121. ソルティア⑭ 引き続き仲良しです
ヴィルノアはフェリシアを教室まで送っていくと、微笑んで言った。
「昼は食堂のいつもの席でね。」
「うん。またね。」
名残惜しそうにヴィルノアは手を離し、自身の教室へと向かった。
フェリシアが教室に入るとすぐにエリックとエリザベスがやってきた。
「おはよう、フェリシア。ヴィルと仲直りできて良かったな。」
エリックがニヤッと笑って言った。
「おはよう。喧嘩なんてしてないよ。ちょっと意地悪しただけ・・・違うか。昨日はありがとう、エリック。エリザベスも、ありがとう。」
「友達だからな。」
「フェリシア、もう大丈夫そうですわね。頬も腫れなくて良かったですわ。痛かったでしょう。まったく、何なんでしょう、あの人は。」
エリザベスが言葉を荒げた。フェリシアは微笑みを浮かべて言った。
「ありがとう、私の為に怒ってくれて。頬も大丈夫だよ。それに、ねっ、エリック。」
エリックは呆れ顔で言った。
「心配することないぞ、エリザベス。フェリシアはわざと叩かせたんだから、な。」
「えっ。」
「ふふ、ほら、衆人環視の中、叩かれれば言い逃れできないでしょう。」
「いくら王女でもな。」
「ふふ、あんだけ言いたい放題言っておいて王女だからって逃げられると思ったら大間違いよね。徹底的に潰せるくらいのネタは仕込まないとね。ふふ、ああいう語彙の少ない頭の回転が残念な人って追いつめられると口より先に手が出るのよね。周りも見えなくなるし、ね。ふふふ。」
「フェリシア、今のその顔見たらヴィルが泣くぞ。」
「あら、嫌だ。折角ノアにかわいいって言ってもらったのに。スマイル、スマイル、っと。」
「まぁ、フェリシアにもそんな計算高い一面があったなんて意外ですわ。」
エリザベスは頬に手を当て言った。
「わたくしも見習わないといけませんわね。」
エリックは慌てて、エリザベスの肩を掴んで言った。
「エリザベスは見習わなくていいから。フェリシアみたいに黒い笑顔にならなくていいから。」
「酷いなぁ、エリック。エリザベスがいくら上品でかわいいからって。」
「そうだ。エリザベスが山猿のフェリシアみたいなんてありえない。」
「山猿!これでも昔よりはかわいい女の子になったと思っているのに。私が山猿ならエリックだって山猿でしょう。」
「似たようなものだろう。おはよう、フェリシア。ヴィルとは話ができたんだな。」
シルビアがオスカーと共にやって来て言った。
「あっ、シルビア、オスカー、おはよう。昨日はありがとうね。」
「ヴィルの落ち込み様はすごかったぞ。」
「うん。テオ兄様に聞いた。だからすぐに手紙を書いて謝ったの。そうしたらノアも手紙をくれて。で、いつも通りに戻ったの。心配かけてごめんね。」
「んー、手紙、な。それも話題に上っていたな。」
「ああ、それなら兄上達が調査中だ。」
「早く解決するといいな。」
全員頷いたのだった。
昼休みになり、フェリシア達が食堂に行くとすでにヴィルノア達が来ていた。
「今日は早いんだね。」
フェリシアがそう言っていつもの席に座ろうとすると、ヴィルノアが立ち上がりひょいっとフェリシアを抱き上げ、座り直し自身の腿の上に乗せた。
「ノ、ノア!恥ずかしいから降ろして!」
「いやだ。シア不足なんだ。」
ヴィルノアはフェリシアの腰に腕を回しぎゅっと抱きしめた。
「いやだじゃないでしょう。ここ食堂だよ。降ろして!」
「だめ。シア、暴れると危ないよ。ほら見て。今日のパンケーキ、ブルベリーのソースと生クリームが付いているんだ。美味しそうだよ。はい、あーん。」
ヴィルノアは一口大に切ったパンケーキの上に生クリームとブルーベリーのソースをのせフォークで掬うとフェリシアの口元に差し出した。フェリシアはいつものようにぱくりと頬張った。
「美味しい!ブルーベリーの酸味が生クリームの甘みと合ってとっても美味しい。」
「そう?もっと食べる?はい、あーん。」
ヴィルノアが差し出すパンケーキをパクパクとフェリシアは楽しそうに食べて言った。
エリックは呆れ顔で言った。
「おい、フェリシア。流されてるぞ。いいのか?」
フェリシアははっとして周りを見渡すと、食堂中の視線が自分たちに集中していることに気付いた。
「は、恥ずかしい・・・。」
フェリシアは両手で真っ赤に染まった顔を覆った。
「ヴィルノア殿下、お手柔らかにお願いします。フェリシアが真っ赤ですわ。」
エリザベスがそう言うと、ヴィルノアは満面の笑みで答えた。
「真っ赤なシアもかわいいです。」
エリザベスは頬に手を当てふぅっと小さく息を吐いた。
「ヴィル君は相変わらずだね。」
ジルベールを連れ食堂に来たテオドールは楽しそうに微笑んで言った。
「フェリシアもヴィル君に付き合ってくれてありがとうね。」
「ヴィルノア殿下、いつも言っていますよね。適切な距離をと。フェリ、降りなさい。」
ジルベールがしかめっ面で言うと、テオドールが代わりに応えた。
「無理だよね、フェリシア。ヴィル君がっちり抱きかかえてるものね。」
「・・・はい。」
「だめです。シア不足解消中です。放しません。」
「ヴィル君はブレないね。まぁ、ほどほどにね。そうそう、フェリシア。今日の放課後、時間あるかな?例の手紙の件で関係者から話を聞くんだけど、同席しないかい?」
「はい、聞きたいです。」
「じゃあ、決まりね。ヴィル君と一緒に王宮に来てね。」
「はい。」
「兄上、俺も同席してもいいですか?」
エリックが立ち上がって言った。
「ああ、気になる?構わないよ。」
「ありがとうございます。」
テオドールはこくんと頷くと、苦虫を噛んだような顔のジルベールを引きずるようにして食堂を出て行った。




