143. 姿絵コンテスト⑥ バルト
「お邪魔します。ヴィルノア殿下、フェリシア様。」
「クララ、今度のノアが描いたデザイン見てくれた?」
「見ました。あれ中々おしゃれでいいですね。あのチャームもいいですね。なんか使えそうです。まずは自分の瞳の色を付けておいて、途中で交換する何らかのイベントを起こす。盛り上がりそうです。あれで発注してみようと思います。チャームは殿下にご協力いただくということでよろしいですか?」
ヴィルノアはこくんと頷いた。
「そこそこ価格も抑えてあげられるよ。」
「ふふっ、期待しています。あぁ、あと一年生のご令嬢をご紹介いただきありがとうございます。よく働いてくれて助かっています。いい子達ですね。」
「そうなの、いい子達なの。」
フェリシアはどや顔で答えた。
「かわいいでしょう。」
「はい。かわいい子達ですね。男性陣が良く働いてくれて助かっています。ふふ、どなたが彼女たちをゲットしますでしょうか。楽しみです。」
クララは不敵な笑みを浮かべた。
「あれ?二人とも人気者なのかな。」
フェリシアが首を傾げた。
「ふふ、狙われていますね。彼女たち性格も良くて、よく働いて、さらに良く笑うのです。お顔もかわいい。もう狙ってくれって言っているようなものですよ。ふふ、婚活男子が良く働いてくれています。
そう、今回のブローチもなんかできそうじゃないですか。その見本を見せるのに彼女たちいけませんかね?前回殿下たちと私たちがやりましたよね。あれ、結構盛り上がった気がするんですよ。まぁ、もう少し見ないと、どう纏まるか、まだまだ確定しませんよね。」
「そうだね。上手くまとまればいいけど、どうだろうね。それより、僕はバルトを巻き込んだらいいと思うよ。」
「バルト様ですか?ええっと、お相手はどなたでしょうか?」
「バルトって婚約者いないよね。」
クララもフェリシアも首を傾げた。
「あれ、分からない?結構、露骨に態度に出ていると思うけど。ほらっ。」
ヴィルノアは視線をバルトに向けた。フェリシアもクララもその視線を追った。
「えっ、あれって・・・。」
「あらあら、そうでしたか。」
ヴィルノアは頷いて、フェリシアの頬を撫でながら言った。
「僕がシアに溺れているのを見て、年上の女性がいいと思ったらしいよ。年上の女性の包容力がいいって。今回のイベントの実行委員に誘ってもらえて喜んでた。年上の女性と出会えるチャンスだって。その結果があれね。」
バルトはフェリシアのクラス在籍の女性と隣り合って座って作業をしていた。
女子生徒の名はマリア・ミレー。子爵家の長女で、両サイドに緩やかに編んだ三つ編みをたらし、黒縁の眼鏡を掛けている。バルトが何かを話しかけると、穏やかな微笑みを浮かべ、一言二言返していた。
「マリア様?」
「うん。そう。彼女の笑顔に癒されるんだって。」
「「えぇー!!」」
フェリシアとクララは驚きを隠せなかった。
「マリア様って、すごく穏やかな大人しめの方だよね。どちらかといえば男性が苦手そうに見えたけど・・・今、見ている限りだと、そうでもないのかな?」
フェリシアが首を傾げる。ヴィルノアは首を横に振る。
「最初は話しかけてもびくってされたり、無言になっちゃったりしてたらしいよ。」
「そうですよね。人見知りなのかなって思う時もありましたから。でも、毎回イベントごとには積極的にお手伝いしてくださっていますよね。必ず、実行委員会に初回から参加してくださっていますし、よく働いてくださってますよね。」
クララもマリアの印象を述べた。
「バルトがこの実行委員会の初会合に参加した時に、初めてだから様子見で大人しくしていたらしいんだ。時々前回のイベントの話題とか挟まって分からないでいると、隣にいた彼女が気が付いてくれて説明をしてくれたらしいよ。ほかにも、ほら冬花祭の姿絵を注文者に渡しに行ったでしょう。その時、袋の端をさり気なく整えたり、中身の確認をしたりしていたんだって。それに一緒に販売したカードケースが少なくなってくると彼女がさり気なく補充していたんだって。他にも何か足りないなぁと思っていると必ず彼女の方が先に気付いて補充しているんだって。それに気付いてバルトがいつもありがとうって言ったら、私にできることをしているだけよ、って言ったんだって。普通できないからってバルトは言っていたよ。」
ヴィルノアが無表情で淡々と話しているのを見て、フェリシアは首を傾げた。
「珍しい。随分詳しいのね、ノア。」
ヴィルノアははぁっと小さく息を吐いて言った。
「毎日、毎日、耳にタコができるくらい繰り返し聞かされているんだ。嫌でも覚えるよ。」
「へぇ、バルトってそういう感じには見えないんだけどね。」
「僕もちょっと驚いている。あいつ、もっとクールな奴だと思っていたよ。」
「ふふっ、殿下、どう使いましょうか?」
クララが黒い笑みを浮かべた。
「うーん。マリア嬢ってメンタル強いかな?僕は彼女のこと知らないから、巻き込んで大丈夫な女の子なのか分からないんだよね。ほら、クララ嬢なら絶対大丈夫って思ったからベンジャミン殿に話を持っていくことができたんだけど、彼女はどうだろう。シアも、僕にがっかりしない自信はあったし。下手なことしてバルトから逃げちゃったりしたら、僕はバルトに一生恨まれそうだよ。バルトがかなり夢中だからね。」
「ふふ、お褒めに預かり光栄ですわ。マリア様の浮いた話は聞いたことがありませんね。バルト様はどうなんでしょう。お顔は整った方ですよね。女性に人気ありそうです。」
「そう言えば、バルトの女性関係の話聞いたことないね。バルトってモテるの?」
「結構告白とかされているよ。僕もそれに付き合ったことあるけどいつも秒殺だね。」
「秒殺って・・・。」
「君に興味ないから付き合えないって冷たい目で言って、女性がドン引いて終わり。」
「うわぁ、容赦ないね。」
「あいつ普段物腰の柔らかい紳士的な態度で誰とでも接しているから、それとのギャップで大体の女性は逃げていくんだ。」
「だろうね。顔は穏やかな二枚目なのにね。」
「・・・シアはああいうのがいいの?」
「ううん。こういうのがいいの。」
フェリシアは両手でヴィルノアの頬を挟んだ。
ヴィルノアは満足そうに目を細めた。
フェリシアはマリアの方を見て言った。
「でもさぁ、マリア様もまんざらでもなさそうに見えるよね。」
「あら、フェリシア様もそう思います?私にもそう見えますね。」
クララもマリアを見て言った。
「それに、マリア様って大人しく見えるだけで本当のところは芯の強い方ではないですかね。まぁ、男性が苦手って言うのはありそうですけど。きちんと自分を持っているとでも言いましょうか。いつも企画には積極的に協力してくださいますし、口数は少ないですが、要所要所ではきちんと発言されていますよね。」
「うん。そうだね。」
フェリシアとクララは顔を見合わせ頷き合った。




