134. もう一つのお茶会② 提案
突然やってきたヴィルノアを三人は快く迎え入れた。
控えていた侍女たちがその様子を見て椅子をもう一つ用意しようとしたが、ヴィルノアは片手を上げ、それを断った。
「お掛けになりませんの?」
エリザベスが頬に手を当て首を傾げると、ヴィルノアは微笑んだ。
「もちろん座ります。」
そう言ってフェリシアを抱き上げ、フェリシアが座っていた椅子に座り、フェリシアは自身の太腿の上に座らせた。お膝抱っこだ。
「やだ、恥ずかしいから降ろして!」
「だめ。」
「椅子、持ってきてもらおうよ。」
「いらないよ。」
「恥ずかしいんだってば!」
「大丈夫。僕は恥ずかしくない。」
二人のやり取りを見てエリザベスとアゼリアは顔を見合わせ、ふふっと笑った。
「申し訳ありません。歓談中にお邪魔してしまって。皆さんにお話したいことがあってきました。よろしいでしょうか?」
ぎゅっとフェリシアの腰を抱き締めながら、ヴィルノアは王子然と言った顔で話し始めた。
膝から降りるのを諦めたフェリシアと二人の王女は頷いた。
「ありがとうございます。僕は今ある事業の立ち上げに関わっています。」
そう言って宝石加工の際に出るくず石の利用について説明をした。
「シアがつけているブレスレットはそれらの石を利用して僕が作ったものです。シア見せてあげて。」
「うん。とってもかわいいよ。」
フェリシアが左手首を前に出してブレスレットを見せると、二人の王女はキラキラした目で見た。
「かわいい!」
「フェリシアに似合っていますわ。」
「はい。シアをイメージして僕がデザインしました。このようにくず石、シアが欠片と言っていたので研磨したくず石を欠片と呼んでいます、欠片でも充分かわいらしいアクセサリーが作れるのです。この事業では欠片を使ったアクセサリーを専属のデザイナーがデザインして、それを職人が作り、販売するのがメインとなります。ですが、それだけでは僕的にはつまらないなぁと。そこでシアやエリザベス王女、アゼリア王女の三人でデザインしてみませんか?皆さんがデザインしたもので一つブランドを作って、売りだしたら面白いかなぁって思うんですよ。姫が三人ですから『三姫』とかブランド名を付けて、三人の構想したものを販売する。姫達の企画だって前面に出してもいいですし、面白そうじゃありませんか?」
「やる!やってみたい!」
フェリシアはぱあっと明るい顔をして、元気に言った。
二人の王女もにっこり微笑んで、こくんと頷いた。
「でもよろしいのですか?わたくしたちは素人ですのよ。」
エリザベスは頬に手を当て首を傾げた。
「ええ。それがいいかなぁと。プロじゃない発想や何かがあるかなぁと、思うのですよ。ああ、あまり気負わなくていいですよ。あくまで僕の思い付きの、おまけプロジェクトです。気楽に自分の欲しいものを考えて頂ければいいのです。」
ヴィルノアはそう言うと従者に目配せをして、様々な宝石の欠片のサンプルをテーブルの上に出させた。
「これらはこの国で産出された宝石を研磨した際に出るくず石を軽く研磨したものです。欠片です。きれいでしょう。」
三人は思い思いに手に取って、光に透かしたり、色や大きさを見たりした。
「欠片と言ってもきれいですわ。立派に宝石ですわね。」
「多少純度とか落ちますけど、キラキラときれいですね。くず石な分、気軽に使えそうですね。」
「もともと廃棄されるものを利用しています。かなり今流通している宝石よりは手にしやすい価格に抑えられていいかなと思うんですよ。別にアクセサリーにこだわらなくてもいいですよ。欠片をどこかしらに使うこと、というのが唯一の条件です。自由な発想でデザインを考えてみてください。」
三人の女性は宝石に負けないキラキラした目で欠片を見ていた。
「早ければこのプロジェクトは夏前には始動する予定です。できれば皆さんのブランドも最初から出せたらと思うので、試作を作る期間を考えると一ヶ月から二ヶ月くらいでデザインの構想をまとめて頂けると助かります。」
「うん、分かった。頑張るね。」
フェリシアがにっこり笑って言うと、二人の王女もこくりと頷いた。
ヴィルノアは満足そうに微笑んで、フェリシアの頬を撫でた。
「シア、楽しい?」
「うん、とっても。ありがとうね、ノア。」
そう言うとフェリシアは腕を大きく広げてヴィルノアの頭を抱き締め、自身の頬をヴィルノアの頭に摺り寄せた。
「うわぁぁぁぁ!」
ヴィルノアはフェリシアの胸に顔を押し当てられ、思わず狼狽えたような声を出していた。
フェリシアはそれを気にも留めず、ギュっとヴィルノアの頭を抱き締め、頬を摺り寄せて言った。
「ノア、いつもありがとう。」
「・・・うん。」
アゼリアは面白そうにキラキラ目を輝かせて二人を見た。
エリザベスは頬に手を当て方っと小さく息を吐き出したのち、コホンとわざとらしく咳払いをしてから言った。
「フェリシア、危機管理という言葉を知っていますか?」
フェリシアは顔を上げキョトンとした顔で言った。
「危機管理?」
「そうです危機管理です。ヴィルノア殿下は男性なのですよ。二歳年下とはいえ、15歳の立派な殿方ですのよ。分かっていますか?そんな風に女性の胸に顔を押し当てていては、いつ理性のタガが外れても
おかしくないのですよ。もしもの時は男性の力にはかないませんのよ。分かりますか?」
「ノアは私に危害を加えることはないと思うよ。」
「そうですわね。危害は加えないでしょう。恋人同士では危害ではありませんからね。それは一種の愛情表現、スキンシップとも言えますわ。分かっていないようなので、もっとストレートに言いますね。ヴィルノア殿下の理性が飛んでしまって、押し倒されたら何をされても力じゃかなわないのですよ、と言っているのです。これだけ言えば分かりますね。」
エリザベスは頬を少しだけ赤く染めて、真剣な顔でフェリシアに迫った。




