50. 最適解⑪ 大団円
「まあ、まとまったかな?ヴィル君はともかく、フェリシアはヴィル君との婚約するのを承諾したでいいかな?今なら拒絶もできるよ。」
テオドールはにやにやしながら言った。
ヴィルノアはギュっとフェリシアを抱き締めて言った。
「だめ。もうシアは僕のだから。」
フェリシアはヴィルノアの腕の中で向きを変え、ヴィルノアの腕をトントンと優しくたたいた後、テオドールを見て言った。
「はい、テオ兄様。ノアと婚約します。」
テオドールは目を細め優しい微笑みを浮かべた。そしてヴィルノアの頭をポンと叩いた。
「ヴィル君、夢がかなってよかったな。」
「ありがとう、兄上。」
「本当に良かったな、ヴィル。」
エリックも嬉しそうに微笑みながら声を掛けた。
「エリック兄上もありがとう。あとずっと僕の我が儘を許してくれてありがとう。嫌だったよね、婚約者にまとわりつく男なんて。」
「いいんだ。ヴィルはかわいい弟だからな。本当はもっと早く何とかしてやりたかったんだけど、どうしたらいいのか分からなくてな。何もしてやれなくてごめんな。ヴィルの気持ちが本物だって分かってたのにな・・・。」
ヴィルノアは首を横に振った。
「僕が悪いんだ。シアへの気持ちをどうしても捨てられなくて、僕の我が儘でシアが気付いていないことをいいことに好き好き言って・・・嫌だったよね、そんな奴がシアの近くにいるなんてさ。」
「いや、むしろ何もできない俺自身に嫌気がさしていたんだ。あと、気付かないフェリシアに感心していたよ。」
「気付かれない方が都合が良かったからいいんだ。兄上達の中を裂きたい訳じゃなかったし、シアは兄上と恋をしたがってたし、さ。シアだし、誰かに言われない限り気付くことはないと思ってた。」
「そうだなフェリシアだしな。」
エリックはうんうんと頷いた。
「ねぇ、フェリシアだしって何?事あるごとにみんな言うの。」
フェリシアはヴィルノアの腕の中から抗議した。
「だってシアだし。」とヴィルノア。
「そうだなフェリシアだしな。」とエリック。
「フェリシアだからね。」とテオドール。
「フェリシアだしな。」とジルベール。
「フェリシアですもの。」とエリザベス。
「・・・くっくっ。」苦しそうにお腹を抱えるエリザベス兄。
「・・・もう何なのよ、エリザベスまでぇ、エリザベスのお兄様は笑い過ぎです。」
フェリシアはぷくっと頬を膨らませた。
「シア、その顔もかわいい。大好き。」
ヴィルノアはフェリシアの頭に自身の頬を摺り寄せた。
「もうっ、知ってるから!」
フェリシアは頬を赤らめ、ぷいっっと顔を背けた。
この後双方の両親を交えて話し合いの場が持たれ、正式にエリックとフェリシアの婚約が白紙に戻り、エリックとエリザベス、ヴィルノアとフェリシアの婚約が決まった。
エリザベスは一年の留学予定だったが卒業まで延長することにし、その間に王子妃教育を受けることとなった。そして二人は卒業の半年後に結婚式を挙げることとなった。この予定はエリザベスの両親の代理であるエリザベスの兄が了承し、国に伝え正式な外交文書とすることとなった。その間、おおよそひと月の間は今回の件は公表しないこととなった。
ヴィルノアとフェリシアはヴィルノアの卒業を待って結婚式を挙げることとなった。
この二組の婚約はおおよそ一月後に公表されることとなり、それまでは緘口令が引かれることとなった。
「うーん、私はノアのお嫁さんになるのかぁ。まだピンっとこないなぁ。なんか想像つかない。」
フェリシアは首を傾けた。
「私もですわ。まだ夢の中にいるようですもの。まさか好きになった人と結婚できるなんて・・・夢見たいですわ。夢かしら?」
エリザベスは頬に手を当てふぅっと小さく息を吐いた。
「ふふっ、夢じゃないよ。エリザベスがエリックのお嫁さんになるのとっても嬉しい。あぁ、まずはエリザベスに謝らなければならないわ。ごめんなさい。エリザベスに聞いて許可を得る前にエリザベスの気持ちを兄様達に話してしまって。話した時はエリザベスのことにまで考えがいたらなくて・・・ごめんなさい。」
フェリシアは頭を下げた。エリザベスは慌てて言った。
「頭を上げて、フェリシア!わたくし怒ってなんかいませんわ。むしろ感謝しかありませんわ。」
「いやいや、それは結果論であって、勇気を出して伝えてくれたエリザベスを裏切るようなことをしたのは事実だよ。ごめんね。」
「わかりましたわ。謝罪を受け取ります。でも本当に気にしていませんわ。それにしてもヴィルノア殿下は良かったですね。もう、何かして差し上げたくなる程ひた向きにフェリシアを見つめていましたものね。」
「そ、そうだったんだ。」
「ええ、そうでしたわ。」
「・・・。ええっと、エリックと上手くいって良かったね?」
エリザベスは顔を一気に赤らめた。
「まさか、エ、エリックの奥様になれるなんて思ってもみませんでしたわ。」
「まだ学園生活が二年以上残っているんだから、学生であることを楽しまないとね。」
テオドールは二人に近づき、頭をポンポンと優しく叩いて、にっこりと微笑んだ。
「私はかわいい妹が増えて嬉しいよ。」
「ふふっ、テオ兄様大好き!」
フェリシアはいつものようにテオドールに抱きつこうと手を伸ばした。
「だめ!」
いつの間にか後ろにいたヴィルノアに引っ張られ、フェリシアは後ろから抱き締められた。
「シアは僕の婚約者だよね?」
今まで聞いたこともないような低い声でヴィルノアは言った。
「うん。でも、テオ兄様は兄様だよ。だめ?」
上目遣いでフェリシアは言った。
「・・・かわいく言ってもダメ。」
「テオ兄様ぁ・・・。」
眉尻を下げたフェリシアはテオドールに助けを求めた。テオドールは苦笑いを浮かべて言った。
「フェリシアに抱きついてもらえないのは残念だけど、ヴィル君の独占欲はどうにもできないかな。今まで我慢してたこともあるだろうし、ね。」
「兄上は尊敬してるし大好きだけど、それとシアのことは別。シア、お願いだから他の男の腕の中に行かないで。僕の腕の中だけにして。」
「テオ兄様は兄様だよ。」
「兄上、兄様でもダメ。僕は嫌だ。」
フェリシアが振り向くと、ヴィルノアは不貞腐れたような顔をしていた。
「これってやきもち?」
フェリシアは首を傾げた。
「そうだよ。心の狭い奴でごめんね!」
ヴィルノアはむぅっとした顔で顔を背けた。
「ふふっ、ふふふっ、かわいいね、ノア。」
フェリシアはコロコロ笑い始めた。
「やっぱり、男として見られてないよね。こんなの子供っぽい態度だもんね。」
ヴィルノアは肩を落とした。
「ん・・・そうでもないよ・・・。」
フェリシアは小さく呟いた。




