57. カミラ③ 和解
「わたくし大変な勘違いをしていたようです。」
エミリアは眉を下げ申し訳なさそうに話し続けた。
「フェリシア様がヴィルノア殿下に害ある方という噂を聞き、それを真に受けておりました。でも今回フェリシアのお話を聞き、噂が間違いだと分かりましたの。フェリシア様は悪いことができる方には思えませんわ。本当にわたくしの勝手な思い込みで不愉快な思いをさせ申し訳ありませんでした。」
エミリアは深々と頭を下げた。無言で事の成り行きを見ていたソニアはそっとエミリアの背中に手を当てた。
「ねぇ、だから噂は所詮噂に過ぎないから、安易に信じてはいけないと言ったでしょう。」
「ソニアの言った通りでしたわ。」
エミリアはしゅんとして一層頭が下がっていった。
「フェリシア様、本当に申し訳ありませんでした。エミリアは悪い子ではないのですが思い込みが激しい上に、無駄な行動力があってこの度の事態となりましたの。止めることができなくて不愉快な思いをさせてしまいました。二度とこのようなことが起きないよう、よく言って聞かせますのでお許しください。」
ソニアも深々と頭を下げた。
フェリシアは慌てて両手を胸の前で振り、言った。
「私は怒ってもいなければ不愉快な思いもしてません。お二人とも頭を上げてください。謝罪を受け入れます!」
エミリア達は顔を上げ、フェリシアを見た。
「・・・よろしいのですか・・・。」
「はい!ノア・・・ヴィルノア殿下のことを心配してくれただけですもの。だから・・・ありがとうございます。」
フェリシアはにっこり笑って言った。
「あ、ありがとう、ですか?」
エミリアは困惑しているようだった。
「ええ、ありがとうです。ノア・・・ヴィルノア殿下のこと大切に思ってくれて、自分のことのように怒ってくれて、そしてその原因を取り除こうと頑張ってくれて・・・ありがとうですよ。」
フェリシアは嬉しそうに笑った。
「フェリシア様は本当にお優しい方なのですね・・・。」
エミリアは呆けたように言った。
「本当、お人好し・・・あっ、いえ、お心の広い方ですわ。」
ソニアも信じられないといった顔で言った。
「それに、笑顔が素晴らしくかわいいですわ・・・!」
「ええ、かわい過ぎです!女の私ですらくらっときます。」
「くらっ!それですわ、ソニア!!フェリシア様って別の意味で危険な方でしたのね。」
二人は手を握り合い、顔を見合わせうんうんと頷いた。
「ノア・・・ヴィルノア殿下は小さい頃から人見知りな所があって、学園で上手くやっていけてるのか心配していたんです。お二人のようなクラスメイトがいれば安心ですね。」
柔らかく微笑んだフェリシアはそういった後、小さい頃のヴィルノアを思い出し思わず言った。
「本当に小さい頃のノアって、天使みたいなかわいさだったなぁ。」
呟きに似たフェリシアの言葉をエミリアは聞き逃さなかった。
「そんなにかわいかったのですか?」
「もう、天使!エリックはどちらかって言うと国王様に似ているけど、ノアは王妃様に似ているの。それに幼い頃のノアは線が細くて女の子みたいだったんですよ。」
「見て見たかったですわ。」
「お会いしてみたかったです。」
エミリア達は想像のヴィルノアにうっとりとした表情になった。
「私、ノアの子供の頃の姿絵を持っているの。良かったら見ますか?」
フェリシアはにっこり笑った。
「「見たいです!!」」
エミリア達は目を輝かせて言った。
フェリシアは嬉しそうに微笑んで言った。
「それでは今度持ってきますね。良かったら次お会いするときは食堂でお茶を飲みながらにしませんか?」
「フェリシア様、神ですか・・・。是非お願いしますわ。」
「神って大袈裟ですよ。ふふっ、楽しみにしていますね。ねっ、シルビア?」
シルビアはこくんと頷いた。
「そういえば、今回の呼び出しの手紙にEとあったが、あれはエミリア嬢が書いたものか?」
シルビアは聞いた。
「ええ、そうです。」
エミリアは答えた。
「他に手紙をフェリシアに送ったことはあるか?」
「いいえ、ありませんわ。」
「そうか。」
シルビアはエミリア達がキャッキャッと楽しそうにはしゃぐ中、無言で少し後ろに立つカミラを異質に感じ、さり気なく観察していた。
―エミリアがフェリシアに噂について問い詰めた時、無表情に見えたカミラだが口角が少しだけ上がり楽しげに見えた。
―エミリアが謝罪をした時、カミラは口元を歪め舌打ちしたように見えた。
―エミリア達がフェリシアと楽しそうに話し出した時、長めの前髪から除くカミラの目が鋭くなり、カミラはフェリシアを睨みつけていた。
―シルビアの視線に気付いた時、カミラはすぐさま顔を横に反らしシルビアから自身の表情を隠した。
ー最後に手紙の話をした時、一瞬カミラの瞳と肩が揺れた。
ー終始無言を貫いた。
エミリア達と一緒に来たにもかかわらず、一切彼女たちと話をする気配もないカミラは、この場では少し浮いた存在に思えた。一見すればただただ立っているだけで何もしないカミラは何のためにここに来たのだろう。
シルビアはカミラが終始異質に見えた。




