51. ヴィルノアという人⑤
王宮に王家とスカイ公爵家とエリザベス王女兄妹が集まったあの日、エリック兄上のフェリシアから僕のシアになった。ぼ・く・の、だ!!まぁ、僕のって言うのはまだ早いかもしれないな。シアは僕に惚れていて、婚約者になってくれたわけではないから。
あれ?なんで僕の婚約者になってくれたんだろう?そういえば理由を聞いていなかったな。それはどうでもいいか。婚約したっていう事実が大事だよね。
あれほど、どうにもならないとエリック兄上とフェリシアの婚約について考えていたのだから、僕との婚約だってそうそう解消されることはないだろうね。テオドール兄上達の予想外の機転で一生ないと思っていたことが起きたんだ。絶対シアは手放さないよ。
あの日、シアが婚約してくれると言った瞬間世界がキラキラと輝き出した。あの日のことは忘れない。
僕は堂々と一人の女の子としてシアが好きだって言っていいんだ。そして僕を好きになってと乞う事ができるんだ。
エリック兄上と婚約していた時にエリック兄上を好きになろうと努力していたシア。結婚する相手なのだからって想い合って結婚したいからって。僕がいくら好きって言っても好きって返ってくることはなかったけど、毎日エリック兄上には好きって言ってたんだよね。いいよね、兄上。僕にも言ってくれるかな。
そういえばなんで僕には好きって言ってくれなかったんだろう?弟としては好かれてたよね。テオドール兄上には大好きって言ってたよね。今まで、思えば好きって言った時に一度も、私も、とか、私も好きよ、とか言ってもらえたことがないよね。なんでだろう?そのうち聞いてみようかな。
シアはやっぱり僕からの好きは家族愛、義姉として好きだと思っていたね。僕が心を捧げる唯一の女性だとは思ってはいなかったよね。今まではそれでよかったけど、これからは僕の心をしっかりと理解してもらわなければね。頭でも心でも・・・いつかは体でも、ね。堂々と抱き締めてシアを腕の中に閉じ込めていいなんて、素晴らしいことだよね。
どうすれば本当の意味での僕のシアになるのかな?僕のになるってことは、シアが僕を好きになることだよね。僕に恋してくれることだよね。いつか私のノアって言ってくれないかなぁ。僕はずっとシアだけのものだけど、シアは違うよね。どう伝えたらいいんだろうね。
僕はシアが好きで好きで好きで仕方なくて、僕の世界の中心はシアで、僕の世界はシアでできているようなものだけど、シアはこのことを知らないよね。知ったら引くかな。引かれて避けられたら生きていけない。ゆっくりと頃合いを見て理解してもらうのが無難かな。
僕と婚約した後でも兄上に抱きつこうとするシア。ダメだよ。兄上達でも男って言うカテゴリーに入っている以上、もう抱きついちゃだめだよ。兄上達にとってかわいい妹だって分かっているけど、甘え上手なシアだって分かっているけど、スキンシップはダメだよ、シア。僕とだけにしてね。
これって心狭すぎかな?シアのことに関しては本当に心に余裕が持てないよ。他の男からの視線さえ嫌だもんなぁ。
僕に自身がないのかな、シアに好意を抱いてもらっているって。シアは僕を好いてはくれていると思う。ただ僕のような恋じゃないよね。シアの周りにいる男が僕だけだったら、僕に恋してくれてたかな。
僕は独占欲が強いと思う。特にシアが僕の婚約者になってから強くそれを感じる。それ故にやきもち妬きだ。嫉妬深いっていい男じゃないように思う。あれだけいい男になるからってシアに言ったのに。うーん、あまり表に出さなければいいのかもしれないけど、ハッキリと態度に出さないとシアは気付いてくれなさそうだよね。気付かないと兄上に抱きつくよね。それはダメだ!ダメダメダメっ。シアが減るよ。
今まではエリック兄上のシアだったから、あの挨拶だって邪魔せず見ていたけど(不機嫌な顔をしていたらしけど)もう今は無理。抱きしめるだけじゃなく頬にキスまで・・・!家族間で確かに頬や額にキスすることはあるよ。でもダメ。シアの唇が触れていいのは僕だけにしてほしいな。これは追々シアにお願いしよう。僕の心が持たないからね。
僕が「好き」って言うと「知ってる」と答えるシア。「好き」って言うのはこれからも続けるけど、いつか「私も好き」って言ってくれないかな。いつか、いいやいつかまで待てない。明日にでも行ってほしいけどそれはさすがに無理か。学園に通っている間に、僕の気持ちに追いついてくれないかな。もし「好き」って言ってもらえたら僕は何でもできそうだ。
シアから頼られたいし、甘えてほしいから兄上達のような頼れるいい男になりたいと思っている。だから僕はあんまり子供っぽく拗ねたり甘えたりしない方がいいんだろうね。だけど僕が拗ねた時に見せる、あの、仕方ないなぁ、って言った感じのお姉さん顔も好きなんだよね。あの顔見たくてわざと拗ねて見たりするし・・・まぁどんな顔していてもシアはかわいいけどね。
愛が何かはよく分からないけど、シアに向けるこの感情はいつも特別であることは確かだ。あまり揺らされることのない僕の感情も、シアが関わるとぶんぶんと動く。シアの笑顔を守りたいとか、シアの隣に居たいとか、シアのことを見る男共を消したいとか・・・他の誰にも揺らされないのにシアだけは特別。振り回されっぱなしだ。でもそれが心地いいんだ。これが僕の幸せだって思うんだよ。
愛が何か分からないから、まだ愛してるは言わないよ。だから今日も明日もその先もシアに伝えよう、好き、大好きって。
僕の大事な大事な婚約者。
絶対手放さない。
大好き、シア。
早く僕のものになってね。




