59. カミラ⑤ 女子会
「天使ですわ・・・。」
「かわい過ぎ・・・。」
エミリアとソニアはお互いの手を握り合って、瞳を輝かせた。
「でしょう。」
すっかり言葉も崩れたフェリシアはどや顔だった。
放課後の食堂、先日の約束を果たすべくフェリシアとシルビア、エミリア、ソニアの四人はお茶とお菓子をお供に女子会をしていた。
フェリシアの持ってきた姿絵はB4サイズの物で12歳のテオドール、10歳のエリック、8歳のヴィルノアが描かれていた。エリックと婚約する際に国王夫妻からフェリシアがもらった物だった。
「ヴィルノア殿下はもちろんのこと、我が国の王子様はお三方とも麗しいですわ。」
「本当に皆様素敵ですわ。」
「そうだよね。テオ兄様は12歳にも関わらずこの頃から素敵な紳士で、ノアはかわいい天使で、エリックはガキ大将的だけどそれなりに格好良かったよ。」
「あらっ、フェリシア様はエリック殿下に厳しいのですね。」
エミリアは視線を上げ、フェリシアを見た。
フェリシアは笑顔を引き攣らせていった。
「えぇっと、エリックは悪友って感じだからかな。大抵怒られるときはエリックと何かやった時なんだ。」
「まぁ、エリック殿下は剣に秀でた快活なお方だと聞きます。それに誰にでもお優しい方だとも。そんな方を悪友だなんて・・・。」
エミリアはおろおろと困惑したように言った。
「ははっ、小さい頃からの付き合いだからかな?木登りしたり、王宮の庭園でかけっこしたり、とにかく二人ともじっとしていなくて、ね。確かに悪い奴ではないよね。むしろいい奴。」
「王子殿下をいい奴だなんて、本当に仲がよろしいのですね。」
エミリアとソニアは顔を見合わせ頷き合った。
「うん、仲良しだよ。」
フェリシアはふんわり笑った。
何故かエミリアとソニアは顔を赤らめた。
「あれっ、この前はもう一人カミラ様がいたよね?今日は一緒ではないの?」
フェリシアは首を傾げた。
「ええ、カミラ様にはお声がけしませんでしたから。あの時以来カミラ様とはお話ししておりませんの。」
エミリアは少し怒ったように答えた。
「あの後、フェリシア様の噂をどこから聞いてきたものなのかカミラ様にお聞きしましたら、どこだっていいでしょうっとヒステリックに言って帰ってしまわれたのです。」
「あれっ、仲良し三人組ではないの?」
「いいえ、わたくしとソニアは幼い頃から家同士の付き合いがあって仲良くしておりますが、カミラ様とは夏休み明けに話しかけられてから何度かお話ししただけですわ。」
「ええ、私とエミリアがヴィルノア殿下の話で盛り上がっておりましたらカミラ様も殿下のファンだと話に入ってきましたの。」
「その時にフェリシア様の悪い噂について聞きましたの。」
「ええ、そうです。」
エミリアとソニアは顔を見合わせ、頷き合った。
「あの時はフェリシア様のことを知らなかったとはいえ、根も葉もない噂に踊らされてしまいました。本当にフェリシア様には申し訳ないことをしてしまいました。」
二人はしゅんっとなった。
「もう済んだことだよ。誤解だって分かってもらったし、ね。」
フェリシアは両手をぶんぶんと振って、にっこりと笑った。
「もう友達になったんだよね?」
エミリアとソニアは胸の前で両手を組み、瞳を輝かせた。
「「ありがとうございます!!」」
「ところでカミラ嬢はどんな子なのかな?」
それまで黙って紅茶を啜っていたシルビアがティカップを置き、おもむろに聞いた。
「先程も言いましたが、わたくしもあまり知りませんの。多分2,3回お話しした程度でしょうか。今回カミラ様から噂についてお聞きして、フェリシア様に抗議しに行くとお伝えしましたら私も行きたいとついて来られましたの。」
「あまりクラスでも存在感のない方で、特に仲良くされている方もいないのではないでしょうか。時々お話ししているところをお見掛けしましたが、いつも違う方とでしたわ。」
「ええ、そうでしたわ。あと、カミラ様はこの夏休みに婚約が解消されたとかどなたかが言っておりましたわ。」
「私も聞きました。一つ上の学年の方で、その方の方から婚約解消の申し入れがあったとか。」
「理由は?」
シルビアは淡々と尋ねた。
「なんでもお相手の方とは幼い頃に親同士が仲がいいことで決まった婚約関係だそうで、当人同士はあまり仲がよろしくはなかったそうです。良い関係を築く努力はされたようなのですが、上手くいかなかった様です。それでこのまま結婚しても上手くいかないだろうから、早いうちに婚約を解消して、お互い気の合う相手を探したほうがいいとお相手の令息からご提案されたとか。」
「ええ、私も性格が合わなかったからと聞きました。」
エミリアとソニアはうんうんと頷き合った。
あまり付き合いのないカミラのことでさえ婚約解消というプライベートなことを知っているあたり、二人共それなりの令嬢ネットワーク持ちであった。
「そんな理由で婚約解消なんてできるんだね。」
通常は家同士のつながりの為の政略的な婚姻関係には、当人同士の相性は関係ない。どんなに仲が悪くともその婚姻に家の利があればいいのだ。フェリシアは驚きを隠せず、思わず言った。
「私はラッキーだったんだね。同じように家同士が決めた婚約だけど、どちらとも気が合っているもの。」
「そうだな。」
シルビアはこくんと頷いた。
後日、カミラのことをもう少し詳しく知りたいと、カミラと付き合いのある生徒を探したが見つからなかった。エミリアの言った通り学園には親密な付き合いをしている者はいなかった。この時点ではカミラが噂を流したのか、ただ単に聞いて話したのか断定ができず、フェリシア達はこれ以上何もできなかった。




