63. カミラ⑨ その後
「フェリシア様の婚約者ってエリック殿下だよな・・・?」
エリック達が生徒会室から出て行った後、生徒会役員達は困惑していた。
「だよなぁ。でもヴィルノア殿下に抱きしめられていたよな。」
「そうだよね。どういうことかな?」
「浮気とか!?でも、おそばに居たエリック殿下は何も気にされていないようでしたわ。それに、フェリシア様も、その、嫌がってなかったわよね。」
「ああ、フェリシア様はさ、生徒会室にいる間ほぼヴィルノア殿下の腕の中にいたよな。」
「そうだなぁ・・・。」
生徒会役員の面々は頭に?マークを沢山浮かべた。
会長は手をパンと一つ叩いて言った。
「はいっ、その話はここまでで!さっさと仕事しますよ。事件について学園への報告書を作りますよ。」
「「「「はーい。」」」」
役員達はそれぞれの席に着き、書類の作成を始めた。
事件について生徒会と学園は協力して真相解明に尽力した。再度カミラは事情を聴かれた。そしてカミラ嬢の両親も呼ばれ、家庭での様子などを聴取した。そしてカミラがフェリシアにしてきたことが説明され、両親は驚き、最初は信じることができなかったようだ。そして学園と両親とでカミラの今後について話し合われた。
方々から寄せられた情報から分かったことはカミラが心を病んでいるということだ。元来カミラは人付き合いが不得手で幼い頃から内に籠りがちな所があった。その傾向が年を追うごとに強くなり、親でさえも持て余していたという。今回の一連の嫌がらせは婚約解消の際に聞いたフェリシアの名がカミラの記憶に残り、そこからフェリシアを恨み、嫌がらせに発展したのではないかと。憶測のような言い方になるのは、カミラ本人に動機を聞いてもフェリシアのせいで婚約が解消された、フェリシアがいなくなればいい、としか話さないのだ。両親はカミラがフェリシアの悪い噂を流すためクラスメイトに自分から話しかけていたということに驚いていた。というのも自宅では両親や使用人から話しかけない限り自分から何か話すことがないからだった。
そしてそれは学園に入ってから友達もできず、婚約者とも上手くいかず、家族からも腫物を扱うように距離を置かれ、とカミラは孤独の中、心を少しずつ病んでいったようだった。
学園と両親の話し合いの結果、カミラは学園を自主退学し領地で監視付きの軟禁生活をすることとなった。そして専門の医師からカウンセリングを受けつつ、心の健康を取り戻せるようにしていくとのことだ。
この処置はかなりカミラに優しいものだった。フェリシアは王子の婚約者であり、将来の王族に連なる者だ。そんなフェリシアに散々嫌がらせをし、けがをさせるかもしれない行為までしていたのだ。それは重い罪に問われても何の文句が言えないところなのだが、フェリシアがそれを望まなかった。カミラがまだ学生で、心も病んでいたこともあり、重い処罰にならないようフェリシアは学園側に訴えていた。
この事件はこうして幕を閉じた。
この事件から数日経ったある日、王室から三つのことが公表された。
一つはエリックとフェリシアの婚約が解消されたこと。
二つ目にそれに伴い隣国の王女エリザベスとエリックの婚約が整ったこと。
三つ目は新たにヴィルノアとフェリシアの婚約が結ばれたこと。
その発表は学園に通う生徒達はもちろん、市井の者達の驚くところであった。それはエリックとフェリシアの仲が良いことは誰もが知るところだったからということが大きい。しかしエリックとエリザベスとの婚約が隣国との友好関係の為と発表されたこともあり、多くの人に好意的に受け入れられた。また、それまで婚約者の居なかったヴィルノアに婚約者ができたことも人々の喜ぶところとなった。しかもエリックとの婚約がなくなり、相手の居なくなったフェリシアが選ばれたことも好意的に受け入れられた。もともとフェリシアは王子達と仲が良く、公爵家の令嬢という申し分のない身分であることは誰でも知っていることだったからだ。
「やっと婚約者になったな。」
エリックはにかっと笑ってエリザベスに言った。
「ずっと大事にする。これからよろしくな!」
ほんのり耳を赤くしたエリックはこれ以上ないくらい機嫌のよさそうな顔をして笑っていた。
エリザベスはその笑顔に見惚れた。そしてエリザベスは真っ赤になった両頬に自身の両手を当てた。
「はいっ!わたくしこそ、よろしくお願いしますわ!」
エリックはそっと頬に当てていたエリザベスの手の上に自身の手を置き言った。
「真っ赤だな。かわいいな。」
「!!」
「ははっ、もっと赤くなった。」
エリザベスは耳まで赤く染めていた。
「もう、僕のシアだよね?」
ヴィルノアは満面の笑みでフェリシアを抱き締めた。
フェリシアはにっこりと微笑んでキュッとヴィルノアのシャツを掴んだ。
「ふふっ、それならノアは私のなの?」
「もちろん。僕は今までもこれからもずっとシアのものだよ。知らなかった?」
「うん、知らなかったかな。」
「そう、なら改めて言うね。僕はいつでもどこでもシアのものだからね。分かった?」
ヴィルノアは目を細めて蕩ける様な笑みを浮かべ、フェリシアを見ていた。
フェリシアは心臓が駆け足をはじめ、ほんのりと頬が熱を持って赤らんできたのが分かった。
「・・・分かった。」
「シア、好き。ずっと大好き。」
「ふふっ、知ってる。」
二人は顔を見合わせにっこり笑い合った。
「良かったなぁ、ヴィル。」
バルトはうっすら目を潤ませて言った。
「そうだな。」
シルビアはうんうんと頷いた。
「・・・エリック、あなたでもそんな顔ができるんですねぇ。」
オスカーは感慨深げに頷いた。




