フェリシア② 感情に名前を付けましょう

「覚えているか?あの時もここに座って話しただろう?」

「うん、覚えている。あの時もここに座ったよね。」

「ああ、あの時お前は俺がエリザベスが好きだと言ったら、楽しそうに浮気を許すって言ったんだ。婚約者公認の浮気だって言ってな。それで応援できなくてごめん、と。」

「言ったわ。エリックもそれを聞いて笑っていたよね。」

「ああ。俺はその時、フェリシアの婚約者だったよな。でもお前はちっとも嫌そうじゃなかったし、むしろ俺の気持ちが分かって嬉しそうにしていたよな。」

「そうだね。エリックが恋したの、なんだか嬉しかったもの。それに羨ましかったかな。」

「ヴィルは別に他の子を好きだって言ったわけではないだろう?ただ、他の子に言い寄られてただけだ。長年婚約者だった俺の時はさらっとしているどころかむしろ応援したいと思い、先日婚約したばかりのヴィルの時はもやもやぐちぐちと浮かない顔で悩んでいるんだ。何だろうな、この違いは?」

 エリックは悪戯っ子のような顔で聞いた。


 フェリシアはエリックの言葉にはっとした。言われればその通りだった。

 エリックの気持ちが分かった時は、婚約という制約を自分の力では解くことができず、エリックの恋を応援できないことを残念に思っただけでモヤモヤはなかった。エリックとエリザベスが話しているのを見ても、エリック頑張れって心の中で思っていた。話さないでよっ、なんて思ったことはない。

 ではこれがヴィルノアだったらどうなんだろうか。ヴィルノアが他の子を好きっていったら、その子と二人っきりで話していたら・・・いつも自分に向けられている笑顔をその子に向けていたら・・・エリックの時みたいに笑顔で応援はできないと思った。

「ノアの応援はできないかな。想像しただけなのに、ここがぎゅって苦しい。」

 フェリシアは胸元をぎゅっと掴んだ。

「ははっ、分かっているじゃないか。俺もさ、時々今のフェリシアと同じような気持ちになるんだよなぁ。エリザベスが他の男と笑顔で楽しそうに話してたりすると、かわいい笑顔を他の男が見るなってな。エリザベスにその気がないことは分かっていても、関係なく相手の男を不愉快に思うんだ。俺の場合、そこに相手の男を消し去りたいっていう黒い感情が足されるんだけどな。」

 自嘲気味に笑うエリックのまとう空気は黒かった。


「フェリシアもヴィルが他の女の子と二人でいるのを見てむっとしなかったか?なんでって思わなかったか?」

「・・・嫌だったかも。」

「ヴィルってモテるなぁって他人事みたいに思ったか?」

「・・・ノアは私と婚約したのに、まだ告白してくるんだぁ、って、何のためにって思ったよ。」

「ヴィルに対して不愉快だったか?それとも相手の女の子に対してか?もしくは二人にか?」

「うーん、呼び出した子に対してだけかな。」

「不愉快だったんだな。」

「・・・うん、嫌だった。」

「それなら俺のと一緒だ。」

「一緒?」

「ああ、一緒だ。しかも俺はその感情に付ける名前を知っているぞ。フェリシアは分かるか?」

 フェリシアは横に首を振った。

 エリックはニヤッと笑って言った。

「それはだな、『独占欲』と『嫉妬』だ。『嫉妬』は『やきもち』とも言うなぁ。」

「・・・。」

 フェリシアはキョトンとして、眼を見開いた。

「ははっ、分かっていなかっただろう。」

「うん、まだ頭が追い付かない。」

「そうだな。そういう顔してる。」


 エリックはチラっと校舎の方を見ると、何かを思いついたかのようにニヤッと笑った。

「独占欲や嫉妬がどんなか教えてやろうか?分かり易い見本をみせてやろうか?」

「?・・・うん。」

「フェリシアが分かるように協力しよう。」

 エリックはすっと立ち上がり、座っているフェリシアの正面に立った。そしてベンチの背もたれをフェリシアを囲むように両手で掴んだ。フェリシアはエリックが何をしようとしているか分からず、じっとエリックを見ていた。エリックはフェリシアの耳元に顔を近づけ言った。

「俺はここから去る。死にたくないからな。フェリシアはしばらくここに座っていて。すぐ分かり易い見本が来るから。」

 フェリシアが頷くと、フェリシアの顔の正面に重なるようにエリックは顔を動かし、すっと離れた。

「じゃあな。」

 軽く片手を挙げ振ると、エリックは足早に去っていった。

 エリックの後ろ姿が見えなくなると、フェリシアの周囲には再び静寂が訪れた。穏やかに風が通り抜け、木の葉が擦れるカサッという音がかすかに聞こえていた。

 フェリシアは再びぼんやりと中央の木を眺め、エリックとの会話を思い出していた。


 時間を置かず、バタバタと誰かが走っている音が聞こえてきた。フェリシアはその足音が自分に近づいていることに気付き、足音のする方を見た。ヴィルノアが走って近づいてきていた。

「あれっ、ノア?」

 フェリシアはぼんやりと呟いた。

「シアっ!!」

 ヴィルノアはフェリシアの傍までくると止まって、膝に手をつくとはぁっはぁっと肩で息をし荒い呼吸を整えた。そしてフェリシアの隣に座り、がばっとフェリシアを抱き締めた。

「ノ、ノア!?どうしたの?」

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