128.ソルティア㉑ 聞かなくていいよ
「そろそろ本当のことを言いてくれないかな?」
テオドールは呆れ顔で言った。
ソルティアはぐっと唇を噛み、顔を背けると不貞腐れたように言った。
「ヴィルノア様の手紙が欲しかっただけですわ。」
「理由は?」
「ヴィルノア様を手に入れたかったのですわ。ヴィルノア様は美しく、わたくしにこそふさわしい方ですわ。わたくしの為にあるような方です。だからこそ学園でわたくしに尽くしてくださったんでしょう。それなのに、あの女がいるからわたくしと婚約できずにいるのですわ。あの女に気を使って手紙をヴィルノア様が送るなんて、おかわいそうじゃありませんか。それにあの女も手紙なんか送って、ずうずうしいったら。元婚約者もポイっと人にくれてやるような女ですのよ。ヴィルノア様が素敵だから乗り換えたのでしょうね。そんな女、酷い女に決まっていますわ。ヴィルノア様にふさわしくありませんわ。そんな女のくせにヴィルノア様に媚びるように手紙を送りつけて、あざといことですわ。あんな女いらないでしょう。」
フェリシアはソルティアの話が始まると、青ざめて今にも泣き出しそうな顔になった。
ヴィルノアはフェリシアの手を握っていた自身の手を放し、フェリシアの両耳をふさいだ。そして耳元に口を近づけ言った。
「聞かなくていいよ。シアは聞かなくていい。」
フェリシアは顔を横に振った。
「で、でも・・・。」
ヴィルノアはフェリシアの言葉を遮るようにフェリシアの唇に自身の唇を重ねた。フェリシアは驚いて目を見開いた。少し長めの口付けをした後、ヴィルノアは再びフェリシアの耳元で言った。
「僕だけを見ていて、シア。」
そう言うとヴィルノアは再び唇を重ねた。何度も啄むようにキスをして、フェリシアがとろんとした顔になったところでそっとフェリシアを抱き締めた。
「シアは何も聞かなくていいよ。あんな女の言うことなんて聞かないで。」
「・・・うん。」
アゼリアは頬を赤らめ口元を押さえて、二人の様子をじっと見ていた。
エリックは額に手を当てはぁっと息を吐いた。
テオドールはソルティアのあまりに自分勝手な言い分にはぁっと大きく息を吐いた。
「二人の手紙はどうしたんだい?」
「ヴィルノア様のお手紙は部屋に置いてありますわ。他の女宛ですけど、ヴィルノア様の書いたものですもの。捨てられませんわ。あの女の手紙は捨てましたわ。見たくもありませんもの。」
「君、一国の王女なんだよね?」
「そうですわ。当たり前のことお聞きになりますのね。」
「・・・私が君の国の国王だったら、国益を損なう可能性しかない君をさっさと切り捨てるけどね。」
テオドールは口調は柔らかいが、これ以上にないくらいの冷ややかな目でソルティアを見た。
「君がおろか過ぎて驚いているよ。君の国には正式に抗議させてもらう。その上で君の処遇を決めさせてもらうよ。処遇が決まるまでは貴族牢で大人しくしていてもらうよ。いいね。」
「わたくしが牢に入るですって!わたくしは一国の王女ですのよ!!いくらテオドール様が王子だからって許されることではありませんわ!」
ソルティアは目を吊り上げ叫んだ。
「んー、君はまだ自分の立場が分かっていないようだね。おろか過ぎない?君は人の手紙を盗んだんだ。それも王族の手紙だ。しかも勝手に読んだ。それを実行するために何人もの罪のない人を脅迫し、協力させた。また王子の婚約者に平手打ちをした。そして、罪を逃れようと偽証をした。ほら、これらの罪状名をつけるなら、窃盗罪、脅迫罪、暴行罪、偽証罪、いくらでもあるよね。君は犯罪者だ。」
テオドールが冷ややかに淡々と言い続けた。
「犯罪はこの国で行われたから、この国の法で裁かせてもらうよ。今までは君の国で起こったことは誰かがもみ消していたのかな。きっと、君は今回が初めてじゃないでしょう?身勝手な理由で人を理不尽に傷つけたのは。今までは王女だからという免罪符が効いたかもしれないけど、今回の件に関してそれはないから。君には罪人として罪を償ってもらうよ。」
ソルティアはわなわなと体を小刻みに揺らしスカートを強く握った。
「おかしいですわ。わたくしにそのようなことが許されるわけありませんわ!王女なんですのよ。おかしくありませんか!」
「おかしいのは君だよ。これだけ言ってるのに分からない?」
テオドールは侮蔑の色を浮かべて言った。
「確かに君は王女だ。残念なことにね。だけど王女という身分を君から取ったら何が残るんだい?ただの幼稚で身勝手な女、ただそれだけだ。」
「ひ、酷い・・・。わたくしに対して無礼ですわ!!」
「無礼、ね。君に対して礼儀を尽くす必要があるのかな。さて、これ以上は時間の無駄だね。ジル。」
テオドールがそう言うと、ジルベールは続き部屋にいる4人に応接室に入るよう言った。
ヴィルノアは立ち上がり、上着を脱ぐとフェリシアの肩にかけた。
「シアはここに居て。聞きたくなかったら、僕の上着を被っていて。エリック兄上、シアを頼みます。」
「ああ、任せろ。」
エリックは頷いた。
「アゼリア王女、行きましょう。」
ヴィルノアがそう言うとアゼリアは頷き、二人は応接室へと入って行った。
「私も行かなくていいのかな?」
フェリシアが戸惑って言うと、エリックが頷いて言った。
「ここに居ろ。ヴィルに任せとけ。俺でもヴィルと同じ立場なら同じようにするよ。フェリシアはここでいい。」
「・・・うん。分かった。」
フェリシアはかけられた上着をぎゅっと掴んで頷いた。




