146. 姿絵コンテスト⑨ 協力しなさいね
楽しそうに笑うエミリアとソニアを前に、フェリシアは困惑していた。
しばらく笑い続けたソニアは、弾んだ声で言った。
「フェリシア様、その絵の通りです。唇というより、殿下の頬にフェリシア様の唇は当たっていました。頬にキスをされたのだと思いました。」
「わたくしも見ておりましたが、頬にキスだと思っておりましたの。ですから、その後、殿下がフェリシア様の唇を奪っていたのを見まして、もうっ、ドキドキが止まらなくなりましたの。」
「そうよね。殿下、情熱的!って思ったもの。」
二人は顔を見合わせ、うんうんと頷き合った。
フェリシアは自身の唇をそっと指で押さえ独り言ちた。
「だからノアの唇が触れたとき、ちょっと湿った感じがしたんだ・・・あっ。」
フェリシアの呟きを何気に拾った二人は、ぱっとフェリシアに視線を集中させた。
フェリシアはみるみる間に頬を真っ赤に染めた。
「生々しいです、フェリシア様。」
「大人ですわ、フェリシア様。」
エミリアとソニアは手を握り合わせ、うんうんと頷き合っていた。
フェリシアは顔を俯かせ、消え入りそうな声で言った。
「・・・ごめん、忘れてぇ。恥ずかしい・・・。」
そう言うとフェリシアは両手で顔を覆った。
「羨ましいですわ、フェリシア様。わたくしも素敵な恋人が欲しいですわ。」
「そうです。私も私だけを愛してくれる素敵な恋人が欲しいです。いつでも愛を囁いてくれるような、かっこいい婚約者・・・憧れです。」
ねぇっと二人は顔を見合わせ頷き合っていた。
ムクっと顔をあげたフェリシアは聞いた。
「ねぇ、二人とも婚活中?」
「「ええ。」」
「冬花祭では出会いはなかったの?」
「何人か声をかけて頂きましたの。でもピンっと来る方はおりませんでしたの。」
「私もです。エミリアと一緒にいる方が楽しいかなって思ってしまいました。」
二人は顔を見合わせ微笑みあった。
フェリシアもそんな二人を見てにっこりと微笑んだ。
「本当に仲良しね。ねぇ、それなら、今度うちのクラスが企画しているイベントを手伝ってみない?」
「イベントですか?」
「うん、そう。」
そう言って、フェリシアは姿絵コンテストについて概要を説明した。
「冬花祭もねうちのクラス主催だったの。今度の姿絵コンテストも、うちのクラス発案で中心になって動いていているのも、うちのクラスの子達なの。でも今回は、ちょっと人手が足りないこともあって実行委員会に他のクラス、と言ってもノアと同じクラスのバルトとリリアとサリナが参加してくれているの。もう少し人手が欲しいとこで、募集中なのね。
で、ここからが本題。うちのクラスから参加している男子生徒の多くが婚活中で、彼女が欲しいけど出会いがないってぼやいているの。冬花祭でも実行委員会に参加してくれた方たちで、皆さん実直でよく働くいい方ばかりよ。家族関係も良好で、ご両親も良い方たち。どの方の家も領地経営は順調で、他に事業を持っていらっしゃるから、生活には困っていないというより十分な収入だ潤っていらっしゃる。深くは調べていないけど、簡単に調べた限り優良物件な方たちだと思うの。もし婚活中なら、実行委員のお手伝いを通じて、交流を持ってみたらどうかな?」
二人はぽかんと口を開けた。
エミリアは首を傾げてフェリシアに聞いた。
「あ、あのぅ、フェリシア様。婚活中の実行委員の方たちの身上調査をされたのですか?」
フェリシアは真面目な顔で答えた。
「勿論よ。リリアとサリナも婚活中なのよ。彼女たちと友達になった以上、彼女たちの婚活にも協力をしたいの。でも、もし一人でも変なのがいたら二人が危険じゃない。大事な友達に変な虫が付いたら嫌だもの。だから安心して参加できるか見極めようと思って調べたの。で、皆さん、どなたも良さそうなので実行委員会に誘ったの。エミリアとソニアもどうかな?無理にとは言わないけど、実際交流してみて、いい人がいたら頑張るっていう方がいいんじゃないかな?」
エミリアとソニアが驚いたような顔で顔を見合わせた。
フェリシアはそんな二人を見て慌てて言った。
「ああ、無理にとは言わないから。嫌なら断っていいからね。」
エミリア達は首をぶんぶんと横に振った。
「フェリシア様ってすごいですね!」
「ええ、ええ、すごいですわ!」
「ええっと、何がかな?」
「そんな出会うかもしれない殿方の身辺調査を事前にして、安全だと分かった上でリリア様とサリナ様を誘われたのですよね。そのうえ、わたくしたちにまで・・・。」
「普通はそこまで面倒を見ないですよ。」
「そう?」
「そうですわ。大好きです、フェリシア様。」
「私もです。大好きです。」
「ふふ、告白されちゃった。私も二人が好き。これからも仲良くしてね。」
「「もちろんです!!」」
三人は微笑みあった。
「それで、お手伝いに参加する?」
「「はい。」」
「嬉しい!。さっそく明日からよろしくね。リーダーのクララには私から伝えておくから。あっ、そうそう、ソニアは姿絵コンテストに応募してね。」
「ええ!私がですか?」
「うん。必ずよ。これだけ絵が上手いのだもの、どなたがモチーフでもきっと素敵に描けるはずよ。だから必ず応募してね。」
「・・・フェリシア様にそこまで仰っていただけるのでしたら・・・頑張ります。」
「うん、素敵な一枚を期待しているわ。」
「ううっ、プレッシャーを感じます。」
「ふふ、黙って小冊子を作っていた罰よ。」
「それを言われると・・・頑張ります。」
「うん、頑張って。」
「ソニアならできますわ。わたくしが補償いたしますわ!」
エミリアも両手をぎゅっと握ってソニアを応援したのだった。




