158. 姿絵コンテスト㉑ 育てるものです
放課後。
庭園の東屋には、なぜか椅子の上で正座するマリアの弟二人とその向かいで優雅に微笑み冷めた目で彼らを見下ろすエリザベス、その後ろに楽しそうに微笑むアゼリアと、両腕で自身の体をキュッと抱き締めプルプルと小刻みに震えるフェリシアがいた。
「よろしいですか?もうお分かりですね?」
エリザベスが静かだが圧のある声でそう言うと、弟達は背筋をピンと伸ばし、膝の上に置いた両手をぎゅっと握り、青ざめた顔でこくこくと頷いた。
「「はいっ!」」
フェリシアはプルプルと震え、言った。
「エリザベスが怖いよぉ。」
「シア、話は終わった?」
エリックとやってきたヴィルノアが声を掛けてきた。
フェリシア達は、弟二人との話し合いが終了次第、ヴィルノアの携わる事業の宝石の欠片について話し合う約束をしていた。
「ノ、ノア・・・。」
振り向いたフェリシアを見たヴィルノアはぎょっとした顔をしてフェリシアに足早に近づくと、フェリシアの頬に手を当てた。
「顔色が悪い。それに・・・震えてるの?寒い?取りあえずこれ着て。」
ヴィルノアは急いで上着を脱ぐとフェリシアの肩にそっとかけた。
「・・・ん-、温かい。」
フェリシアはかけられた上着に腕を通すと、袖から出ない手を口元の前で合わせた。
その様子を見ていた弟二人は頬をほんのり赤らめ、ぽーっと呆けたようにフェリシアを見た。
ヴィルノアも頬を赤らめ時間が止まったかのようにぽーっとフェリシアを見ていた。
「まぁ!」
エリザベスは頬に手を当て、声をあげた。
その声にはっと我に返ったヴィルノアはフェリシアをぎゅっと抱きしめた。
「だめだよ、シア!僕の上着を着たシアは殺人的にかわいいんだ。そんな姿を誰にも見せちゃだめだよ!見た男はみんなシアを好きになっちゃうよ!」
弟二人はこくこくと頷いた。
フェリシアは楽しそうに笑って言った。
「ふふ、何を言っているの。そんなことあるわけないじゃない。私はモテないわよ。」
「そんなことないよ!!シアは世界で一番かわいいんだよ。」
「ふふ、ありがとう、ノア。その、うん、私はノアにだけモテていればいいんだよ。」
フェリシアは照れくさそうに頬をほんのり赤らめて、はにかんだ笑みでヴィルノアを見た。
ヴィルノアは目を見開いた後、フェリシアをぎゅっと抱きしめた。
「ああ!!もう、かわいい・・・。シア、かわい過ぎ。大好き、シア。」
弟二人もこくこくと頷いていた。
「うん、知ってる。」
フェリシアはギュっとヴィルノアの胸元を掴んで、頬を摺り寄せた。
弟二人はそんなフェリシアを見て、ぽーっと呆けた顔で頬を赤らめた。
エリザベスはパンっと手を叩いて弟二人の意識を戻すと言った。
「はい、ご覧になりましたね。フェリシアがとてもかわいいでしょう。いいですか。あれは日々ヴィルノア殿下がフェリシアにかわいいと言い続け、愛情を注ぎ続けた結果なのですよ。お分かりですか?この庭に咲く花々が美しいのは、愛情をもって丹精込めて庭師の方々が手入れをして下さっているからなのです。人も同じです。
それをなんですか。あなた方は姉君に毒を与え続け、心を傷つけ続けた。あなた方が彼女の容姿や人格を否定し続けた結果、彼女はすっかり自信を失うどころか、あなた方の言葉が正しいとさえ思っているのです。それは、この美しい花々を育てる行為とは真逆のことです。苗の段階で毒を与え続け、枯らそうとしているのです。
あなた方は家族ですのに、それに甘えて言いたい放題。何を考えているんですか。もういい年でしょう。ヴィルノア殿下は八歳でフェリシアと出会ってから、ずっと愛で続けているのです。幼い時ならいざ知らず、今はいい年ですよね。家族だからこそ、彼女が美しく咲きほこれるようにサポートすべきなのですよ。
あなた方が今までやってきた行いは、決して許されることではありませんよ。」
エリザベスは奥に熱がこもった目で弟二人を見おろし、王女然とした微笑みを称えた顔をして言った。
「お分かりですよね。」
弟二人は顔を青くしてこくこくと頷いた。
「ねぇ、シア、何で震えていたの?また震えてない?今日、そんなに寒くないよね。」
「うん。エリザベスがとっても、と-っても怖いんだよぅ。ほら、今も・・・。」
フェリシアはエリザベスの冷たい目と微笑みを見てプルプルと震えた。
エリザベスはフェリシアの言葉を聞いて、フェリシアに微笑んで言った。
「まぁ、嫌ですわ、フェリシア。私はごく当たり前のことを冷静に彼らにお伝えしただけですわ。そうですわよね。」
エリザベスが弟二人に視線を向けると二人はより青ざめこくこくと忙しく頷いた。
「ほら、ねっ。」
エリザベスが美しく微笑んだ。
「うぅぅぅ、そうなんだけど、その笑顔が怖いんだってばぁ。」
「はは、エリザベス王女のお説教はかなりの効果がありますよね。先日、シアが僕を抱き締めようとして途中でやめてしまいました。」
「だ、だって、まだエリザベスと学生したいんだもん。」
フェリシアがぼそっと言うと、エリザベスは目を輝かせた。
「ヴィルノア殿下、フェリシアから離れて下さいませ。」
「あ、はいっ。」
ヴィルノアは弾かれたようにフェリシアに回した腕を引っ込めた。
エリザベスはフェリシアに近づき、振り向いたフェリシアを抱き締めた。
「フェリシア、大好きですわ。」
フェリシアはエリザベスの背中に腕を回しぎゅっとしがみついた。
「私も好き!エリザベス、大好き!!」
ヴィルノアはむっと顔を顰めた。
エリックはやれやれと苦笑いを浮かべた。
「良かったな、フェリシア。両思いだな。」
揶揄うようにエリックが言うと、フェリシアはにたぁっと笑った。
「ふふ、妬いてくれてもいいわよ。」
「確かに妬けるなぁ。そろそろ俺の番だよな、エリザベス。俺にもかまって。」
そう言うとエリックはエリザベスの手を取り、その甲にチュッとリップ音をさせて口付けをした。
エリザベスは顔を上げ、頬を染めた。
その顔を満足そうにエリックは見た後、フェリシアに言った。
「ほら、どけ、フェリシア。俺にエリザベスを返せ。それにヴィルが明らかに不機嫌だぞ。」
フェリシアがヴィルノアを見ると、ヴィルノアはむぅっとした顔でフェリシア達を見ていた。




