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ガチ恋っ!!ってことで  作者:


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54/62

54. 挨拶を変えてね

「フェリシア!」

 フェリシアが声のした方向に顔を向けると公務を終えたテオドールとジルベールがフェリシアに向かって歩いてきていた。

 学園の昼休み。

 フェリシア達はいつものように食堂にいつものメンバーで集まっていた。フェリシアはすぐさま席を立ち、いつものようにおかえりなさいの挨拶をしようとテオドール達に駆け寄ろうとした。ぐっと腕を後ろに引かれ、フェリシアはヴィルノアに後ろから抱き締められた。

「うわぁ、ノア動けないよ!」

 ヴィルノアはフェリシアの肩に頭を乗せて言った。

「だめ。」

 フェリシアにしか聞こえないような小さい声でヴィルノアは言った。

「あの挨拶、しないで・・・。」

「どうしたの、ノア?今まで何も言っていなかったじゃないの。」

「今まではシアの婚約者じゃなかったから何も言えなかっただけ。もうシアは僕の婚約者でしょう。他の男に抱きつかないで。抱きしめられないで。頬にキスしないで。頬にキスされないで。」

「・・・嫌なの?」

「・・・うん。」

「兄様達だよ?」

「・・・でも男でしょう。だめ。」

 ヴィルノアがフェリシアの肩に頭を乗せているため、彼の表情はフェリシアからは見えなかった。顔を見られたくないのかもしれなかった。

「もしかしてやきもち妬いているの?」

 軽い口調でフェリシアは言った。

「・・・。」

 ヴィルノアは答える代わりにフェリシアに回した腕に力を込めた。フェリシアは回されたヴィルノアの腕をポンポンと軽く叩くと、小さく息を吐いた。

「兄様、テオ兄様、ノアが嫌がるのでいつもの挨拶止めますね。だからこのままで。ご公務からの無事のお帰り、フェリシアはとても嬉しいです。おかえりなさい。」

 ヴィルノアの腕の中で、精一杯の笑顔を浮かべフェリシアは挨拶をした。

「ああ、ただいま。いつもの挨拶がないのは寂しいね。ヴィル君?」

 テオドールは苦笑いを浮かべつつ言った。

「テオはともかく私は実の兄だからいいのではないですか、ヴィルノア殿下?」

 ジルベールも苦笑いを浮かべつつ不満を口にした。

「だめ。」

 ヴィルノアはぎゅっとフェリシアを抱き締め答えた。

「僕以外の男が触れるのはダメ。」

「兄様でも嫌みたい。仕方ないですよね、あの挨拶はこれから無しです。」

 フェリシアは残念そうに眉を下げて言った。

「まぁ、ヴィル君の気持ちも分からないでもないからね。」

「そうだなぁ、仕方がないですかね。」

「フェリシアもヴィル君重くて大変かと思うけど、見捨てず相手してやってね。」

 二人はひらっと手を振って離れて言った。


 フェリシアは二人をに送った後、ヴィルノアの腕をポンポンと叩いた。

「そろそろ腕どけてほしいな。お昼食べよう。」

「・・・。」

 相変わらずフェリシアを後ろから抱き締め、肩に頭を乗せたままのヴィルノアは黙ったまま動かない。

フェリシアはふぅっと息を吐き出す。

「しょうがないなぁ。」

 もぞもぞと動きだしたフェリシアはヴィルノアの頬に手を当て自分の顔の近くに引き寄せた。そして少し背伸びをしてフェリシアはヴィルノアに顔を近づけた。

 ちゅっ。

 ヴィルノアは顔を赤らめ、慌ててフェリシアに回した腕を解き、キスされた頬を自身の手で覆った。

「はい、早くお昼食べないとお昼休み終わっちゃうよ。」

 フェリシアは空いているヴィルノアの手を引き、席に戻った。

 フェリシアは軽く塩の振られたブロッコリーを頬張った。少し冷めてはいたがみずみずしくて美味しかった。

「うーん、美味しい。」

 横を見ると席に座っているものの、頬に手を当てたまま微動だにしないヴィルノアがいた。

 やれやれとフェリシアはフォークにブロッコリーを突き刺しヴィルノアの口元に差し出した。

「ほらっ、食べないと授業始まっちゃうよ。これ取っても美味しかったの。はい、あーん。」

 ヴィルノアはいつもの様にぱくんとブロッコリーを口にした。

「美味しいでしょう?」

「・・・うん。」

「さあ、他も食べて。」

「・・・うん。」

 もそもそとようやくヴィルノアは食事を始めた。

「うーん、これも美味しい!」

 フェリシアはにっこり微笑んだ。


「あいつは悪魔か・・・?」

 二人の様子を見ていたエリックは眉間にしわを寄せた。

「いやぁ、魔性の女ってとこですかね。」

 オスカーも眉間にしわを寄せた。

 シルビアとバルトはこくこくと首を縦に振った。

「すごいですわ・・・。」

 エリザベスはほぅっと息を吐き、片手を頬に添えた。


「シアっ!」

 食事が終わり教室に戻ろうとした時フェリシアはヴィルノアに呼び止められた。

「なあに?」

 フェリシアが振り向くと目の前にヴィルノアの顔があった。

 ちゅっ。

 軽くフェリシアの頬にヴィルノアの手が触れたかと思うと、反対の頬に柔らかいものが触れた。

「シア、大好き。」

 ヴィルノアは甘い笑顔を浮かべて言った。

「うん、知ってる。」

 フェリシアは笑顔で返した。

「さぁ、午後の授業も頑張ろう。」

「うん。」

 二人はそれぞれの教室に向かって歩き出した。


「すごいですわ。ヴィルノア殿下も負けていませんが、フェリシアのあの返し・・・すごいですわ。」

 エリザベスは両頬に自身の手を当て首をプルプルと振った。

「「魔性の女・・・」」

 エリックとオスカーは深く眉間にしわを寄せた。

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