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ガチ恋っ!!ってことで  作者:


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33/61

33. 夏休み⑪ 姉貴

「何を見ているんだ?」

 シルビアは湖畔をぼんやりと眺めているミーナに声を掛けた。

「ヴィルノア殿下とフェリシアお姉様です。」

 ミーナは覇気のない声で答えた。

 視線の先には座り込んで絵を描いているフェリシアとヴィルノアがいた。

「行かないのか?」

「昨日もう二度と声を掛けないでくれと殿下に言われました。」

 ミーナは零れ落ちそうな涙を必死に堪えており、涙声だった。

「そうか。ミーナはどうしたいんだ?」

「シルビア様、私は殿下のことが好きなんです。もう何年も。」

「知っている。分かりやすくヴィルに絡んでいたものな。」

「少しでも気にかけて頂きたかったんです。夏しか会えない方ですし。」

 今にも泣きだしそうなミーナはスカートをぎゅっと握り、俯いた。

 シルビアはミーナの行動を一瞥したものの、何事もなかったかのように淡々と話をつづけた。

「ミーナはそれで良かったのだろう。ヴィルの気持ちを考えたことは一度でもあるか?」

「ヴィルノア殿下はフェリシアお姉様しか見ていないのですもの。少しでも私を見てほしくて、頑張って、何がいけないのですか?」

「自分の願いを叶える為なら、ヴィルの気持ちはどうでもいいのか?」

「頑張るのはダメなのですか?殿下の想いは叶いません。それならば私に目を向けて下さってもいいではないですか!殿下も手に入らない恋を続けるより、新しい恋をした方が幸せだと思いませんか?その相手が私ではいけませんか?」

 ミーナはヒステリック気味の声を上げた。

「まぁそういう考え方もあるだろうな。だが私から見れば、それはミーナの自分勝手な言い分でしかない。単なる自分かわいさの我が儘にしか聞こえない。本当にヴィルが好きなら、ヴィルの幸せがどこにあるのかをもっと考えるべきだろう。彼女ではなくミーナに目を向けることがヴィルの幸せに繋がるのか?彼女を諦めることをヴィルが本当に望んでいるのか?ヴィルが今一番望んでいることを分かっていて、今までの行動をとっているのか?私からは、そうは見えない。」

 シルビアは淡々と話を続けた。

「自分のことしか考えず、気持ちを押し付けてくる奴に惚れる奴はまずいない。誰が惚れるというのだ。独りよがりにも程があるだろう。例えヴィルが彼女を諦めたとしてもミーナに目を向けることはない。」

 ミーナの目から大粒の涙がぽろぽろと落ちた。

「ただ、私を見て、振り向いてほしいだけなのにぃ・・・。」

「それが好きな男の迷惑になっているって分かっているか?いいか、恋愛は一人でするものではないだろう。確かにヴィルの恋は不毛に見えるよな。でもその不毛な恋はヴィルに幸せをもたらすんものでもあるんだ。両想いになることだけが幸せの形ではないんだ。そういったことを一度でも考えたことはあるか?」

「迷惑・・・幸せ・・・。」

「そうだ。ミーナの行動はヴィルの一番望まない状況を生みかねない危うさを含んでいる。よく考えろ。自分の行動が他者にどう影響するのかを考えるんだ。もう12歳なんだろう?」

「影響・・・。」

「そうだ、考えろ。分からないうちはヴィルだけではなくフェリシアにも近づくんじゃない。口を開くな。いいな。」

 シルビアはそう言い終えると屋敷に戻っていった。

 ミーナはその場にしゃがみこみ、涙をぽたぽたと落とした。


「シルビィ、不機嫌そうですね。」

 オスカーは屋敷に戻ったシルビアに近づき、ポンと頭に手を乗せた。

「見てたのか?」

 シルビアはプイっと顔を背けた。

 オスカーは両手でシルビアの腰を抱いた。

「二階の窓から二人が見えましたよ。何を話していたかまでは聞こえなかったですがね。でも話題はたぶん・・・かわいい弟分のことですよね?」

 シルビアはこくんと頷いた。オスカーはくすっと笑って言った。

「結構きついことも言ったんでしょう?ミーナ、しゃがみこんで泣いているように見えますね。」

「言った。泣いてた。ヴィルだけじゃなくフェリシアまでも傷つけそうだったから、自業自得だろう。」

「うん、シルビィの大切な二人のことですからね。怒って当然でしょう。あの子危ういからね。」

 シルビアはこくんと頷くとオスカーの胸に顔を押し当てた。オスカーはシルビアの頭を優しく撫で、もう一方の腕に力を籠めシルビアを抱き寄せた。

「頑張りましたね。シルビィが言わなければ俺が言うところだったんですよ。フェリシアに辛い思いさせたくないですからね。」

「ヴィルを苛立たせる程まとわりつくのも、聞く耳を持たない態度も良くない。ヴィルの毎日が楽しくなくなる。」

「ははっ、少しヴィルに妬いてしまうかな。昔っからシルビィとヴィルは仲がいいですよね。」

「ヴィルは本当の弟みたいでかわいい。ヴィルも私を本当の姉のように懐いてくれている。妬くことない。」

「うん、それは分かっているんですけどね。でも妬けるかな。」

 シルビアはオスカーの服をぎゅっと掴んだ。

「オスカー、好き、だ。」

 オスカーは少し目を見開いた後、うっとりと目を細めてシルビアを抱きしめた。

「嬉しい。愛しています、私のシルビィ。」




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