4. 恋に落ちて
エリックとの婚約が整った日から数日後、お茶会当日に体調不良で欠席していた第三王子ヴィルノアと顔合わせすることになった。王宮の応接間には、王妃と三人の王子、フェリシアと兄のジルベールが集まっていた。
「スカイ公爵家が長女フェリシアと申します。」
フェリシアはスカートをちょんと摘まみ一礼し、ヴィルノアと目を合わせ、ふんわりと微笑んだ。
初めて会った二歳年下のヴィルノアは8歳で王家特有の金髪に濃紺の瞳を持ち透き通るような白い肌で整った顔立ちであった。幼い頃から体が弱く、体は8歳にしては小柄で瘦せていた。
ヴィルノアはフェリシアを無言で瞬きも忘れて見つめていた。
「あのう、殿下…?」
フェリシアは何も言わず、ただただ自分を見つめ続けるヴィルノアが心配になり声をかけた。
ヴィルノアはくっと息を吞んだかと思うと頬を赤らめ、フェリシアに近づいた。
「好きです!大好きです!!」
ヴィルノアは両手を握りしめ、フェリシアを見つめた。
フェリシアはきょとんと目を丸くしたのち、満面の笑みを浮かべた。
「ふふっ、ありがとうございます、殿下。将来の義弟に好かれて嬉しいです。ねぇ、エリック。」
フェリシアはエリックを見て、ぐっとこぶしを作った。
エリックは戸惑いの表情を浮かべつつも言った。
「・・・ああ、よかった、な…。」
「うん!私、兄様はいても弟はいないから義弟ができて嬉しい!」
「そうか…。」
エリックの顔は引きつっていた。
「フェリシアはエリックの婚約者よ。」
王妃はヴィルノアの肩に手をのせ、優しく言った。ヴィルノアは困惑し言葉を失ったまま、王妃に顔を向けた。
「エリックとフェリシアはお茶会の後、正式に婚約したのよ。」
王妃はきゅっとヴィルノアを抱きしめた。
エリックも困惑していた。なんと弟が恋に落ちる瞬間を目の当たりにしてしまったのだ。それも自分の婚約者にだ。しかも当の婚約者は義弟が自分を姉として好意を寄せてくれたのだとはしゃいでいる。
「すごいな、フェリシアって。」
驚きの表情を隠せずエリックは言った。
「そうでしょう。小さい子にはよく好かれるの!」
フェリシアはにこにこと応えた。
エリックは苦笑いを浮かべた。
「いいのか、俺…。」
エリックは独り言ちた。
「見たか、ジル?」
「ああ、見た。気付いたよな、テオ?」
「ああ、分かりやす過ぎだろう…」
テオドールとジルベールは顔を見合わせた。
「気付いてないのは我が家の鈍感姫くらいだ。」
「だなぁ、あれはあれですごいな。」
「弟ができるって浮かれてたからなぁ。」
「どうしたものかな。」
「どうにもできないだろう?」
「だよなぁ。それにしてもヴィルがあんなに感情を表に出すなんて…何とかしてやりたいが…」
「無理だろうなぁ…。」
「そうだなぁ…。」
二人は深いため息をついた。




