23. 夏休み① スカイ公爵領で遊びましょう
「着いたぁ」
フェリシアはぐぅっと手を挙げ、背筋を伸ばした。
スカイ公爵領、つまりフェリシアの家の領地の邸宅にフェリシアは、エリック、オスカー、エリザベス、シルビア、ヴィルノア、バルトの六人とやってきた。毎年同じメンバーで夏に二週間程スカイ公爵領で過ごしている。今年はエリザベスが加わった。
スカイ公爵領は馬車で一日、王都より北に行ったところにあり、高い山や森、湖が多くある。王都より北にあるので夏は涼しく、過ごしやすい。スカイ家の邸宅は湖の畔にあり、吹く風が一層涼やかだった。
今年も夏の恒例でフェリシア達はやってきて、二週間を気ままに過ごす予定だ。ピクニック、お買い物、お散歩などなど。毎日集まっては何をやって楽しく過ごすか話し合って決める。そんな毎日が続くのかと思うとフェリシアは自然と笑顔になった。
「とても気持ちのいい所ですのね。」
エリザベスは深く息を吸った。
「皆様が快適にお過ごしなられますよう使用人一同、誠心誠意尽くさせていただきます。」
執事のセルは胸に手を当て頭を下げた。セルは長身ですらっとしている。年齢は不明だが40から50歳くらいのはずである。
「世話になる。」
「お世話になりますわ。」
思い思いの言葉でフェリシア達も言葉を掛けた。
「皆様お疲れでしょう。お部屋にご案内いたします。」
セルは数人の使用人と共に客人達を各部屋へと案内した。
客室は2階で、中央階段を挟んで右側4部屋を男性陣が、左側2部屋を女性陣が使えるように整えられていた。どの部屋にもバルコニーがあり、バルコニーからは花咲き誇る庭を楽しむことができた。また、どの部屋も湖側にバルコニーがあり、山々と湖とが織りなす自然豊かな光景も楽しめた。フェリシアは自室が3階にあり、そちらを使用する。2階の中央階段の前には応接間と食堂があり、客人が自由に使うことができた。
フェリシアは荷物を自室に置き終えると、2階の応接間に向かった。応接間にはエリザベスが既にいた。
「荷物は片付いた?」
「えぇ、概ね片付きましたわ。素敵な部屋でこれからの日々が一層楽しみになりましたわ。ありがとう、フェリシア。」
「気に入ってもらえたようで嬉しいわ。バルコニーには出てみた?」
「いいえ、まだですわ。」
「一緒に行きましょう。」
フェリシアはバルコニーに続く窓を開けた。夕方の涼しい風に草木の香りが運ばれてきた。二人はバルコニーに出ると沈みゆく夕日に照らされてオレンジ色に染まる山々に圧巻された。
「私この時間のこの家から見る景色が大好きなの。」
フェリシアは風になびく髪を耳にかけた、エリザベスはバルコニーの手すりに手を置き、遠くの山々を見て言った。
「本当に美しいですわね。」
「私この領地が大好きなの。自然が豊かで、領民の皆さんも穏やかで、屋敷の使用人達も優しくてね。だからエリザベスにも来てもらいたかったし、好きになってもらえたらいいなぁ。」
「わたくしこの地がとてもきれいで気持ちよくて、もう魅了されていますわ。お友達とこうして長い間お泊りしながら過ごすのも初めてで、とてもワクワクしておりますの。」
エリザベスは屈託のない笑顔を見せ、年相応の顔をしていた。
「ふふっ、明日からいっぱい遊ぼうね。」
二人は顔を見合わせ微笑み合った後、刻一刻と変化する空や山々の光景を楽しんだ。
次の日、初めてスカイ公爵領を訪れたエリザベスの為に午前中は屋敷の周りを、午後は中心街を見て回ることになった。
屋敷の周りには四季折々の花々が楽しめる庭があり、その庭を抜けると少しの木立を通って湖に抜けることができた。湖には湖に沿って遊歩道が設けられ、湖には東屋やボート小屋があった。ボート小屋にはボートだけではなく釣り道具も用意されていた。フェリシアがエリザベスに説明する中、みんなでのんびりと散歩を楽しんだ。
昼は庭に整えられた東屋で咲き誇る花を見ながらランチを楽しんだ。
午後は中心街へ散策に出かけた。中心街のテルベは王都に比べたらこじんまりと見えるが公爵領の中心街ということもあり、一通りの商店が揃っていた。治安が比較的安定しているためか、人も多く、各々買い物を楽しんでいた。
フェリシア達はシンプルな服を身に着け街にやってきた。
「中々新鮮!制服やドレスじゃないのって。」
フェリシアはくるっと全員を見渡す。男性陣は白いシャツに黒やこげ茶のパンツ姿、女性陣は膝丈までの装飾の少ないシンプルなワンピースを着ていた。
「すっごく動きやすいわ。」
フェリシアはくるんとその場で回った。スカートがふんわりと広がる。
「かわいいよ、シア。」
ヴィルノアは目を細めて言った。
「ありがとう。ノアも素敵よ。」
嬉しそうにフェリシアは笑った。
「ありがとう。シア、大好き。」
「ふふっ、知ってる。」
「それにしても何を着ても王子さまは王子様で、王女様は王女様だねぇ。」
フェリシアはエリック、ヴィルノア、エリザベスを見て言った。彼らのキラキラとした王室オーラのようなものが隠しきれていないのだ。
「そうだな。だが、毎年来ていて問題はなかったから、ここなら大丈夫だろう。」
シルビアは三人の王族をちらっと見て言った。
「そうだね。まさかこんな街に王族の方が3人もいるとは思わないよね。」
「あぁ、大丈夫だろう。さて、どこから行く?」
エリザベスは友達と初めての街歩きということで見るもの全てが新鮮であった。きょろきょろとショーウインドウを見ていた。
「まぁ、美しいですわ。」
ふらふらと吸い寄せられるようにある商店のショーウインドウに向かって歩いて行った。




