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ガチ恋っ!!ってことで  作者:


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14. 学園祭③ 不器用な果てのクッキー

「いい匂いだな。」

「いらっしゃい!」

厨房にエリックとオスカーがやってきた。フェリシアは片付けをしながら二人を迎えた。

「もうできるのか?」

「そろそろ、ね。二人共こっちに座って。」


エリックは椅子に腰かけながら聞いた。

「エリザベスは何をしているんだ?」

エリザベスはオーブンの前にしゃがみこみ、胸の前で祈るように両手を組んでいた。顔は真剣そのもので、その中に不安が見え隠れしていた。あまりに集中してオーブンを見つめていたため、エリザベスはエリック達が来たことに気が付いていないようだった。

「ふふっ、クッキーが焼けるのに夢中なのよ。」


ガバッと立ち上がり、顔をオーブンに近づけた。オーブンは前面がガラス張りで、中の様子が見えるようになっていた。オーブンの近くは熱気があって熱いはずなのに、エリザベスの顔は見る見る間に青ざめていった。

「まあ、フェリシア、どういたしましょう?どんどん広がっていきますわ。隣とくっついてしまいますわっ!あぁっ、全部くっついてしまいますわっ!」

エリザベスは前に組んだ手に力を籠め、オーブンを覗き込む。

「あぁっ、溶けているようですわ。溶けたらなくなってしまうのではなくて?どういたしましょう、フェリシア…」

エリザベスは泣きそうな顔でフェリシアを見た。


フェリシアはキョトンとした顔でエリザベスを見ていた。エリザベスが周りを見渡すとシルビアとサラもキョトンとした顔でエリザベスを見ていることに気が付いた。更に先ほどまで居なかったエリックとオスカーも居て、エリザベスを呆然と見ていた。


「えっ、皆様どう….。」


「「はっははははっ!!!」」


 エリザベスが困惑しつつ質問を投げかけようとしたところ、それは大きな笑い声で遮られた。

「ははっ、エリザベスでも焦ることがあるんだな!」

 エリックはお腹を抱えながら言った。

「溶けるって…。」

 フェリシアもお腹を抱えて笑っている。

「そ、そんな笑ったら悪いですよぉ。」

 サラも口元を押さえている。

「あ、あのぅ…」

 エリザベスは動揺しておろおろとしている。

「もうっ、エリザベスったらあんなに焦って、溶けるって…」

 フェリシアをはじめ笑いが止まらないようだった。

 エリザベスは真っ赤になった両頬を押さえ、その場にしゃがみこんだ。


「皆様、酷いですわ…」

 エリザベスは頬を押さえながら、涙目で上目遣いに全員を見た。

 一瞬で笑いは止まり、全員エリザベスを見た。

「やだっ、きゅんとしっちゃった、同性なのに。」

 フェリシアが自身の胸元を押さえる。

「わ、分かりますぅ。私なんかキュンキュンが止まりません!」

 サラは両手を組んでフェリシアに顔を近づけた。

「うん、分かるよ。」

 シルビアは頷く。

「うわ~きますね。」

「あぁ、くるね。」

 エリックとオスカーは頷き合う。


 フェリシアはエリザベスに手を差し出し、立ち上がらせた。

「ふふっ、エリザベスったら、かわいいんだから。」

「ああ、かわいいな。」

「ねー!」

「か、かわいい、なんて…」

 エリザベスは再び両頬に手を当て、俯いた。

「もうっ、エリザベスかわいすぎっ!」

 フェリシアはエリザベスに抱きついた。

「クッキー一つであんなにオタオタして、溶けちゃうって心配して、赤くなって、涙目になって…本当に感情豊かでかわいらしいよね。いつもは王女様って感じで隙のない所作で憧れちゃうのに、今日は私と同じ16歳の女の子的でもっと好きになっちゃった。本当にかわいい!」

 フェリシアはエリザベスをぎゅっと抱きしめた。エリザベスもフェリシアの背に両手を回し力を込めた。

「ありがとうございます。わたくしもフェリシアが大好きです。か、かわいいなんて言われたの初めてですわ。」

「うそっ、こんなにかわいいのに誰も言ってくれないの?」

「そうですね、言われませんね。」

「私が言うよ!エリザベスはかわいいっ!」

「ふふ、ありがとうございます。」


「おいっ、クッキー大丈夫か?」

 エリックは鼻をクンクンさせながら聞いた。

「あっ、いけない!」

 急いでオーブンに近づいたフェリシアは、厚い鍋つかみを持ってオーブンの扉を開けた。

 モアっと熱気が溢れ、香ばしいにおいが厨房に充満した。

「ちょうどいいみたい。」

 フェリシアは鉄板を全て取り出し、細い串を刺し、焼けているか確かめた。そして金網の上にそれぞれのクッキーを広げた。その間、サラとシルビアはお茶の用意をした。粗熱が取れたところでクッキーは皿に移され、試食することとなった。


「あっ、これエリザベスが並べたのだよね。」

 フェリシアは大きさの違う丸いものが二つくっつき、雪だるまのようになったクッキーを摘まみ上げた。雪だるま上のクッキーは厚みも違い、周囲が濃いきつね色になっていた。

「・・・分かりますわね…。」

 エリザベスは頬に手を当て、ふぅっとため息をついた。

「不格好ですわ。」

「そう?美味しそうだよ。いただきます。」

 フェリシアは半分口に入れた。

「うん、これはこれで癖になる味だよ。」

「どれどれ…」

 エリックはフェリシアの手に残ったクッキーの半分にパクっと食いつく。

「うわっ、お行儀悪っ!」

「うん、美味いな。焦げ掛けってのは癖になるな。」

「でしょう!あっ、これもだ。」

 フェリシアはエリザベス作の焦げ掛けクッキーを摘まみ上げた。


「はい、あーん」

 フェリシアはエリックの口元にクッキーを差し出した。エリックもパクっと口に入れた。

「うん、やっぱり美味いな。」

「ふふ、そうだよね。見た目じゃないよね。」

「そうだな、見た目じゃないよな。いいこと言うな。フェリシアのそういうとこ好きだな。」

 にかっとエリックは笑った。

「あらっ、ありがとう。私も美味しそうにクッキーを食べてくれる食いしん坊なエリックが好きよ。」

「なんだぁ、食いしん坊って。」

 エリックは拗ねたように口を尖らした。フェリシアとエリザベスは顔を見合わせて笑った。


「それにしてもクッキー美味いな。」

「ねぇ~」

 フェリシアとエリックはパクパクと食べていった。

「お二人とも仲がよろしいわね。まあ、本当に素朴で美味しいですわ。」

 エリザベスもクッキーを頬張った。

「そうだよね。自分で作ると尚更美味しいと思うの。」

「ええ、そうですわね。」

「それにクッキー種は焦げることはあってもなくならないって分かったしね?」

 にやっと少しだけ意地悪な顔をしてフェリシアは言った。

「もうっ、忘れてくださいまし!」

 エリザベスは両手で顔を覆った。





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