124. ソルティア⑰ 事実確認
続き部屋の応接室にシリア伯爵家、トリト子爵家の関係者が呼ばれた。
「今日は第三王子の手紙の行方についての捜査のため集まってもらった。事前に伯爵と子爵に話した通り、第三王子の手紙が10通強行方が分からなくなっている。王子は侍女であるエミリに届けるよう託したと言っているが、間違いないか?」
テオドールがそう尋ねると、シリア伯爵家の長女、エミリが一歩前に出た。
「はい。間違いありません。夕方、湯あみや夕食の準備ができたことをお伝えした際に、直接殿下からフェリシア様に渡るよう手紙を託されました。」
「なぜ、君に託したか聞いているかい?」
「以前廊下でフェリシア様とお話をしていたのを殿下がお見掛けになったようで、そのあと殿下にお会いした時にフェリシア様と仲が良いのかと聞かれました。妹が殿下と同じ学年でフェリシア様と懇意にさせて頂いている関係で、時々フェリシア様にはお声をかけて頂いているとお話したことがあります。ですから、殿下は妹に殿下の手紙を渡し、次の日に手紙をフェリシア様に学園でお渡しするよう言われました。」
「妹君はリリア嬢だね。」
「はい。リリア、昨日話してくれたことをテオドール殿下にお話ししなさい。」
エミリが振り向き父である伯爵の後ろに隠れるように立っていた少女が前に出た。少女は青ざめた顔で礼をした。
「シリア伯爵家が次女、シリアです。お初にお目にかかります。姉が言ったとおり、殿下からの手紙をお預かりし、次の日に学園でフェリシア様に・・・お渡ししました。」
シリアはギュっと目を瞑り俯いた。そしてカタカタと震え出した。
「君は直接フェリシアに渡していたんだね。」
「・・・。」
「どうなんだい?」
「・・・。」
しびれを切らした伯爵がシリアの背に手を置き言った。
「シリア、早くお答えしなさい。昨日、私に話してくれた通り正直にお答えすればいいんだ。」
「・・・はい。お、お渡ししていました。」
「そう。もう一つ確認したいのだけど、君はフェリシアから伝言も預かっていたそうだね。それを姉のエミリに第三王子に伝えてほしいと言って伝えていたと聞いている。間違いない?」
「・・・はい。」
「どんな伝言だったか覚えているかい?」
「・・・はい。『お休み、大好き、ノア』『愛してる、ノア』です。」
テオドールは自身の顎に手を置くと首を傾げて言った。
「これ、聞いた時にも不思議に思ったんだけど、なぜ同じクラスにいる第三王子に直接伝えなかったのかな?わざわざエミリ嬢を経由していたら、伝言が伝わるのは次の日になるよね。」
「わ、私が殿下にお伝えするなんて恐れ多くてできません。」
「ふーん、そういうものなんだね。ところで君はトリト子爵家の次女、サリナ嬢と学園では行動を共にしていると聞いたが間違いないか?」
「はい。」
「サリナ嬢前へ」
子爵の後ろに立っていたサリナは同じく青ざめ、体をビクッと揺らした。そしてゆっくりと前に出た。
「トリト子爵家が次女、サリナと申します。お初にお目にかかります。」
「君はリリア嬢がフェリシアに手紙を渡すところを見たことがあるか?」
「・・・はい。」
「フェリシアから伝言を託されている時も一緒に居たのかな?」
「・・・はい。」
「君たちはフェリシアと仲がいいんだね?」
「「・・・はい。」」
二人は俯いたまま答えた。
テオドールはふぅと息を吐くと言った。
「君たちの言ったことが正しいならいろいろとおかしいんだよね。」
シリア伯爵は困惑してオロオロしながら尋ねた。
「どういうことでしょうか、殿下。」
テオドールは首を傾げて言った。
「うーん、それがね、フェリシアが言うには彼女らに会ったのは昨日が初めてだったというんだよ。昨日、君らはカルマ王国の王女を食堂にいるフェリシアまで案内したでしょう。そしてフェリシアに忠告された。フェリシアはその時初めて君らと話したと言っているんだ。ほら、辻褄が合わないよね。」
「忠告とは何ですか?リリア!お前はフェリシア様に何をしたんだ!」
シリア伯爵はリリアの肩を掴んだ。
「・・・お父様・・・。」
涙目でリリアは伯爵を見た。
「ジル、頼む。」
ジルベールは伯爵と子爵に昨日食堂で起こったことをかいつまんで説明をした。二人は額に手を置き、項垂れた。
「なんてことを・・・。」
「・・・お父様・・・。」
「あ~はいはい、話を戻すね。フェリシアは誰からも第三王子の手紙を受け取っていないというんだ。それに伝言も託していないと。僕の知るフェリシアは意外と恥ずかしがりやでね。愛の言葉を人に託せる子じゃないんだよね。」
「・・・。」
「あと、君ら分かっているよね?昨日フェリシアにも忠告されたでしょう。君らの行動は家の評価につながると。今回の件は、手紙の盗難、王子への詐欺行為、この場での偽証、すぐに挙げられるだけでこれだけの罪状があるんだ。このまま偽証を続けてもいいけど、その際にはそれなりの強い手段でしゃべってもらうことになるけどいいよね、伯爵も、子爵も?」
伯爵も子爵もさぁっと青ざめた。
「リリア!昨日私たちに話したことは嘘だったのか?そうならここで正直に話すんだ。」
「サリナ、何があったか全て殿下に話しなさい!!」
伯爵に両肩を掴まれ揺らされたリリアと、子爵に両腕を強く掴まれたサリナはぽろぽろと大粒の涙を流し始めた。
「リリア!泣いていないで話しなさい!」
「サリナもだ。泣くより話が先だ。」
「「ごめんなさい、ごめんなさい。」」
「謝っても何も解決はしない。早く話しなさい。何をしたんだ?」
ぽろぽろ涙を流すリリアを悲し気な顔で見た伯爵は揺らすのを止め、娘を抱き締め、背中を撫でた。
「ここで話さなかったら、お前はどんな拷問を受けるのか分からない。そんなことはさせたくない。昨日、私に嘘を話したのには何か事情があるのだろう。話してくれなければ、私は何もしてあげられない。
話してくれるね。」
エミリもリリアの背を撫でた。
リリアは目元をぬぐって、顔を上げた。




