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ガチ恋っ!!ってことで  作者:


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30/61

30. 夏休み⑧ お散歩デート

 フェリシアとエリックは湖の畔を二人で歩いていた。

 湖は日の光をキラキラと反射し、鳥たちはぴぴぴっと和やかに啼いていた。山から吹く風は心地良く、静かにフェリシアの髪を揺らしていた。

「いつ来ても気持ちのいい所だな。」

エリックは遠くの山々を眺めながら言った。フェリシアは風に流された髪を耳にかけた。

「本当に気持ちがいいよね。夏でも涼しいしね。大好きよ。」

「俺も好きだな。」

 二人は顔を見合わせて笑った。

 しばらく無言で歩く二人だったが、フェリシアもエリックもその静けさが嫌いではなかった。というより、却って静かな時間が心地良く感じていた。


「そういえばミーナ嬢は相変わらずだな。」

 エリックは苦笑いを浮かべる。

「ははっ、一応大人になっているんだと思ったんだけどなぁ。」

 フェリシアは乾いた笑いで答えた。


 今日はミーナが来てから三日目。

 ミーナはこの地を訪れた当初から元気いっぱいだった。ただその元気さが向かう方向に問題があった。彼女は三年前に初めてヴィルノアに出会い、この地で一緒に過ごすうちにすっかり心を奪われていた。そしてその気持ちを隠すことなくヴィルノアにぶつけてきた。時に言葉で、時に行動で。彼女のそういった行動はヴィルノアからすれば迷惑なことで、毎回そっけなく冷たくあしらってきた。しかしミーナはめげることもなく、ヴィルノアへの恋を諦めることはなかった。

 それは今年も続いていた。

 ある時はヴィルノアが居間のソファーで本を読んでいると自分も本を持って隣に座り、少しでもヴィルノアが顔を上げると即座に話しかける。ヴィルノアがそれには無言で立ち上がるとミーナも立ち上がり、ヴィルノアの腕に絡みつこうとする。それをヴィルノアが躱し部屋を出ていこうとすると、後ろをついていく。対応することが面倒になり、ヴィルノアは自室に戻り、鍵をかけ籠ってしまう。

 またある時はフェリシアとヴィルノアが二人で絵を描いていると、二人の間に座り込み、一緒に絵を描き始めた。そしてヴィルノアに自分を描いてくれと強請った。

 剣術の稽古をしていればタオルを持って駆け付け、ヴィルノアに渡そうとする。ヴィルノアが受け取らないと分かると、次は飲み物を持ってきた。これもスルーされると次は椅子を持ってきて座り込み、大きな声で声援を送り始めた。

 朝食の後には庭園に花を見に行こうと誘い、昼食の後には湖の畔を散歩しようと誘い、夕食の後にはカードゲームをしようとミーナはヴィルノアを誘った。兎にも角にもミーナはヴィルノアと一緒に居ようとした。

 ヴィルノアの表情はどんどん無表情になっていき、口数も減っていった。


「あの行動力と精神力には毎回驚かされるな。」

「本当変わらなくてびっくりよ。たまにしか会わないのに、ずっとノアが好きなのね。」

 フェリシアとエリックは顔を見合わせ苦笑いを浮かべた。

「それにしても今年は一段とすごいな。ヴィルがどんどん不機嫌になっていく。」

「確かにノア不機嫌だよね。昨日なんてミーナにまとわりつくな、迷惑だって言ってたわ。」

「あぁ、言ってたな。それに対してミーナは庭の散歩が嫌でしたら湖で釣りはいかがですか、とか言ってたぞ。あの強メンタルはすごいな。まったく折れない。」

「ははっ、そろそろノアを助けてあげた方がいいかな。ミーナに注意してみるとか。」

「いやぁ、フェリシアは何もしない方がいいんじゃないかな。」

「えー、私ミーナとノアよりお姉さんだよ。お姉さんとして何とかしてあげた方がよくない?」

「フェリシアだと余計こじれるような気がするんだが。バルトかオスカーか俺辺りが無難なんじゃないかな。シルビアはキレそうな気がするしな。」

「でも私ミーナの従妹だよ。あの子の暴走を止めるのは私じゃない?そろそろノアがキレる気がするのよね。」

「確かにな、ヴィルは限界近いように思う。ただキレたとしても理由がな・・・。」

「やっぱり私がミーナを諫めるよ!」

「いやいやいや、フェリシアじゃない方がいいって。」

 エリックはぶんぶんと両手を振った。

「なんで私じゃダメなのよ!」

 フェリシアは頬を膨らませた。

 エリックは自身の頬を指で搔きながら、視線を宙に彷徨わせた。

「あー、従妹という近さだと感情的になることもあるだろう。こういうことは冷静に話せる第三者の方がいいって。だから俺らの方がいいだろう。フェリシアにはヴィルのフォローを頼みたいな。」

 フェリシアは気付いていないようだけど、ミーナはフェリシアにライバル心を持っているようなんだよな、とエリックは思った。フェリシアが何か言うとミーナは確実に荒れる、という確信めいたものもあった。

 フェリシアはぷくっと頬を膨らませていたが、ふぅっと息を吐き出すとエリックの提案を受け入れた。


「分かった。ミーナはエリック達に任せるよ。ノアのフォロー頑張るね。あれっ、フォローって何すればいいかな?」

「ああ、いつもみたいにクッキーでもあーんって食べさせとけばいいんじゃないか?」

「ふふっ、お菓子で機嫌が直るなんて、お子様みたい。ノアはもうすぐ15歳よ。」

「いや、ヴィルの機嫌は確実に良くなる。そう意味ではまだまだ単純な子供のようなところがあるよ。」

「そうかな?エリックがそこまで言うならやってみようかな。」

「あぁ、そうしてくれ。」

 二人は互いに顔を見合わせ笑った。


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