163. 姿絵コンテスト㉖ 一位のご褒美
クララがケーンに話を振ると、ケーンはものすごい勢いでスケッチブックにペンを走らせていた。
「あ、はいっ、ちょっと待ってください。・・・あっ、はい、お二人のやり取りをまじかに見ることができる機会は今までなかったので・・・はい。なんでしたっけ?
ああ、お二人のイチャイチャタイムについてでしたか。お二人のやり取りは素晴らしいです。全男子生徒の憧れです。彼女ができたらやってみたいことナンバーワンは間違いなくヴィルノア殿下がされているような彼女をお膝抱っこする、です。そしてフェリシア様がされているように彼女から甘やかされたいです。また女子生徒の憧れの彼氏像は、間違いなくヴィルノア殿下です。殿下みたいに甘く愛をいつでも囁いてほしいはずです。普通恥じらいもあってあんなに愛を囁けません。
ああ、ペンが止まりません!!」
ケーンはペンを握りしめ力説した。会場内の多くがうんうんと頷いていた。
「ほう、では一位獲得のお祝いに、お二人にケーン様ご希望のポーズをとっていただきましょうか。フェリシア様、いいですか?」
クララがニヤッと笑ってフェリシアにお伺いを立てた。
「うん、私はいいよ。ノアもいいよね?」
「・・・シアがいいならいいよ。」
ヴィルノアは不貞腐れたように言った。
クララとフェリシアは顔を見合わせ苦笑いをした。
「殿下、フェリシア様が喜びますよ。」
クララが茶目っ気たっぷりに言うと、ヴィルノアはにこぉっと笑うフェリシアをちらっと見て、ふぅっと小さく息を吐いた。
「僕は何をすればいいですか?」
クララはにやっと笑ってケーンに聞いた。
「ケーン様、何を希望されますか?」
ケーンは嬉しそうに笑うと、ペンを天井に向けて言った。
「それでは、ヴィルノア殿下がお姫様抱っこされているところを見てみたいです。まだ一度も見たことがないので、よろしいでしょうか?」
ヴィルノアは少し目を見開いて、驚いた様子だったが、フェリシアに優しく微笑みかけるとフェリシアの背と膝裏に手を当てふわっとフェリシアを持ち上げた。
「うわぁぁぁぁ!!」
淑女らしからぬ声を出しフェリシアはヴィルノアの胸元を握りしめた。
「ほら、シア。暴れると落ちるよ。僕の首に手を回して。」
「首?」
フェリシアはヴィルノアの胸元を握りしめたまま、顔を真っ赤に染め上げた。
ヴィルノアはそんなフェリシアを見て首を傾げた。
「どうしたの、シア?あれ、顔が赤いよ。・・・もしかして首で思い出したの?この前のご褒美のこと。あれは、シアが色気醸しててよかったよね。」
ヴィルノアが嬉しそうに言うと、フェリシアは上目遣いでヴィルノアを睨んでぼそっと言った。
「・・・ノアのえっち・・・。」
そう言うとフェリシアはヴィルノアの胸元に顔を押し当てた。
ヴィルノアは言葉を失ったまま、頬も耳も首も真っ赤に染め上げた。
クララは口元に手を当て、ニヤッと笑って言った。
「ヴィルノア殿下、えっちです。」
ヴィルノアははっと意識を取り戻し、苦笑いを浮かべて言った。
「・・・揶揄わないでください。えっちじゃないですよ。クララ嬢だって見てたでしょう?」
「はい、見てましたよ。フェリシア様の色気に翻弄されて、たじたじの殿下を。フェリシア様に転がされる殿下はかわいいかったですよ。」
クララがニヤッと笑って言うと、ヴィルノアはふぅっと小さく息を吐いて諦めたように言った。
「・・・クララ嬢まで僕をかわいいというんですね。はぁ、僕は年上の女性に弱いようです。それがシアならなおさらです。・・・勝てる気がしません。」
「ふふ、フェリシア様、殿下拗ねちゃいました。どうします?」
フェリシアはヴィルノアとクララのやり取りを黙って聞いていたが、顔をキッと引き締めると、クララを見てこくんと頷くと、ヴィルノアの頭に片手を回して言った。
「ん-、こうします!」
そう言うとフェリシアはグイっと手に力を込めてヴィルノアの顔を引き寄せると、頬にチュッとリップ音を立ててキスをした。そして耳元に顔を近づけ囁いた。
「かわいいノアも好きよ。大好き。」
ヴィルノアはポーっと少しの間呆けていたが、嬉しそうに笑うとぎゅうっとフェリシアに回した腕に力を入れお姫様抱っこのフェリシアを抱き締めた。
「・・・シアの方がずっとかわいい・・・大好き、シア。」
「うん、知ってる。」
フェリシアはヴィルノアの頭を撫でた。
「はい、私も知っています。会場にいる皆様全員知っていますね。さて、ケーン様、生イチャイチャショーはいかがでしたでしょう。ご満足いただけましたか?」
するっとクララが会話に加わって、忘れてはいなかった会の進行を始めた。
ケーンは恐ろしく速いペースで次々にデッサンを描いていた。そしてスケッチブックと、フェリシア達とを交互に見ながらケーンは言った。
「大満足です!ペンが止まりません!!」
クララがスケッチブックを覗き込むと、フェリシア達の絵が所狭しとたくさん描かれていた。角度を変え、表情の変化をとらえ、と短い時間の間によくこれだけ描いたという量であった。
「まぁ、これだけの短い時間に素晴らしいですね。ねぇ、ケーン様。これ、仕上げて今回の姿絵と合わせて販売しませんか?」
「ええ・・・いいですよ。・・・早速 帰って仕上げ・・・ますね・・・。」
ケーンは目はスケッチブックとフェリシア達との往復に忙しく、手はペンを忙しく動かし、と、合間合間に返事をした。
クララは再びニヤッと笑うと、朗らかに会場に集まった者達に言った。
「皆様もお聞きになりましたね!大人気の絵師様による姿絵がもう一枚追加されることとなりました。殿下たちのようなイチャイチャ度高めの恋愛を望まれる方、必見ですよ。お守り代わりになること間違いなしです。ぜひお楽しみに!!」
会場内からわぁっという声と、拍手が巻き起こった。
クララはバチンとフェリシア達にウインクをし、にやっと微笑むと、フェリシア達はクララの抜け目のない手腕に、楽しそうに微笑みを返した。
この後、ケモミミという課題のもう一つの部門では、四年生の女子生徒が描いた四年生で人気の伯爵令息の絵が一位となった。オオカミの耳にワイルドな服装とニヒルな微笑みが女子生徒に受けたとのことだ。
ヴィルノアの描いた猫耳メイドのフェリシアは三位に入っていた。




