137. 返ってきた手紙
「シア、僕の手紙が返ってきたけど、シアのところにも返ってきた?」
昼休み、食堂に来たヴィルノアはフェリシアに尋ねた。
「うん。昨日兄様が持って帰って来てくれたの。グシャッとはなっていたけど、開封されてはいなかったよ。」
フェリシアはにっこり笑って答えた。
「僕のは全部開いてた。」
ヴィルノアは忌々しそうに言った。
「シアへの手紙を勝手に読むなんてどうかしてるよ。」
「うん、私もそう思うよ。でね、ちょっと言い辛いんだけど、ノアが書いてくれたものだからさ、開いててもいいから手紙頂戴って言ったらくれるかな?」
「あげない。シアの頼みでもダメ。あんな女に触れられたものシアにあげたくない。」
「あんな女って・・・。やっぱりだめだよね。」
「欲しいの?」
「うん。だってノアからの手紙だもの。」
フェリシアはうっすら頬を赤らめた。ヴィルノアは嬉しそうに目を細めた。
「あいつを後々思い起こさせるから、あの手紙は処分するよ。代わりに昨日新しく手紙を書いたんだ。受け取ってくれる?」
ヴィルノアがポケットから一通の手紙を出すと、フェリシアはぱぁっと嬉しそうに笑った。
「うん。ありがとう!」
フェリシアは手紙を受け取るとふふふと楽しそうに笑った。
「私もね、同じことを考えていたんだ。昨日、返された手紙を見てどうしようか考えたときにね、ノアにはあげたくないから捨てようって。なんかね、あの王女が一度でも手にしたって思うだけでくすんで見えて、こんなのノアにあげられないって思ったの。でもね、ノアには手紙をあげたくて新たに昨日書いたんだ。だから、はい。受け取ってください。」
フェリシアもポケットから一通の手紙を出した。
ヴィルノアはにこにこしながら受け取った。
「ありがとう。僕も返却された手紙をもらえないか聞こうと思っていたんだ。でもシアが嫌がるなら無理強いはできないとも思っていた。僕もあの女の影がちらつく手紙をシアにあげたくないんだ。シアも同じように考えていたっておかしくないよね。だから僕の宝物になるはずのシアからの手紙を奪ったあの女は許さないよ。」
「まぁ、まぁ、新しく書いたんだし、もうあの事は忘れようよ。嫌な気持ちでノアに手紙を読んで欲しくないな。・・・ノアに、伝えたいこと、書いたんだよ。」
フェリシアは頬を赤らめて言った。
「うん、忘れた。この手紙があるから返却された手紙はもう忘れる。ねぇ、今読んでもいい?」
「だめ。恥ずかしいから。」
「読みたい。」
「だめ。帰ってからにして。お願い!」
「・・・わかった。」
「ありがとう。」
「僕はシアのお願いに弱いんだ。シアが大好きだからね。」
「ふふ、知ってる。ノア、ありがとう。」
二人は顔を見合わせて微笑みあった。
ヴィルノアはウキウキしながら自室に戻ると、早速フェリシアからの手紙を読んだ。
ノアへ
ノアがいつも私のことを想って行動してくれていることに感謝しています。
私の耳を塞いでくれてありがとう。
怒ってくれてありがとう。
ブレスレットを作ってくれてありがとう。大事にするね。
手を握ってくれてありがとう。
大好きって言ってくれてありがとう。
本当に大切にしてくれてありがとう。
私もノアがとても大切です。
私もノアを守りたいんでよ。年上だからじゃなくて、大切だから。知ってた?
だからね、何かあったらすぐ頼ってね。
私もノアが大好きだよ。これからも隣に居させてね。
あなたのフェリシアより
P.S. この手紙を書くのに何回も書き直したんだ。心の中を言葉にするのは難しいね。伝わるといいな、私の想い。伝わっていますか?
ヴィルノアは読み終わると同時に自身の頬が熱を持っていることに気付いた。
今までフェリシアからもらった手紙の中で、一番ラブレターらしいラブレターであった。心の奥底から歓喜の想いが溢れ出てきた。
何度も何度もヴィルノアは短いけれど、心に響く手紙を読み返したのだった。
フェリシアは自宅に戻ると急いで自室に戻り、ヴィルノアからの手紙を読んだ。
大好きなシアへ
シアが僕のシアへの想いを信じてくれたことがすごく嬉しい。
シア、大好きです。
初めて会った時からずっとシアが好き。
この気持ちは永遠に変わらないよ。
それに僕の人生最大の幸運、シアの隣に立つ権利は絶対手放さないからね。
僕はシアの笑顔が好きなんだ。シアの幸せそうな笑顔を見る為なら、どんなことも頑張るよ。
だから、いつも隣で笑っていて。
でもこれだけは言っておかなければなりません。
口付けの後のあの顔は僕以外誰にも見せちゃだめだよ。
あと、僕の上着を着ている姿も、ね。
見た男たちがみんなシアの魅力に抗えなくて、みんなシアに恋しちゃうからね。
絶対見せるのは僕だけにしてね。
シアがかわいくて魅力的なのでとても心配です。
シアを疑っているわけではないからね。シアに好きと言ってもらった奇跡を疑ったりはしないよ。
ただ他の男が寄ってくるのが嫌なだけ。狭量な僕を許してね。
シア、大好きです。
シアのヴィルノアより
読み終えて顔を真っ赤にしたフェリシアは、ふふっと笑って、独り言ちた。
「いやだ、シアのヴィルノアよりって、私も同じようにしめちゃった。似てきたのかなぁ。それはそれで嬉しいかも。」
何度も読み返して、その夜は手紙を抱いてフェリシアは寝たのだった。




