166. 姿絵コンテスト㉙ よろしくお願いします
クララはベンジャミンとのやり取りを一通り終えると、ふぅっと小さく息を吐き呼吸を整えた。
「はいっ、このように色ごとに無縁そうな私でも、こうしてパートナーとのラブな場を演出できるのです。普段から人目を気にせずイチャイチャなお二人ならもっとです。」
クララがさっと腕を振ってヴィルノアとフェリシアに場内の視線を誘導した。
ヴィルノアは軽く頷くと、フェリシアの手を取って、それはそれは誰もが見惚れてしまうような甘い微笑みを浮かべフェリシアを見た。
会場内からは、ほぅっという女生徒から漏れ出た声が聞こえてきた。
「シア、僕の色を着けてくれる?」
「うん、ノアも私の色を着けてくれる?」
「もちろん。嬉しい。僕はシアのものって誰からも分かるね。」
「ふふっ、そうね。ノアはわたしのもの、ね。・・・私はノアのものだよ。今も、これからも、ずっと、ね。」
フェリシアはほんのり頬を赤らめふにゃっと顔を緩め微笑んだ。
目を細め破顔したヴィルノアは、そっとフェリシアを抱き締めた。
「嬉しい。僕のシア、大好き。」
「うん、知ってる。抱きしめ続けて欲しい気もするけど、これではタイピンがつけられないわ。少し放してもらっていいかな?」
「ああ、ごめん。嬉しくて、つい。」
ヴィルノアは慌てて、フェリシアに回した腕を引っ込めた。
「改めて・・・永遠に続く僕のシアへの想いを込めて、大好きなシアへこの僕の色のついたヘアピンを贈ります。」
そう言ってヴィルノアは目を閉じヘアピンに口付けをし、フェリシアの髪に優しくヘアピンを付けた。少し離れて満足そうに頷いたヴィルノアは言った。
「すごく似合っているよ、シア。かわいい。」
「ふふ、ありがとう。私からもいい?」
「うん。お願い。」
フェリシアは目を閉じ、タイピンに軽くキスをした後、ヴィルノアのネクタイにタイピンを付けた。
「チャームが揺れてかわいい。ノアによく似あっているわ。無くさないでね。」
「絶対無くさない。明日から毎日使うよ。シアの色を毎日つけれるなんて・・・僕は幸せだね。」
「ふふ、私も大切にするね。ノア色のアクセサリー。」
フェリシアは嬉しそうに微笑んで、髪につけられたヘアピンをそっと撫でた。
ヴィルノアも嬉しそうに微笑むと、フェリシアの額にそっと口付けをして、フェリシアを優しく抱きしめた。
「好き。大好き、シア・・・僕の僕だけのシア。」
「うん、知ってる。」
フェリシアもそっとヴィルノアの背中に腕を回した。
「はい、私も知っています。」
するっとフェリシア達の会話に入り込んだクララは会の進行を朗らかに進め始めた。
「私はヴィルノア殿下とフェリシア様のイチャイチャを鑑賞する会、名誉会長ですので、糖度の高いお二人のやり取りは大好物です。さて、この甘さに勝てる方はいらっしゃいますか?ぜひ、挑戦してみてくださいね。」
茶目っ気たっぷりに話すクララに会場内からは笑いが起きる。
「はい、このように同じアイテムを使っても、それぞれ違ったドラマが演出できるのです。皆様、腕の見せ所です!!上手くこちらのアイテムをご利用ください。会の終了まであと30分程度です。最後までお楽しみくださいませ!!」
クララのその言葉を合図に、照明が少し落とされ、音楽も静かなものに変わった。そして、トレーにタイピンとヘアピンを乗せたスタッフが会場内を歩き始めた。
あちらこちらで、それぞれのドラマが繰り広げられる中、バルトはマリアを連れてフェリシア達の元へやってきた。
「フェリシア、ありがとう。フェリシア達が勇気をくれたことで、頑張れたの。・・・自分に正直になれたわ。」
マリアは頬を赤らめて言った。
「良かったね、マリア。バルトと一緒にいるマリアは一段とかわいいわ!」
「ありがとう。ベンジャミン様にかわいくしてもらって、少しだけ自分に自信がついたの。弟達にも褒めてもらえたし、私も、そのう、自分で言うのもなんだけど、私もそこそこかわいい女の子の一人だって思えたの。」
「いつも言ってるでしょう。マリアはかわいいって。」
「うん。今日、鏡見て、フェリシア達の言うことを初めて信じることができたの。自分と向き合って、自分の気持ちは分かっていたけど、自信がなくて・・・卑屈になっていたのね。でも、鏡の中の自分を見て、頑張ろうって思えたの。後悔しないようにしようって思えたの。フェリシア達のおかげよ。ありがとう。」
マリアはふんわり笑った。バルトはマリアの様子を優しく隣で見守っていた。
「フェリシア様、ありがとうございます。何度でも諦めず頑張れって言って頂いて、腹をくくることができました。マリアさんを手に入れる為なら、衆人環視の中の告白だってなんだってするべきだって思えました。ヴィルの所構わず、フェリシア様に愛を囁く姿、あれって大事なことだったんですね。」
バルトは腕を組みうんうんと首を縦に振った。
ヴィルノアはむぅっと顔を顰めて言った。
「シアがかわいいからいけないんだ。分かるだろう。好きな人がかわいく隣で微笑んでいたら、かわいい、大好きって言わずにはいられないだろう。」
「ああ、今ならヴィルの気持ちが分かる。俺、結構マリアさんにかわいいって思わず言ってる。」
「だろう。シアにかわいいとか大好きって言うと、またかわいく笑うんだ。・・・無限ループなんだ。」
「うーん、まだそこまでの境地には至っていないな。今日、付き合い始めたわけだし・・・。」
「お前もすぐわかる。」
「それは、楽しみだな。」
バルトとヴィルノアがそんなことを話していると、クララがベンジャミンと共にやってきた。
「バルト様、ご協力ありがとうございました。良かったですね。思いが通じて。マリア様も、納得いく答えが出せてよかったですね。」
「ええ、クララもありがとう。ベンジャミン様、今日はこんな素敵なメイクをして下さり、ありがとうございます。お二人のおかげで勇気を出すことができました。」
マリアがぺこりと頭を下げた。
「いえいえ、私たちのしたことはほんのちょっとです。確かにベンの技術は高いですが、元の良さを引き出しただけです。ねぇ、弟君たち?」




