48. 最適解⑨ エリックはやっぱり王子様
「そろそろいいかな。」
エリックがフェリシアの元に来て言った。
「フェリシア、口止めされてたとはいえ、何も伝えなくてごめんな。俺、この話を受けたいと思っているんだ。だけどフェリシアに嫌な思いをさせてまで受けたいとは思っていないんだ。だからフェリシアの本心を聞かせてくれるか?」
エリックは真剣な顔で尋ねた。フェリシアは微笑んで言った。
「優しいねエリック。大好きよ。大好きだけど、残念ながら友達として大好きなの。だから、婚約を白紙にすることを喜んで受け入れるわ。」
「フェリシアもいい奴だよな。俺もフェリシアのそういうとこ好きだ。けど俺も友達として好きなんだよな。だからありがとうな!」
エリックはにかっと笑った。
フェリシアもにっこり笑ったがその笑顔を引っ込めて気まずそうに言った。
「あ、あの、ごめんね、エリック。エリックに相談もしないで兄様達にエリックの事話して・・・。」
エリックは目を閉じ首を横に振った。
「いいんだ。気にしてないよ。むしろありがとうな、話してくれて。それに、俺の方こそごめんな。あんな話したことでフェリシアを悩ましてしまって。」
「エリックのせいじゃないよ!私が勝手にグルグルしてただけだよ。」
二人は目を合わせてふふっ、くくっと笑った。
「お互い様ってことでいいかな。」
「そうね、お互い様よね。」
二人は微笑み合った。
「話を元に戻すけど、私と婚約を白紙に戻して、エリックはエリザベスと婚約する、でいいのよね?」
「いいのか?それで。」
「もちろんよ。前にも言ったでしょう。エリックは大事な友達だから応援したいって。」
「ありがとうな。俺もフェリシアのこと大事な友達だと思っている。」
エリックはにかっと笑った。
「嬉しいわ。あぁ、でも、まだおめでとうって言っちゃだめよね?エリザベスの気持ち聞いていないもの。」
フェリシアはエリザベスの方を見た。エリザベスは複雑な顔をしていた。
「エリザベスは今回のこといいかな?」
エリザベスはギュっと手を握り締め言った。
「フェリシアは本当にいいのですの?あんなにエリックと仲良しですのに。」
フェリシアはにぱっと笑って答えた。
「もちろん!エリックとは確かに仲良しだけど友達だもん。友情はあるけど恋にまで育てることはできなかったんだよね。頑張ったけど無理だったんだ。ねっ、エリック。」
「ああ、頑張ったけど友情だけが深まっていったな。あんなに好き好き言ったけど、結局友達として好きであって、恋にはならなかったな。いい奴って事だけが分かったな。」
「本当にいっぱいお互いのいいとこ見つけてあんなにいっぱい好きって言ったのにね。ダメだったね。エリックはいい奴なのにね。」
二人は目を合わせ苦笑した。
「エリザベスはエリックじゃ不満?ノアもフリーだから一応選べるよ。」
フェリシアは悪戯っ子のような顔で言った。
フェリシアの楽し気な物言いとは裏腹に全員がフェリシアを呆然と見た。
フェリシアはみんなの反応の意味が理解できず首を傾げた。
「お前なぁ・・・。」
エリックは目元を自身の手で覆った。
「フェリシア、さすがそれはないんじゃないか。」
ジルベールがふうっと大きくため息をついた。
「フェリシア流石だね。」
テオドールは腕の中にすっぽり収まっているフェリシアに苦笑いを送った。
「・・・シア。」
ヴィルノアは手を自身の額に当て空を仰いだ。
「くくっくくっ、聞いてた以上だね。」
エリザベスの兄ロバートは口元を押さえ、込み上げる笑いを押さえていた。
「ふぇ、フェリシア!私はエリックがいいのですわ!」
真っ赤な顔で慌ててエリザベスが言った。
「エリックがいいですわ!」
「うん、知ってる。エリック、ちゃんと気持ちは伝えたの?女の子なら誰でも王子様からのプロポーズに憧れているんだよ。ねっ、お、う、じ、さ、ま。」
フェリシアはニヤッとエリックを見た。
エリックも頬も耳も赤くしていたが目をつむりっと大きく息を吐くと、エリザベスの前に跪いた。そしてエリザベスの片手を優しく手に取ると、エリックは彼女の瞳を見つめてハッキリとした口調で言った。
「エリザベス王女、俺はあなたが好きです。あなたの優しさも、ひた向きさも、かわいい笑顔も、時に見せる勝気な所も全てが好きです。そんな君を俺は一番近くで見ていたい。そして守りたい。ずっとあなたの隣にいる権利を俺にくれないか?俺の妻になってください。」
言い終わるとエリックは握ったエリザベスの手の甲に触れるか触れないかといった優しい口付けをした。
エリザベスは大粒の涙を一つぽとっと零すと幸せそうに微笑んで言った。
「わたくしもエリック王子をお慕いしています。ずっと隣に置いてくださいませ。」
エリックはこれでもかというほど目を見開いたかと思うと満面の笑みで立ち上がり、エリザベスを抱きしめた。
「一生大切にする!」
「エリザベスはエリックの背にそっと腕を回した。
「はい。わたくしも大切にいたしますわ。」
二人は無言のまま抱き合っていた。




