42. 最適解③ 友達
「何難しい顔しているんだ?」
シルビアはフェリシアの眉間をツンっと指でつついた。
誰もが授業が終わり荷物をまとめていた。そんな中、フェリシアは手を止め、ぼんやりとエリザベスを見ていた。シルビアに急につつかれフェリシアはびくっと肩を揺らした。
「皺よってるぞ。」
「やっ、やだ!しわっ!」
とっさにフェリシアは額を押さえた。
「何か気になっていることでもあるのか?」
「・・・んっんー・・・。」
そう、エリックをよく見ていたということは、その視線の先にあるエリザベスをよく見ていたということでもある。そうなると気付くこともあるわけで・・・。
「何か悩み事か?」
シルビアは心配そうにフェリシアの顔を覗き込んだ。エリックにも最近同じようなことを言われたなっとフェリシアは先日の裏庭でのやり取りを思い出した。
「ふふっ、エリックにも同じようなこと言われたわ。みんな優しいよね。」
「そうか。大丈夫か?」
「うん、一つはエリックが解決してくれた。でももう一つ気になることがあって、ね・・・。」
フェリシアはふぅと息を吐き俯いた。
「エリザベスのことか?」
フェリシアはがばっと顔を上げ、シルビアを見た。
「違うか?」
フェリシアは首をぶんぶんと振った。
「違わないっ!な、なんで分かるの?」
シルビアはふぅと息を小さく吐き出し、ポンとフェリシアの頭に手を置いた。
「フェリシアは分かり易いからな。顔見れば分かる。」
「さすがシルビア。付き合い長いもんねぇ~。」
「で、何が眉間の皺の原因だ?」
「ええっと、彼女ね、学園祭の後くらいから時々辛そうな顔をしている気がするの。ほらっ、エリザベスって王女様じゃない。感情を表情に出さないの上手いんだよね。それでも時々ね。私に相談しにくいことなのかなぁって。」
フェリシアは手を合わせ指を絡め、視線を斜め下に向けた。
「自分の気持ちに気付いたんだろうな。」
「!!」
フェリシアは目をこれでもかっというほど見開き、シルビアを見た。
「フェリシアも気付いたのか?珍しいな。いつもなら気付かない分野だろう?あぁ、エリックが関わるから気付けたか。」
シルビアはサクサクと分析していく。フェリシアははくはくと口を動かすも声が出なかった。
「彼女は多分自分からは言ってこないよ。フェリシアとエリックのことを友人だと思っているだろうから、自分のことで二人の婚約関係に水を差したくないだろうしね。第一、フェリシアとの友情は彼女にとって最も大事にしたいものだろう。」
「シルビアは相変わらず人をよく見てるよね。私もそう思うんだ。エリザベスは何も言わないよね。」
「ああ。」
「でもさぁ、エリックの婚約者って肩書もあるけどエリザベスの友達って言う肩書も大事なんだよね。友達が何かに悩んでいて辛そうなら力になりたい。シルビアが私に声を掛けてくれたように、ね。」
「そうだな。」
「私には言いにくいだろうし、何もしてあげれないんだよね。だから、どうしよう。」
フェリシアはまた俯く。
シルビアはフェリシアの頭を撫でた。
「分かるよ。難しいとこだよな。でも、フェリシアはフェリシアらしくあればいいんじゃないか。」
「私らしく?」
「フェリシアはどうしたい?」
「エリザベスに辛い顔させたくない。根本的に解決できなくても彼女の気持ちを少しでも軽くしてあげて、毎日楽しく過ごしてほしい。」
「そうだな。」
「うんっ、そうだよ。エリザベスには笑ってほしいもん。でも、どうしたらいいかなぁ。」
「フェリシアには話しにくいよな。話されても何もできないしな。ただ、誰にも話すことのできない思いってのは苦しいだろうな。エリザベスの話を聞く限り、この国に来て初めて友達ができたってことだから、私たち以外に話せる相手はいないんじゃないか。」
「そうだよね。はけ口くらいにならいくらでもなってあげるんだけどな。」
「このままモヤモヤして、エリザベスとの付き合いがぎくしゃくしてしまうんだったら、いっそこの事について話してしまったらどうだ?話さなくてもぎくしゃくするなら一緒だろう。」
「おお~、潔いね、好きだわっそういうシルビア。」
「だろう。」
シルビアは口角をにぃっと上げて微笑んだ。
「そうだね。そうだよっ。話してみる。何もできないしエリックの婚約者って立場も変えられないけど、話は聞くよって、学園にいる間だけでも恋を楽しんでって言ってみる。」
フェリシアもニコッと笑った。
「恋を楽しむって言ってもなぁ。」
シルビアは首を傾ける。
「ふふっ、納得いくまで想っていいよって。だって、王女様だもの。政略結婚を受け入れる気構えはできているはずだよ。自分の感情とは関係のない所で決まるのが結婚だって。でもさぁ、人生の中で少しの間だけでも心が自由な期間があってもいいよね。」
「そうだな。」
「うんっ、ありがとう、シルビア。何をしたらいいか決まったら、少しすっきりしたよ。私はいい友達を持っているよね。シルビア大好き!」
フェリシアは満面の笑みを浮かべて言った。
「そうか。」
シルビアは頬をほんのり赤らめて言った。




