150. 姿絵コンテスト⑬ マリア
フェリシアは真剣な顔で言った。
「マリア様、すごくかわいい。かわいくて、お仕事もできて、よく気がつく女性なんて・・・うわぁ、マリア様ってモテるよね。引く手数多だよね。」
マリアは両手を顔の前でフルフルと振った。
「ま、まさか。モテたことなんてないですよ。フェリシア様じゃあるまいし・・・。」
「えっ、私?私、ノア以外にモテたことなんてないよ。」
フェリシアはこてんと首を横に傾げた。
「ああ、それは殿下が牽制しているからですね。フェリシア様は人気ありますよ。」
「またまた。お世辞はいいのよ。私はノアにだけモテていればいいんだぁ。あっ・・・私ってば、なんてことを。今のは聞かなかったことにしてね。恥ずかしい・・・。」
フェリシアは赤く染まった頬を両手で覆い隠した。耳も首も赤く染まっている。
マリアはふふっっと小さく笑った。
「フェリシア様ったら、かわいいです。」
「・・・。」
フェリシアはふぅっと小さく息を吐いてから言った。
「マリア様は私と同じ年なのに落ち着いているのね。」
「そうですか?」
「うん、お姉さんみたい。」
「ふふ、弟が二人もいるからですかね。なんだかんだ言って、長女で弟たちの面倒を見ることが多かったからかもしれません。」
「弟さんがいるんだね。でも、分かるよ。お姉さん的包容力を感じるもの。」
「ふふ、ありがとうございます。」
「ねぇ、マリア様って婚活中?恋人や婚約者っているの?」
マリアは困惑した表情になった。
「突然どうしました?確かに私はお相手となる方を見つけたいとは思っていますが・・・。」
「話が飛んでごめんね。弟さんがいる方って、年上の方が好みなのかなぁって、突然疑問に思ったんだ。婚活中ならお相手の希望を聞いても大丈夫かなって思ったの。」
「そういうことですか。そうですね、年上の方の持つ包容力っていうか大人の余裕と言いますか、そういったモノにほだされたいと思っていた時期も確かにありました。年上っていうだけでそういうものを持っているだろう、甘えさせてくれるだろう、と勝手に思い込んでいたんですね。
私にも4歳年上の婚約者がいたんです。彼から見たら私は右も左も分からない子供に見えたのでしょうね。あれもこれもとしてくれたんです。ドレスはこれ、食べるものはこれ、と。しまいには友達まで。君は僕の隣で着飾って、笑っていてくれればいい、というんです。ですからドレスをよく贈ってくださいました。彼の好みの色やデザインで。周りの人たちからは大切にしてもらっている、と言われました。彼に寄りかかってしまえれば、楽だったんでしょうね。彼は、彼が全てを決めるから、その通りにしていればいいよって言っていましたね。
ある時、将来の話になって、学園を卒業した後、文官として王宮で働いてみたいって言ったんです。そうしたら彼は君が働く必要はないよって、嫁を働かせるなんてみっともないからやめてくれって言ったんです。とても不愉快そうに。
彼は結局一度だって私自身を見てはくれなかった。彼は自分の思う通りの女が隣にいることを望んでいたんだと思います。ああ、この人と一生共に歩くことはできないって思ったんです。両親に全てを打ち明け、婚約を解消してもらいました。
そんなことがあったからか、年上の方にはあまりいい印象がないのですよ。
じゃあ年下か、同じ年かってなるんでしょうが、正直言うと、年齢はどうでもいいんです。
私自身を見てくれる方なら、私の話を色眼鏡ではなく聞いてくれる方なら年齢は問いません。そう、私を一人の人間として見て下さる方に、お相手になって欲しいんです。」
マリアは淡々と言い辛いであろう過去も含めて話した。
フェリシアは眉を下げ、頭を下げた。
「ごめんね。嫌な過去を思い出させちゃって。軽い気持ちで聞いてはいけなかったね。ごめんなさい。」
マリアは慌てて両手を振った。
「頭を上げて下さい。私の中で整理のついていることだから話したんです。本来なら人に聞かせるような話じゃないですよね。この手の話題はもっと軽く返すのがいいとは思ったんです。ですが、なんだかフェリシア様には嘘とかつきたくなくて、全部洗いざらい話してしまいました。重い話をしてすみませんでした。」
「ううん、謝らないで。私が考えなしだったの。」
「いいえ、私が勝手に重い話をしてしまっただけです。すみませんでした。」
「ううん、私が・・・。」
「いいえ、私こそ・・・。」
二人はお互いの顔を見合わせ、ふふふっと吹き出した。
「ふふ、お互い様ね。」
「ふふ、ええ、お互い様です。」
「ねぇ、マリア様。これからもっと仲良くしてくれる?」
「ええ、私でよければ喜んで。マリア、と呼んでください。様、なんていりません。」
「嬉しい。では早速、マリア、私のことはフェリシアと同じように呼び捨てで呼んでね。それに丁寧な言葉も不要よ。背中がなんかむず痒いもの。」
「ええっと、フェリシア・・・やだ、緊張しま、するわ。王子の婚約者で公爵令嬢の名前を呼び捨てにするなんて・・・。」
困惑するマリアにフェリシアはにっこり微笑んで言った。
「いいの、いいの。王妃様になるわけじゃないんだし。」
「そう、フェリシアがそう言うのなら。」
マリアははにかんだ笑顔で言った。




