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ガチ恋っ!!ってことで  作者:


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15. 学園祭④ みんな見ています

「シアのクラスは学園祭でなにやるの?」

 いつものようにランチタイムの食堂でフェリシアの隣に座ったヴィルノアは聞いた。

「うちのクラスは猫さんカフェをやるんだよ、ねぇ、シルビア。」

 フェリシアはニンジンをフォークに差し、シルビアに視線を向けた。シルビアは軽く頷く。

「猫さん?」

 ヴィルノアは首を傾げた。

「うん。女の子はお揃いのメイドみたいな服にエプロンして、男の子は執事みたいな服にエプロンするの。それで全員猫耳をつけるのよ。」

「えっ、シアも猫耳付けたりメイド服着たりするの?」

 ヴィルノアはグイっと身を乗り出す。

「うん、するよ。猫耳はみんなつけるんだけど、衣装は違うみたい。私の衣装は特別仕様にするんだって。レースで膨らましたミニスカートでね、しっぽがついてて、胸元は鈴のついたチョーカーが目立つようにちょっと夜会のドレスみたいに広めに開くんだって。衣装係の子が張り切って私に似合う服をデザインしてくれたって言っていたよ。『フェリシア様は足がきれいだから見せるべきです!お胸もです!』って。」

「その衣装はフェリシア限定だそうだ。私やエリザベスのは首元まで覆われていて、スカートも足首まであるそうだ。それに猫耳だ。」

 シルビアは淡々と説明する。

「因みにカフェの一番の売りは入り口で引けるくじだそうだ。くじを引いて当たりが出ると男性ならフェリシアが女性ならエリックがクッキーをあーんと食べさせてくれるという権利をもらえるとのことだ。うちのクラスの委員長が猫耳だけでは集客できないと言ってな。ある日これなら絶対客が集まるってクラス会議で委員長が提案したんだ。それをクラスのみんなが賛成して、それならとフェリシアもエリックも了承したんだ。」

「私なんかがあーんってしたって、お客さん増えるわけないのにね。エリックは分かるよ。王子様だもんね。この機会逃したら王子様からあーんなんてしてもらうことなんてないだろうから、ダメ元でもくじ引きたいよね。私なんかよりエリザベスの方が良くないかな。王女様なんだし。」

「そうだね。なんでシアなのかな?」

「さぁ、なんでかな?」

 フェリシアは首を傾げる。


「分からないか?」

 シルビアはヴィルノアに近づき小声で聞いた。

「さっぱり分からないよ。僕ならともかく、シアにさせるメリットって何?」

 ヴィルノアは顎に手を添え、委員長の規格の真意について考えていた。

「教えようか?」

「是非。」

 シルビアはニヤッと笑い頷いた。


「フェリシア、昨日作ったクッキーどうした?」

 シルビアはフェリシアに話しかけた。

「持ってきたよ。ノアにもあげようと思って。」

 フェリシアはそう言うと、テーブルの上にクッキーの入った包みを置いた。

「ヴィル、食べてみるといいぞ。美味いから。」

「うん、食べたいな。シア、頂戴。」

 ヴィルノアはにっこり笑顔でフェリシアにお願いした。

「うんっ、食べて!」

 フェリシアは一つクッキーを取り出すとヴィルノアの口元に差し出した。

「はい、あーん。」

「ん~。」

 ヴィルノアはパクっとクッキーにかじりついた。

「どう?美味しい?」

 フェリシアは少し不安げに上目遣いで尋ねた。

「うん、すごく美味しいよ。」

「ふふっ、よかったぁ。」

 フェリシアはふにゃぁと満面の笑顔を浮かべた。

 ヴィルノアはそんなフェリシアを見て嬉しそうに微笑んだ。


 そしてその時、シルビアがヴィルノアに囁いた。

「ヴィル、向かいのテーブル見てごらん。」

 ヴィルノアはそっとフェリシアから視線を外し、向かいのテーブルを見た。そのテーブルには5人の男子生徒が座っていた。そしてその全員がフェリシアを見て、頬を薄っすら赤らめ、うっとりと呆けていた。

「な、何…?」

「次はこの食堂全体を見てごらん。」

 シルビアは再び囁く。ヴィルノアはそっと全体に目をやると、席に着いている者だけではなく、歩いている男子生徒までもが立ち止まって、同じように頬を赤く染めうっとり呆けた顔でフェリシアを見ていた。

「なんなんだ、これは?」

 ヴィルノアはこの食堂の異常な状況に困惑した。

「やっぱり知らなかったんだな。フェリシアに集中し過ぎだな。フェリシアのあーんは学園の男子生徒に大人気で、向かいのテーブルは毎回争奪戦が繰り広げられているらしいぞ。無自覚の上目遣いに笑顔がかわい過ぎって事で、フェリシアは本人の知らないところで『微笑みの君』と呼ばれているらしい。それにな、小柄で童顔でかわいらしいくせに出るとこは出ていて体つきはセクシーというのは、男性のハートをつかむ要素しかないと委員長が力説してな。それにいたく同調した衣装係がフェリシア仕様の衣装をデザインしたんだ。全男子生徒の夢を形にしたと言ってな。」

シルビアはクラスでのやり取りをヴィルノアに説明した。

「委員長たちはヴィルとフェリシアがここであーんの遣り取りをしている時にたまたま遭遇して思いついたとも言ってたな。」

「知らなかった、シアって大人気なんだ。」

 ヴィルノアはまだ思考が追い付かないようだ。


「因みにあーんする権利っていうのも作るらしい。フェリシアに食べさせてみな。」

 シルビアはクッキーの入った包みをヴィルノアの前に置いた。ヴィルノアはクッキーを一つ摘まみ、フェリシアの口元差し出した。

「とっても美味しかったよ。ねぇ、シアもお一つどうぞ。あーん。」

「ん、あーん。」

 フェリシアは嬉しそうに口を開けてパクンと食べた。フェリシアが勢いよく食べたので、フェリシアの唇がヴィルノアの指先に触れた。ヴィルノアはそっと手を引くともう片方の手で包み、少し頬を赤らめた。フェリシアはもぐもぐと咀嚼し、ごっくんと飲み込むとふにゃぁと幸せそうに笑った。

「やっぱり美味しい!」

 フェリシアは両手で自身の頬を包んで目を細めた。

 ヴィルノアはそっと食堂の様子を観察した。食堂の中はフェリシア以外時間が止まったかのように、全員の視線がフェリシアに集中し、そしてほうっと呆けて動きを止めていた。


「なあ、委員長の気持ちわかるだろう?」

 シルビアは小さな声で言った。

「あぁ、知らなかったよ、こんなだったなんて。」

「まぁ、ヴィルはフェリシアしか見てないもんな。」

「うん、シアがかわいくて目が離せないんだ。」

「他の殿方も同じってことだ。」

 シルビアはヴィルノアの肩をポンっと叩いて、席に戻り、優雅に紅茶を啜った。


「んっ、どうしたの?」

 ヴィルノアが顎に手を当て、渋い顔つきで考え事をしていることに気付いたフェリシアはヴィルノアの顔を覗き込み、ヴィルノアの眉間をつついた。

「ほら、皴よってるよ。」

「・・・何とかしなければならない案件ができたんだ…。」

「ん-、なんだか分からないけど、考え事には甘いものだよ。はいっ、もう一つ。」

 フェリシアはクッキーをヴィルノアの口元に差し出す。ヴィルノアはぱくりと食いついた。

「うん、素朴で飽きのこない美味しさだね。」

「うん、そうなの!」

 フェリシアはへにゃぁと嬉しそうに笑う。

「シア、笑った顔かわいいね、大好き。」

「うん、知ってる。」

 ヴィルノアも目を細め優しく微笑んだ。

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