125. ソルティア⑱ リリアの告白
リリアは伯爵の腕の中から出ると、意を決した顔で話し始めた。
「・・・私はお姉様に言われた通り、フェリシア様に手紙をお届けしようとしたのです。
フェリシア様とは面識がございませんでしたが、そこは、お姉様に嘘をついていました。懇意にして頂いてると。フェリシア様は学園でも有名人で人気があります。憧れていました。仲がいいというのは私の願望です。お姉様、ごめんなさい。
初めて手紙を託された日、教室でサリナにフェリシア様に殿下からの手紙を届けに行きたいから付き合ってくれとお願いしていましたら、ソルティア様が突然話しかけてきたのです。そして、お預かりした手紙について話すようにおっしゃられました。王女様には逆らえません。私は話しました。
するとソルティア様は私から手紙を取り上げ開封し読みました。フェリシア様宛ての手紙だとお止めしましたが聞いては頂けませんでした。私は王女なのよ、とおっしゃって・・・そして、フェリシア様に渡したと姉に伝えて、フェリシア様からの伝言と言って『愛してる、ノア』と姉に伝えるようにと、おっしゃられました。そんなことはできないと言うと、王女である私に逆らうならそれ相応の手段に出ると言って、王宮に勤める姉が殿下の手紙を盗んだと証言して姉を解雇させ、そのあと下働きとしてカルマ王国で一生働かせると言ったのです。『王女のわたくしが証言するのです、誰もが信じますでしょう』とおっしゃって・・・。姉が王宮で侍女としての仕事に誇りをもって働いていることは知っていました。そんな姉が貶められるなんて・・・できませんでした。」
リリアは顔を両手で覆いその場に座り込んだ。エミリは妹の肩を抱いた。
「その後も言われるがまま、第三王子の手紙を ソルティア王女に渡していたんだね。」
「・・・はい。申し訳ありませんでした。」
「誰かに相談はしなかったのかい?」
「フェリシア様にも言われました。自分の手に余るようなら誰かに相談しなさいと。ですが口外したら何が起きるか分かっているわよねとソルティア様に言われて・・・怖くてできませんでした。フェリシア様のところに言った時も、事が上手くいくよう協力しろと言われて・・・フェリシア様には不快な思いをさせてしまいました。申し訳ありませんでした。」
「サリナ嬢はなぜこのようなことに協力したのかな?」
リリアは両手を胸の前で握り締め言った。
「テオドール殿下!サリナは巻き込まれただけです。私の為に黙っていてくれていただけです。」
サリナは首を横に振り、悲し気に微笑んだ。
「リリア、いいのよ。ありがとう。
確かに最初はリリアの事情に巻き込まれたような形でした。ですが何日かしてソルティア様が言ったのです。私の兄が文官として王宮に勤めていることを知っていると。もし私が手紙のことを誰かに話したら、ソルティア様の手の者が手紙を兄の下に置き、手紙盗難の犯人として仕立てると。そんなバカげたことできないでしょう、と言いましたら、わたくしが取り上げたのを見たと証言しますからできますわ、とおっしゃられました。ソルティア様は留学中は王宮に住まわれていると聞います。まさかと思って兄に尋ねたところ、ソルティア様を見かけることもあるし、兄の働いている部屋にソルティア様は侍女を何人か連れて突然来ることもあったと言っておりました。兄が身に覚えのない罪を着せられてしまうなんて・・・あんなに仕事に誇りを持って働いているのに到底受け入れることができませんでした。」
サリナはリリアの握り締めた手に自身の手を重ねて言った。
「ありがとう、リリア。かばってくれて。私も同罪よ。」
「ごめんね、こんなことに巻き込んで。」
「ううん、いいの。友達でしょう。」
「・・・ありがとう、サリナ。」
リリアは再び涙を流し始めた。
「あの子はなんてことを・・・。」
アゼリアは両手で顔を押さえて俯いた。
「事情も知らずに、きついこと言っちゃった・・・。」
フェリシアはしゅんとなった。
エリックは首を振った。
「あの時のお前は正しい行動をした。決して間違えてはいない。」
「・・・うん。ありがとう、エリック。」
「気にするな。」
ヴィルノアはぎゅっとフェリシアの手を握り言った。
「兄上の言う通りだよ。シアが気にすることはない。」
「うん。」
ヴィルノアに寄りかかったフェリシアの頭にそっとヴィルノアは頭を乗せた。
「事情は分かった。よく話してくれたね。でも、もう少し話を聞かせてくれるかな。」
テオドールは穏やかな口調で言った。
リリアとサリナはこくんと頷いた。
「まず、一通目は君らの目の前でソルティア王女は開封して、読んだんだね?」
「はい。」
「その後どうしていたか覚えているかい?」
「ソルティア様は読み終わるとご自身の制服のポケットに入れていました。」
「そう。二通目はどうしていた?」
「二通目もそれ以降も、お渡しするとすぐに開封されて読んでいらっしゃいました。そして制服のポケットに入れておりました。その時に伝言も私に言っておりました。」
「サリナ嬢もそれを見ていたの?」
「はい。見ていました。」
「次にフェリシアに不敬だから王女に謝るべきだって言ったことは間違いない。」
「・・・はい。言いました。」
「それは王女に協力するために言ったのかな?」
「はい、そうです。本当はフェリシア様にあんなこと言いたくなかったんです。フェリシア様とヴィルノア殿下は本当に仲がよろしくて、私お二人のこと大好きだったんです。素敵だなぁ、って、憧れていたんです。それなのに殿下をソルティア様に譲れだなんて・・・ひどい言いようですし、おかしいです。そんなソルティア様の肩を持つようなことをしなければならないなんて・・・本当にフェリシア様には申し訳ないことをしました。」
「私もリリアも遠巻きにフェリシア様とヴィルノア殿下を見て憧れていたんです。ですが、あんなことを言ってしまって・・・申し訳なくて。」
「うん。君たちの言い分は分かった。今日は帰っていいけど、全て解決するまで自宅謹慎してね。伯爵も子爵もいいね。」
「「はい、仰せのままに。」」
「今日はもう帰っていいよ。」
伯爵家、子爵家の者達は一礼すると部屋を出て行った。




