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ガチ恋っ!!ってことで  作者:


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60. カミラ⑥ 飛びました

「ノア!」

 ヴィルノアは声がした方向を見上げると教科書を抱えたフェリシアが宙を飛んでいた。いや、階段から落ちている最中だった。

「うわぁぁぁ!!!」

 慌ててヴィルノアはフェリシアを抱きとめた。間一髪のところでフェリシアは床に激突せずに済んだ。

 ヴィルノアはフェリシアを降ろすと、焦ってフェリシアの全身を見た。

「けがはない?痛いところは?」

 おろおろと動き回るヴィルノアにフェリシアは強張った笑顔で言った。

「大丈夫だよ。受け止めてくれてありがとう。」

「何があったら2階から降ってくるの・・・?」

「・・・実はよく分からないんだ。けど気付いたら落ちていた、みたいな。」

 フェリシアは顔は笑顔を浮かべているが、言葉の歯切れが悪かった。

「分からないじゃないよね?」

 ヴィルノアは両手でフェリシアの手を包み込んだ。

「震えてるよ。何があったの?」

「・・・本当に分からないの。前の教室に置き忘れた教科書を取りに行って、階段を降りようとしたら誰かに背中を叩かれて、あっと思った時には階段から落ちるところで、ノアが見えたから呼んだの。」

「分かった。取りあえずこれ着て。」

 ヴィルノアは上着を脱いでフェリシアの肩にかけた。

「・・・うん。ありがとう。」

 フェリシアは頬を赤く染め、かけられた上着を胸の前で合わせるように握った。


 ヴィルノアはフェリシアの膝と背中に手を回すとフェリシアを抱き上げた。

「ノ、ノア!」

「首に手を回して。暴れると落ちるよ。医務室に連れて行くからじっとしてて。」

 そう言うとヴィルノアはすたすたと歩き始めた。

「だ、大丈夫だよ。どこも痛くないよ。」

「それでも行くよ。」

「恥ずかしいから降ろして!」

「だめ。」

 がっちりとヴィルノアに掴まれ降ろしてもらえず、フェリシアは諦めてヴィルノアの首に手を回した。そしてフェリシアは顔をぴったりとヴィルノアの胸辺りにくっつけた。

「どうしたの、シア?」

 ヴィルノアは心配そうに聞いた。

「・・・ノアの掛けてくれた上着にノアの体温が残っていて、それに匂いもノアで、ノアに抱きしめられているみたいって思っていたら、ノアに抱っこされて、やっぱり温かくて、一層ノアの匂いがして・・・とにかく恥ずかしくなっちゃってドキドキが止まらなくて・・・顔、真っ赤だから見ないで・・・。」

 途切れ途切れになりつつも、フェリシアは感じていることを素直に話した。

 ヴィルノアはピタッと足を止めた。最初は目をこれでもかと見開きフェリシアを見た後、目を細め、口元を緩めた。

 無言で立ち止まってしまったヴィルノアが気になり、恐る恐るフェリシアはヴィルノアを見た。するとヴィルノアはとろける様な笑顔でフェリシアを見ていた。

「ノ、ノア?」

 ヴィルノアは一瞬はっとした顔になり、歩き始めた。

「ごめん。時間が止まってた。」

「?」

 医務室にはいくらもかからず、到着した。


 ヴィルノアは常駐の女性医師に事情を話し、休む許可を取った。そしてベットの一つにフェリシアを寝かせた。ヴィルノアはフェリシアの抱えたままの教科書をすっと手に取ると、横のテーブルの上に置い木、フェリシアの毛布を掛けた。

「少し休みなよ。僕がシアが眠るまでここに居るから安心して。」

 フェリシアは毛布の端を両手で掴み、引き上げると、顔半分を隠した。

「うん、ありがとう。」

「おやすみ、シア。」

「うん、おやすみ。」

 暫くするとすーすーと静かな寝息が聞こえてきた。


「シアが階段から落ちた。」

 ヴィルノアはエリック達に報せた。

「フェリシアは無事か?」

 エリックは焦った声でヴィルノアに詰め寄った。

「けがはないよ。僕が受け止めたから。今は医務室で寝てる。」

 全員ほっと胸を撫で下ろした。

「なんで落ちたんだ?」

「シアは誰かに背中を叩かれたって言っていた。」

「なんだ、それ?誰が叩いたんだ?」

「よく分からない。シアも誰かは分からないみたいだった。一階には僕しかいなかったけど、二階までは見えなかったから誰が叩いたか僕も分からない。ただこれだけはハッキリしている。シアに誰かが危害を加えようとしているようだね。」

 ヴィルノアは抑揚のない声で淡々と話した。

「危害って、その割には落ち着いてるな、ヴィル。」

 エリックは意外そうにヴィルノアを見た。ヴィルノアは小さく笑った。

「落ち着いてる?面白いこと言うね、兄上。こういう話し方にしていないと上手く説明すらできなくなりそうなんだよ。落ち着いているわけないよね。僕のシアがけがをするところだったんだよ。」

 黒い空気を漂わせヴィルノアは口元は確かに笑っているが、目が座っていた。

 全員、すっと青ざめた。

「僕がたまたま通りがかったからいいようなものだけど、もし誰も通りがからなかったら・・・考えたくもないよね。それにシア、震えてたんだ。」

「それは許せないな。」

 シルビアは低いどすのきいた声で言った。

「だよね。」

 ヴィルノアとシルビアは頷き合った。

「まぁ、二人とも落ち着け!」

 エリックは慌てて会話に割り込んだ。

「二人ともひとまずは落ち着いて話そう。今、フェリシアは大丈夫なのか?一人になっていないか?」

「大丈夫。医務室の女医が付き添うよう、頼んできた。」

「常にフェリシアが一人にならないようにした方がいいな。」

 エリックはシルビアとエリザベスを見た。

「頼めるか?」

「もちろんですわ。」

 エリザベスはぎゅっと手を握った。

 シルビアはこくんと頷いた。


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