62. カミラ⑧ 真相
エリック達の手によって捕まえられたカミラは一先ず生徒会室に連れていかれた。そして生徒会長を含め、今回の事件について話し合いをすることとなった。
第二王子の婚約者であるフェリシアに危害を加えようとしたことは、小さな問題ではなかった。その為、事件の解決に生徒会も手を貸すことになっていた。
「なぜフェリシアの背中を押そうとしたんだ?一歩間違えればフェリシアは死んでいたかもしれないんだぞ。」
エリックはできるだけ感情を込めずに椅子に腰かけ項垂れているカミラに聞いた。
「・・・いなくなれば良かったのよ・・・。」
カミラは勢い良く頭を振った。
「フェリシア様なんていなくなればいいのよ!」
「君はフェリシアとは何の接点もないように思うが。」
「あるわ!私の婚約がなくなったのはフェリシア様のせいだもの!!私から彼を奪っておいて、自分は殿下たちにちやほやされて・・・何様だって言うのよ!」
「君の婚約解消は両家の総意だったと聞いたが違うのか?」
「総意なわけないじゃない!私は認めていない。彼が一方的に婚約解消を言ってきて、お父様たちがそれを受け入れただけよ!」
「相手は何で婚約解消を望んだんだ?」
「学際でのフェリシア様を見て思うところがあったと言っていたわ。やっぱりフェリシア様のせいよ!」
「それって、フェリシアに何の非もないよな。」
エリックは呆れ顔で言った。
カミラはスカートをギュっと握り、唸るように言った。
「フェリシア様がいけないのよ・・・フェリシア様さえいなければ・・・いなくなれば・・・。」
突然カミラは立ち上がり、フェリシアに飛び掛かった。ヴィルノアはさっとフェリシアを抱き寄せた。オスカーはカミラの後ろに回り、すっと手刀をカミラの首元に落とした。その場に崩れ落ちるカミラをオスカーは抱きとめた。
「話になりませんね。お休みいただきましょう。」
オスカーは冷めた目でカミラを見た。
「そうだな。誰か人をつけておくか。」
エリックはバルトに目配せをすると、バルトは頷き生徒会室を出て行った。
「カミラ嬢の元婚約者は確かこの学園の生徒だったな。」
生徒会役員の一人がこくんと頷き言った。
「今呼びに行っています。」
するとノックの音がし、一人の男子生徒が入ってきた。焦げ茶色の髪を短く切り揃え端正な顔をした少年は、部屋に入った途端、明らかに動揺し怯えた顔をした。それもそうだ。生徒会役員だけではなく、王子達に高位貴族の令息令嬢がいるのだ。しかも元婚約者が気を失っている。
「あ、あの、僕に何か御用でしょうか・・・。」
「君はカミラ嬢の元婚約者で間違いないか?」
エリックは尋ねた。
「は、はい。僕、いえ私はハノイ伯爵家嫡子カインと申します。カミラ嬢とはこの夏まで婚約しておりました。」
カインはおどおどしながらもしっかり答えた。
「こんなこと聞くのは失礼かとは思うのだが、大事なことなので答えてほしい。婚約を解消した理由は何だ?君からの申し入れだと聞いたのだが。」
「はい、私から申し入れました。もともとは私の父と彼女の父が学園の同級生で仲が良く、ちょうど両家の子が男の子と女の子で近い年齢であったこともあり、婚約することとなりました。彼女とは度々お互いの家を訪れるなどして交流を図ってきました。幼い頃は良かったのですが、成長するにつれて性格が合わないと思うようになりました。それでも心を通わせる努力はしたのですが、どうしても彼女に好意を寄せることができませんでした。彼女が10歳になったくらいでしょうか。下を向いてブツブツと何かを呟いたり、よく分からないことを書き綴った手紙を寄こしたりと、私には彼女が何を考えているのか分からず、むしろ・・・こういう言い方はどうかと思うのですが、気味が悪くなりました。彼女が学園に入学してからはそれが一層ひどくなりました。もうこのままでは結婚してからも上手くいかないと思いました。政略結婚だとしても、お互い尊敬しあえる関係でありたいのです。彼女とは・・・とても無理です。」
カインは大きく首を振った。
「あ、あの、カミラ嬢に何かあったのですか?」
「ああ、少しな。彼女が婚約解消の原因がフェリシアだと言っていたんだ。しかし今聞いた限りだと、フェリシアは何も関係ないよな。」
エリックは首を傾げた。
カインは顎に手を当て考え込んでいたが、はっと目を見開いて言った。
「そういえば、婚約解消の話し合いの際に、学園祭で見たフェリシア様とエリック殿下のような婚約者とは築きたい、と言いました。そしてカミラ嬢とは無理だ、とも言いました。」
「それ以外にフェリシアの名を出したことは?」
「ありません。そもそも学園に入ってからは数えるほどしか彼女とは話していません。」
「言い辛いことを話してくれてありがとう。まだ詳細は言えないが、必ず後日説明するから今日は何も聞かず帰ってくれるか。」
「はい。」
カイルは一礼すると生徒会室を後にした。
「これって完全に逆恨みだよね。」
ヴィルノアはフェリシアを抱え込んだまま、冷気を放ったまま言った。
「フェリシアに何にも関係ない所でかった恨みだな。まぁ、俺の婚約者だったから目立っていたんだろうな。」
エリックは腕を組み、眉を顰めた。
「だからってシアにしたことは許せることではないよね。」
ぎゅっとフェリシアに回したヴィルノアは口角を上げて笑い顔だが目が笑っていなかった。
エリックは苦笑いを浮かべて言った。
「まあ落ち着け。今回のことは生徒会と学園に対処を委ねようと思う。会長、いいですよね?」
それまで事の成り行きを見ていた生徒会長のアルフォンスは頷いた。
「もちろんです。今回の件は厳正に対処いたします。生徒会役員は全員、カミラ嬢とカイン殿の証言を聞いておりました。学園に報告し、協議いたします。お任せください。」
「頼みます。」
エリックはヴィルノアとフェリシアを見た。
「いいな。これで事件は解決ってことで。」
「うん、いろいろありがとうね、エリック。」
「・・・シアがいいならいい。」
「ははっ、ヴィルはぶれないな。」
エリックは乾いた笑いを浮かべた。




