144. 姿絵コンテスト⑦ 巻き込みましょう
ヴィルノアはフェリシアとクララの会話を物珍しそうに聞いていた。
「へぇ、女性の視点から見るとそうなるんだね。面白いね。僕には分らないけど、マリア嬢はメンタルの強い人なんだね。バルトから聞く限りでは、よく気が付く守ってあげたい女性、なんだけどね。守ってあげたいって言うから強い女性って発想につながっていなかったなぁ。」
「ふふっ、フェリシア様しか見ていないから分からないだけですよ、殿下。」
クララが揶揄うように言うと、ヴィルノアはこくんと頷いた。
「そうだね。シアしか興味ないのは確かだよ。」
「ふふっ、正直でいいですね。さて、そうですね。バルト様の意向ははっきりしているので、あとはマリア様がどう思っているかですね。少し探ってみましょうか。もしかしたらマリア様を巻き込むって言うのもありではないですかね。マリア様がバルト様にその気があれば、きっと協力してくださいますよ。」
「あっ、私もそれ思った。マリア様、協力してくれると思うよ。」
フェリシアがクララに同意すると、ヴィルノアは口の端をあげた。
「たまにはバルトの焦ったところを見て見たいなぁ。」
クララはにたぁと笑って言った。
「ふふっ、では探ってみましょう。彼女を巻き込めそうなら、改めて作戦会議をいたしましょう、殿下。」
「そうだね、期待していますよ、クララ嬢。」
「お任せください。」
「うわぁ、二人とも黒いよ。真っ黒だよ。」
フェリシアが二人を見て言うと、ヴィルノアは優しく微笑んでフェリシアの頬を撫でた。
「シアはきれいだから安心して。」
「・・・きれいって・・・楽しそうだから私もノアたちに交じりたいっ。」
「うん。一緒に何か楽しそうなこと考えよう。」
「うん!」
フェリシアがにっこり笑った。
「シア、かわいい。大好き。」
「うん、知ってる。」
「ええ、私も知っています。私がいるのを忘れないでくださいね。」
クララが楽しそうに笑って言うと、フェリシアとヴィルノアは顔を見合わせてやはり楽しそうに笑った。
「ノアも姿絵コンテストに応募するの?」
フェリシアは首を傾げた。
実行委員の仕事をするべく、フェリシアのクラスにヴィルノアは来ていた。そして教室の隅の席でいつものように二人で座っていた。
「うん。クララ嬢に出すように頼まれた。シアの絵を出すよ。」
「私の?どんなの出すの?」
「そうだなぁ、前回花冠を付けたシアが好評だったらしいから、また花冠を付けたシアの違う角度で描いたのにしようかな。横顔とかね。それと去年の学祭で猫耳付けたのがかわいいかったから、それかな。」
「花冠付けたのは夏に領地に行った時のだよね。猫耳付けたときって描いてもらったっけ?」
「シアの前では描いていないけど、印象に残る出来事があったときには描くようにしているんだ。絵日記みたいなものだよ。猫耳付けたシアがとてもかわいかったよ。描くよね。」
「すごいね、ノア。実物を見て描くのだって難しいのに、記憶で描くなんて。私にはできないよ。実物見て描いても上手くいかないんだよ。」
「シアの絵はユニークだから、いいんだよ。」
「・・・物は言いようだよね。気遣ってくれてありがとう。」
「シアは応募しないの?」
「うん。私には無理。でもね、絵が描ける子に一人心当たりがあるんだ。」
「誰?僕も知っている子?」
「うん。多分というかノアのクラスの子。ノアが認識しているか分からないけど。ノアって興味ないと見もしないし、顔も覚えないよね。それはいいとして、彼女、私に言われたら断れないはずだから、応募させるよ。」
「断れないってどういうこと?」
ヴィルノアはフェリシアの言い方に疑問を抱いて首を傾げた。
「ふふふ、ねぇ、ノアはこれ知っている?」
フェリシアは鞄から数冊の小冊子を出した。
それを見たヴィルノアは首を横に振った。
「これね。学園の一年生の特に女子の間で出回っている本なのね。その内容がね・・・まぁ、見てみて。」
ヴィルノアはパラパラと冊子を捲った。そして所々にある挿絵がヴィルノアの目に留まった。
「・・・これって、もしかして・・・。」
「うん。分かるよね。どうも私とノアのことが書かれてるの。物語の中で流石に名前は変えてあるけど、エピソードとか容姿とか、私達としか思えないのよ。ほぼ実録。」
「作者は誰?」
「一応なぞって事になっているらしくて、ペンネームになっているの。」
「シアには心当たりがあるんだ?」
「うん。多分、ノアと同じクラスのエミリアかソニアだと思う。もしくは両方。彼女たちとても仲がいいから。」
「なぜ、そう思うの?」
「これ、幼い頃のエピソードもあるの。シルビアやエリザベスは知っているけど彼女たちがこんなの作るとは思えないのね。で、他に知るのはエミリアとソニアだけなの。二人とお茶会した時に聞かれて話したことがあったの。だからね。」
「なるほどね。これ借りてもいい?読んでみたい。」
「うん。エリザベスやシルビアも読んだんだけど、良く書けてるって感心してたよ。で、この挿絵って結構上手だと思わない?」
「そうだね。僕らだって分かるよ。」
「でしょう。もう、私に断りもなくこんなの流通させてるんだから、私のお願いくらい聞いてくれるよね。何か描かせて応募させるよ。応募者が少ないとコンテストが盛り上がらないものね。」
フェリシアはちょっと頬を膨らませた。ヴィルノアはくすっと笑って、フェリシアの頬を撫でた。
「そんなに内容が良くなかったの?」
「ううん。ほぼ事実。確かに物語調だから少しの脚色はあって、きれいって言うのキラキラって言うのが正しいかな、そういう風に書かれていてびっくりするところもあったけど、全部事実だったよ。でもね、一言くらい言ってくれたっていいよね。私とノアとのことなんだし。」
「そうだね。シアのことだからよっぽどのことがない限り止めたりしないよね。その子達と仲がいいんでしょう。」
「うん。仲良し。だからこそ、話してほしかったんだよ。」
「そうだね。」
「と、いうわけで強制参加させるよ。イベントも手伝わせようかな。」
「はは、優しい罰だね。」
「優しい?すごく働かせるつもりだから、優しくなんてないよ。」
「はは、そうなの?僕は充分優しいと思うよ。」
「・・・まぁ、いいや。今度、彼女たちに会うから交渉してみるんだぁ。」
「んー、頑張って。」
「うん。」
フェリシアは両手をぎゅっと握ってフンっと息まいた。
ヴィルノアはフェリシアの頭をそっと撫でた。




