126. ソルティア⑲ フェリシアからの手紙の行方
次に呼ばれたのはスカイ公爵家の執事ハインツ、使用人ポリー、王宮門番、第三王子付き侍女、侍女長の五人だった。
「今日は行方が分からなくなっている第三王子の婚約者フェリシアの手紙の捜査に協力してほしい。まずフェリシアは執事ハインツに手紙を託したと言っていたが間違いないか?」
テオドールは淡々と尋ねた。
ハインツは一歩前に出ると軽く頭を下げてから言った。
「はい。フェリシア様からお預かりし、すぐにここにおりますポリーが王宮に届けるよう手配しました。ポリー、続きを。」
ポリーがハインツの横に来て、頭を下げてから話し始めた。
「お嬢様のお手紙を王宮にお届けしました。王宮では門番の方が第三王子付きの侍女を呼び止めてくれて、お嬢様のお手紙を渡しました。」
「そう、対応した門番と侍女はこの二人で間違いない?」
ポリーは二人を見て頷いた。
テオドールはそれを確認して、ふむと言った後、門番と侍女に尋ねた。
「君たちが手紙について知っていることを話してくれる?」
門番が一歩前に出た。
「私はスカイ公爵家の使いの者がフェリシア様からの手紙を第三王子に届けに来たと伝えられました。ちょうどこちらの第三王子付きの侍女が通りがかりましたので彼女が届ける旨を使いの者に伝え、手紙を侍女に渡しました。」
侍女は頷き、一歩前に出た。
「はい。確かに私がお預かりしました。直ぐにお届けしようと殿下の部屋に向かいましたが、途中カルマ王国第二王女様に呼び止められました。そしてこれから第三王子に会うので自分が持っていくから手紙を渡すように言われました。私は王女様にお使いのようなことをさせるわけにはいかない、とお断りしたのですが、私の言うことが聞けないのか、とお怒りになって、手紙を持っていかれてしまいました。すぐに侍女長に報告しました。」
「侍女長、続きを。」
侍女長は一歩前に出て話し始めた。
「お手紙の件を聞き、すぐにカルマ王国第二王女様のお部屋へ行きました。すると王女は留守で、王女付きの侍女が出てきました。お手紙の件を尋ねると、今ちょうど王女様が第三王子殿下とお会いしているところだ、と言いました。庭園を散策中だと聞きましたので、そちらに向かいました。途中、お部屋にお戻りになる王女様とお会いしました。恐れながらとお手紙についてお聞きしましたところ、お渡ししたところだとお答えになりました。第三王子殿下のご予定に王女様との会談は入っていないと記憶しておりましたので、殿下付きの侍女に殿下が庭園に行かれていたか確認しました。侍女からは確かに庭園に行かれていたとの返答をもらいました。」
「成程、それで王女の言い分を信じたんだね。」
「申し訳ありません。第三王子殿下に直接お伺いすべきでした。」
「いや、普通は王女の言うことを疑ったりはしないよね。うん、分かった。一通目はそう言った経緯なんだね。フェリシアは何通も送ったようなんだ。他の手紙もハインツが受け取り、ポリーが王宮に届けた、で間違いない?」
二人は頷いた。
「同じ門番の方に預けました。」
「はい。受け取りました。その後、門番控室で侍女に渡しました。ただ、初日の侍女ではありません。初めてお手紙をお預かりして侍女に渡した後、別の侍女が来て言ったのです。またフェリシア様からのお手紙は届くだろうから門番の私がお預かりして、門番控室にその侍女が取りに行くので渡してほしいと第三王子殿下が言っている、と。ですから、毎回その侍女にお手紙を渡しました。」
「そう、分かった。じゃあ、門番の君と侍女長以外は帰っていいよ。」
三人は一礼して部屋を後にした。
次に部屋に入ってきたのはソルティアと彼女付きの侍女三名だった。
ソルティアは笑みを浮かべて言った。
「ごきげんよう、テオドール様。わたくしに何か御用ですの?」
テオドールは王子然とした笑みを浮かべて言った。
「ええ。現在私は第三王子が彼の婚約者に宛てた手紙が十数通、そしてその婚約者が第三王子に宛てた手紙が同じく十数通、行方不明になっている件を調査している。あなたとあなたの侍女たちにもその協力をお願いしたい。よろしいですよね。」
ソルティアは笑顔を崩すことなく言った。
「ええ、もちろんですわ。」
「ありがとう。では門番の君が手紙を渡していた侍女はこの中にいるかな。」
門番は一歩前に出て真っ直ぐソルティアの後ろに立っていた侍女を指さした。
「彼女です。」
「間違いないね?」
「はい。」
「途中失礼します。私が王女様のお部屋をお訪ねした際に対応した侍女も彼女です。」
「そう。そこの君、こちらへ。」
指名された侍女はソルティアの後ろで青ざめた顔でカタカタと震えていた。
テオドールは重ねて言った。
「聞こえない?早くこちらへ。」
侍女は縋るようにソルティアを見た。
「・・・ソルティア様・・・。」
「・・・分かっているわよね。」
ソルティアは振り向き侍女に近寄ると耳元でそう言い、彼女の背を押した。
「テオドール様に従いなさい。」
「・・・はい。」
震えながら前に出てきた侍女は目に涙をためていた。
「君はフェリシアからの手紙を受け取って、その後どうしたのか教えてくれる?」
侍女は一層青ざめカタカタと震えたまま何も言わなかった。
「正直に話してもらわないと、この国の法では拷問して話してもらうことになるけどいいかな。結構苦しいと思うよ。」
「申し訳ありません。申し訳ありません。」
侍女は謝罪をただただ繰り返した。




