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ガチ恋っ!!ってことで  作者:


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16. 学園祭⑤ 玉子と闘います

 グチャ、ボトッ。


「あぁ、またダメですわ…」


 エリザベスは作業台の上に乗った割れた黄身とその上に散らばる玉子の殻をじっと見つめ深いため息をついた。作業台には沢山の玉子とボウル、布巾が置かれていた。ボウルは二つあり、一つは空っぽ、もう一つは殻と中身が混じっていた。エリザベスは調理室の一角を借り、玉子を割る練習を密かに一人で行っていた。テーブルの上に無残にも落ちてしまった玉子を片付け、エリザベスは新しい玉子を手に取った。


「次はできますわ!」


 気合を入れ玉子をボウルの縁に当てた。


 グチャ、ボトッ。


「あぁぁ…。」


 エリザベスは手に残った殻を見つめ、うっすらと目に涙を浮かべた。


「何してるんだ?」

「!!」


 エリザベスが振り向くと、キョトンとした顔のエリックが立っていた。エリックの視線はエリザベスの手から作業台のボウルにと動いていた。エリザベスはとっさにべちょべちょの両手を後ろに回し俯いた。


「あっ、あのう、これは…。」

「もしかして玉子割れないのか…?」

「!!」


 エリザベスは俯いたまま顔に熱が集まるのを感じた。

 エリックはうーんと視線を宙に向けた後、ぼそっと言った。


「俺でよければ教えようか?」

「エリックは割れますの?」


 エリザベスはがばっと顔を上げ、エリックを見つめた。


「ああ、できるよ。たまにフェリシアの菓子作り手伝うからな。」

「お願いしますわ!」

「それじゃあ、割ってみて。」

「はいっ!」


 エリザベスは玉子を一つ取ろうとして自身の手が殻だらけなことに気が付いた。


「まずは手を拭こうか。」

「・・・えぇ…。」


 エリックは苦笑いを浮かべながら布巾をエリザベスに渡した。エリザベスは手の平から殻を落とし、布巾で拭いた。エリックは玉子を一つエリザベスに渡した。


「それでは割らせていただきますわ。」


 エリザベスは真剣な顔で玉子をボウルに叩きつけた。


 グシャッ、ベチャッ。


 玉子は少しの殻と中身がボウルの外に落ち、エリザベスの手の中にも割れた殻が残っていた。


「うぅ、また失敗してしまいましたわ…」

「うわぁ、見事に下手くそだなぁ。」


 エリックは口元に手を当て、感心したように頷いた。


「もう、笑わないでくださいまし。」


 エリザベスは涙目で訴えた。


「あぁっ、ごめん、泣かないで。ちゃんと教えるからっ。」


 エリックは狼狽えてオタオタと手を振った。そして玉子を一つ取り、ボウルにコツンと当てて割った。玉子はするんとボウルの中に落ち、殻は二つエリックの手の中に残っていた。


「なっ、難しくないだろう?すぐできるようになるさ。」

「・・・本当に?わたくしとても不器用ですのよ?」

「うん、そうみたいだな。でも大丈夫だ。できるまで付き合うよ。」

「・・・お願いしますわ。」


 エリックは一つ玉子をエリザベスに渡した。


「手に触れてもいいか?」

「えぇ。」


 エリックはエリザベスの手に自身の手をそれぞれ掴み、玉子を割る一連の動作をした。


「多分エリザベスは力を入れすぎなんだ。玉子に少しヒビが入る程度にして、ヒビに指を当てて左右に引くんだ。ほらっ、割れた。簡単だろう?」


 玉子はするりとボウルに落ちエリザベスの手の中には二つの玉子の殻が残っていた。エリザベスは殻を見つめていた。


「ほらっ、感覚を忘れないうちに割ってみよう。」

「はいっ。」


 エリザベスは玉子を握りしめた。


「いきますわ。」


 グシャッ、ベチャッ。


「あぁぁ…。」


 エリザベスはガクッと肩を落とした。


「ははは、次、次!力抜いて。」


 エリックは玉子を渡した。


 グシャッ、ベチャッ。あぁぁ。はい、次。


 繰り返し、繰り返し、、、とうとう八つ目でするりとボウルの中に玉子の中身が落ちていった。


「見ていました?できましたわ!」


 エリザベスは満面の笑みで飛び跳ねんばかりに喜んだ。

 エリックは微笑みながら、玉子を一つ渡した。


「やったな。感覚忘れないうちにもう一つな。」

「えぇ!」


 それからいくつか割ったが全て成功した。

「できるようになりましたわっ!!」

 両手を胸の前で組み、満面の笑みを浮かべたエリザベスはエリックに体を向けた。

「ありがとうございます!!」

「どういたしまして。一度コツを掴めば、誰でもできるんだ。」

「えぇ、その通りですわね。わたくし不器用でいつもコツを掴むまで時間がかかってしまいますの。」

「別に気にすることないさ。得意不得意は誰にでもあることだろう?それにもかかわらず、できるように  なるまで練習するなんてエリザベスはすごいな。頑張り屋なんだな。」

「そ、そんなことはありませんわ。」

 エリザベスは頬に熱が集まるのを感じ、両手を頬に当てた。

「できるように頑張れるなんてすごいよ。誇っていい。」

 エリックはにかっと笑った。

「ありがとうございます。王女という立場なんでしょうが、何でもできるのが当たり前と思われることが多くて…。でもわたくしは御覧の通り不器用で、人の倍の練習が必要ですの。できない自分が本当に嫌になりますわ。」

 エリザベスは苦笑いを浮かべ、しゅんっと俯いた。

 エリックは腕を組み片手を顎に当てた。

「できないって諦めないんだから、やっぱりすごいと思うよ。エリザベスは努力の人なんだな。そうなんだよな。王族ってだけで優秀であることが求められるよな。妙な期待をされるんだよな。俺なんかなまじ兄上が優秀だから求められるハードルが高いんだよなぁ。昔はさぁ、そんな状況が嫌で逃げていたこともあったけど、ヴィルがそれを食い止めてくれなければ、俺は何にもできない横暴な馬鹿王子だったと思うよ。だからエリザベスはすごいよ。誇っていい。尊敬するよ。」

 にかっと笑ってエリックはエリザベスを見た。

 エリザベスは目を見開き、エリックを見た。エリックの目が優しくエリザベスを見ていることを知り、エリックの言葉が偽りのないものであると確信することができた。


 つきものが落ちたかのように心からの微笑みをエリザベスは浮かべた。

「ありがとうございます。」

「・・・」

 エリックはその笑顔にしばし見とれた。

「ありがとう、エリック。」

 噛み締めるようにエリザベスは言った。

「笑った方がいいよ。エリザベスはかわいいな。」

 エリックはにかっと笑った。

 エリザベスは顔を真っ赤に染めた。












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