145. 姿絵コンテスト⑧ 作者はやっぱり・・・
「お前ら、相変わらずだな。ここ教室だぞ。」
エリザベスと共にやってきたエリックは呆れたような目でフェリシア達を見た。
「エリック、もっと言ってやって。恥ずかしいから降ろしてって言ってるのに、降ろしてくれないの。」
フェリシアがそう主張すると、エリックはやれやれと言った様子でヴィルノアを見て言った。
「ヴィル、兄上にほどほどにと言われただろう。」
ヴィルノアはこくんと頷くとフェリシアに回した腕にぎゅっと力を込めた。
「いつも通りです。クララ嬢にも許可を取りました。なんだかんだ言ってもシアも受け入れています。兄上、僕の幸せを取り上げないでください。」
「フェリシアも甘やかしすぎだ。」
「甘やかしてなんかないよ。」
「そんなことしててか?」
エリックは呆れてフェリシアを見た。
フェリシアは無意識のうちに、すり寄ってきたヴィルノアの頭を撫でていた。
「ああ、思わず撫でてた・・・。」
「兄上、余計なこと言わないでください。シアが頭を撫でるの止めちゃったじゃないですか。」
「ヴィル・・・まぁ、いいか。今日は俺も手伝えるから、何をすればいい?」
「今日はね、パーティの入場券とコンテストの投票券のデザインを考えるんだよ。一緒に考えよう。」
エリックが顎に手を当てて暫く黙った後、言った。
「フェリシアが描くのか?」
「ううん。ノアが描くの。」
エリックはあからさまにほっとした顔をしてエリザベスを見た。
「それなら大丈夫だな。」
エリザベスも楽しそうに微笑んで言った。
「ええ、そうですわね。」
「どういう意味かな?」
フェリシアは頬を膨らます。
ヴィルノアは楽しそうにフェリシアの頬を撫でた。
「はは、シア、かわいい。大好き。」
「うん、知ってるけどさ。みんな、酷いよ。」
フェリシアはプイっと顔を背けたのだった。
数日後
「これはどういうことかな。説明してもらえる?」
フェリシアは足を組み、指でトントンとテーブルの上に置かれた小冊子を叩いた。
放課後の食堂。
人もまばらな中、フェリシアはエミリアとソニアの二人とプチお茶会をしていた。
「なぜフェリシア様がこれを・・・。」
エミリアは焦った様子でフェリシアを見た。
「最近知り合った子達にもらったの。で、事実ですかって聞かれたの。」
フェリシアが素直に答えると、エミリアとソニアは深々と頭を下げた。
「ごめんなさい、フェリシア様。フェリシア様とヴィルノア殿下のラヴっぷりが素敵で、文章に、そう物語風にまとめてみたら、ソニアがまた素敵な絵を描いてくださって、本にしちゃおうって二人で盛り上がりまして、そのままの勢いで作っちゃいましたの。」
「お二人が素敵カップル過ぎるんです!!」
褒めてるのか、弁解をしてるのか、反省をしてるのか、フェリシアを追い詰めてるのか分からないことを二人は言った。
「もう言ってよね。見せられて、びっくりしたんだから。」
フェリシアが不満を漏らすと、二人はビクンと肩を揺らした。
「反対されると思ったんですの。」
「怒られるかと思ったんです。」
急にしゅんとなった二人に、フェリシアはふふっと微笑んだ。
「怒ってなんかないよ。でも友達なんだから、言ってほしかったんだよ。私だけ除け者は寂しいな。」
「ごめんなさい!これからはちゃんとお話ししますわ!」
「フェリシア様を除け者にしたつもりはないんです。ごめんなさい。」
「うん。謝罪を受け取ります。ねぇ、エミリアが一人で文章を書いてるの?」
「はい。文章はわたくしです。ソニアがさし絵を描いていますの。」
「二人ともすごいのね!」
フェリシアがにっこり笑って言うと、エミリアもソニアも顔を上げ嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとうございます。ソニアがすごく素敵な絵を描いてくださりますので、文章が引き立つんですの。フェリシア様とヴィルノア殿下の甘い雰囲気がよく伝わると思いませんかしら。特にこの絵!」
そう言ってエミリアは小冊子をぱらぱらと捲って、一枚の絵を指した。
「あっ、これ、私も気になっていたの。あの場に居たの、ソニア?」
その挿絵は、定期考査の結果発表の場で、フェリシアがヴィルノアの上着の襟を両手で掴み、ご褒美のキスをしているところを描いたものだった。
「はい。ばっちりエミリアと見ていました。瞬きすらもったいなくて目を必死に開けて見てたんですよ。バチバチに見ていました。」
「声かけてくれればよかったのに・・・。」
「無理です。お二人の世界に声を掛けるなんて絶対無理です。」
「そうです。無理無理ですわ。あそこで声を掛けたエリック殿下は勇者様ですわ。」
二人とも首を横にぶんぶんと振った。
「ええー、そんなものかなぁ。」
二人はぶんぶんと首を縦に振った。
フェリシアはふふっと苦笑いを浮かべた。
「ところでね、気になっていたのはこの絵を見る限り、私はノアの唇にキスをしていなかったのかな?」
挿し絵にはヴィルノアの口の端から頬にかけてフェリシアの唇が当たっているように描かれていた。
エミリアとソニアはキョトンとした顔でフェリシアを見た。
そして、ソニアが恐る恐る口を開いた。
「あの、フェリシア様はヴィルノア殿下の唇に唇を重ねたのですか?」
「そのつもりだったんだけど、実際のところ恥ずかしくって、目をぎゅってつむっていたから、正確にどこに当たっていたか分からないの。柔らかい所っていうのは分かっているのだけど・・・。」
フェリシアは所在なげに指を遊ばせながら言い、頬が熱を持っていくのを感じていた。
エミリアとソニアはお互い顔を見合わせ、キョトンとしたお互いの顔を見て笑い出した。
「ふふっ、フェリシア様かわいいですわぁ。」
「本当に、かわいい。」
暫くの間、ぽかんとするフェリシアをよそに、二人は笑い続けたのだった。




