131. お茶会① 謝罪
放課後の学園の庭園にある東屋にフェリシア、ヴィルノア、リリア、サリナの四人が集まっていた。
今日はこの四人でお茶会をする予定だからだ。これはヴィルノアからの提案であった。 フェリシアとヴィルノアはソルティア王女の起こした事件に巻き込まれたリリアとサリナをお茶会に招待し、話をする機会を設けることにしたのだ。
「「先日は不愉快な思いをさせてしまい申し訳ありませんでした。」」
リリアとサリナはフェリシアとヴィルノアに会うとすぐにそう言って頭を下げた。
頭を下げる二人に、フェリシアはふるふると手を振って、言った。
「あなたたちも被害者じゃない。謝罪は受け取るから、ねっ、頭を上げて頂戴。」
二人は頭を上げ、フェリシアの勧めに従って席に着いた。
「ヴィルノア殿下、今回はフェリシア様に直接謝罪の機会を与えて頂きありがとうございます。」
「気にしないで。シアが君らのこと気にしていたし、何より君らがこのようなことに巻き込まれた原因の一端は僕にあった。僕がしっかり確認していれば、直接シアに手紙を渡していれば、君らはこんな事件に巻き込まれることはなかったはずだ。申し訳ないことをした。」
リリアとサリナは首を横に振った。
「そんなことはありません。殿下は何も悪くはありません。私の姉についた嘘がそもそもの原因です。あんなにフェリシア様に酷いことを言ったのに、殿下のお手紙を盗むのを手伝ってしまったのに、軽い謹慎だけで、こうして学園に戻ることができました。寛大な処罰に私たちはとても感謝しております。」
「私も感謝しています。リリアとこうして学園に通えるだけで充分です。」
「それに姉も以前と変わりなく殿下付きの侍女としてお仕えできています。家にも何のお咎めもなく、感謝しております。」
「そうです。ありがとうございます。」
二人は揃って頭を下げた。
ヴィルノアは無表情のまま言った。
「僕もいけなかったんだ。それに一番の悪はあの王女だ。君らは被害者だよ。礼は不要だ。」
リリアとサリナは涙目になって言った。
「「ありがとうございます。」」
ヴィルノアはフェリシアをちらっと見た。
「君らのことはフェリシアがとても気にしていたんだ。」
フェリシアはヴィルノアにこくんと頷くと、真っ直ぐリリアたちを見た。
「私、とてもあなた達にきついことを言ってしまって・・・あなた方の事情も知ろうともしないで酷い対応でした。ごめんなさい。」
フェリシアはそう言うと頭を下げた。
リリアとサリナは焦って、言った。
「頭を上げて下さい。悪いのは私達です。」
「そうです。フェリシア様は何も悪くありません。フェリシア様は当たり前のことを仰っただけです。」
「そんな事はないわ。私もその時ちょっとイラっとするようなことがあってきつい物言いをしてしまったの。少し考えればあの王女とあなた達との関係は分かったと思うの。私も冷静さを欠いていたわ。ごめんなさい。辛かったよね。」
リリアとサリナは首を横に振り、涙を流し始めた。
「もったいない言葉です。私たちが悪かったのです。私たちが短慮だったばかりに・・・フェリシア様にも殿下にもご迷惑を・・・」
「そうです。お二人とも優し過ぎます。」
フェリシアは二人にハンカチを差し出した。
二人はしばらくの間、静かに涙を流し続けた。二人が落ち着いてきたのを見て、フェリシアは言った。
「もうあの事は忘れて、今日はお茶会を楽しみましょう。良かったら私とお友達になってくれると嬉しいな。」
「是非!!」
「フェリシア様とお友達になりたいです!」
二人はぱぁと明るい顔になった。
フェリシアもにこっと笑った。
「良かったぁ。ノア、友達になれたよ。」
ヴィルノアは優しい目でフェリシアを見て、フェリシアの頭を撫でた。
「うん。良かったね。」
「ノア、ありがとう。」
「うん。このあとは女の子だけでお茶会を楽しむといいよ。終わる頃、迎えに来るね。」
「ノアも一緒じゃないの?」
「それでもいいんだけど、女の子だけの方がお茶会は楽しいんじゃない。僕は邪魔をしたくはないからね。」
「分かった。あとでね。」
「うん。楽しんでね。」
ヴィルノアは立ち上がるとフェリシアの頬に口付けをした。
そしてスンと表情を無にしたヴィルノアは、リリアとサリナに言った。
「僕はここで失礼するよ。シアを頼むね。」
二人がこくんと頷いたのを確認するとヴィルノアは去って行った。
リリアはほうっとうっとり小さく息を吐いた。
「殿下が流れるようにフェリシア様にキスをされて・・・素敵です。」
サリナもうっとりと目を細めて言った。
「はぁ、殿下とフェリシア様は本当に仲がよろしいですよね。殿下のあのフェリシア様を見る甘いお顔。こんなに近くで見れるなんて・・・眼福です。」
フェリシアは二人を見て困惑して言った。
「ええっと、二人とも、ノアが好きなの?」
「はい、好きです。でも誤解しないでくださいね。恋愛対象としてではないんです。劇の人気俳優が好きなような感じです。ヴィルノア殿下は美しく整ったお顔で、一年女子のアイドルなんです。でも普段は笑ったりしませんの。それはそれで人気なのですが、フェリシア様の前でだけ見せる素敵な笑顔は格別でもっとファンがいるんです。今だって本当に素敵で・・・間近で見られる日が来るなんて・・・。」
フェリシアはやっぱり困惑したまま言った。
「ええっと、ノアは知り会った頃からあんな感じだよ。表情豊かだったと思うけど。」
「やっぱり、そうなんですね!その頃から・・・。」
「ええ、そうだったんだわ。」
リリアとサリナは両手を握り合い、楽しそうにキャッキャと声を上げた。
フェリシアはその様子に首を傾げた。
「その頃から、とか、やっぱり、って何?」
二人は顔を見合わせて、うんと頷いた。
「フェリシア様はこちらの小冊子をご存じですか?」
リリアは三冊の小冊子を鞄から取り出した。




