12. 学園祭① チームクララ
エノール学園では六月に学園祭が行われる。学園祭は二年生から五年生までの各クラスがクラスごとに出店したり舞台で発表したりする。入学したての一年生は出店や発表はできず、当日は来場する保護者と同様に客として参加する。まだ入学したてで、学園生活に慣れることを優先してほしいとの学園の配慮だ。学園祭は二日間行われ、二日目の夜には後夜祭という名の夜会が催される。生徒全員がドレスアップしてダンスや食事を楽しむ。何事も本気で取り組み、めい一杯楽しむという校風のエノール学園なので、どのクラスも力を入れて準備し、当日はかなり盛り上がるイベントになっていた。
「もうすぐ学園祭です。今日は我がクラスの出し物について話し合っていきたいと思います。」
かわいらしい声でクラスの委員長であるクララが生徒の前に立ち話し始めた。ふわふわの茶色い髪で背の低いクララは丸い眼鏡を掛け、おっとりとした話し方をする。見た目は深層のご令嬢という感じだが、実家の商売を手伝い、持ち前の行動力とアイディアで実績を上げているかなり活発な才女だ。
「はい、カフェはどうでしょう?」
女生徒が手を挙げ、明るい声で提案する。
「女の子はかわいいお仕着せにエプロンをして、男の子は執事風のスーツにエプロンをして、飲み物やスイーツをお出しするのです。」
「まぁ、面白そう!」
「お仕着せ来てみたいわ!」
「カフェいいなぁ。」
あちこちから賛同の声が上がった。
その様子からクララは言った。
「はい、皆さん反対はなさそうなのでカフェにしましょう。ただ、かわいい、もしくはかっこいい格好で食事を提供するってだけではインパクトというか目新しさというか、人を引き付ける魅力に欠けるかと思います。お客様が来なければ、売り上げもありません。やるからには学園一のカフェにいたしましょう。何かいいアイディアはありませんか?」
さすが商売に携わっているだけのことはある。儲ける気満々だ。
「あっ、そうそう、今年から人気投票が行われます。上位のクラスにはご褒美が出るそうです。」
軽くウインクをして立てた人差し指を頬の横に上げにっこり微笑むクララはとてもチャーミングだ。
「おおっ!!」
教室内がざわめいた。
「学園祭なんて面白いイベントがありますのね。」
エリザベスが頬に手を当て、ほぅと息を吐く。
「うん、楽しいよ。みんな全力でやるから毎回すっごく盛り上がるよ。」
フェリシアは去年の学園祭を思い出していた。
「去年は合唱を舞台で発表したんだけど、当日あまりにも上手くできて、沢山拍手をもらって、思わず嬉しくて泣いっちゃったんだ。」
「まぁ、いいですわね。」
「うん。今年のカフェも楽しみ。この前、お兄様といったカフェもすごく素敵だったのよ。白い外壁にパステルイエローの屋根で、海辺のテラスって感じで海の絵や錨とか壁に飾ってあって、入り口にはお店のキャラクターの猫がかわいいお店の制服を着ているイラストがウェルカムボードに描かれているの。」
「素敵ですわね。」
「今度一緒に行こうね!」
「はいっ!行きますわ!」
にっこりとエリザベスは笑った。
うん、美人の笑顔はいいっ!とフェリシアはうんうんと首を縦に振った。そしてピーンときた。
「はいっ、委員長。猫をコンセプトにするのはどうでしょうか?」
「猫…ですか?」
クララは首を傾げた。
「そうです猫です!猫耳をつけて、猫さんをかたどったクッキーとかお出しするのです。さあ、エリザベス王女の頭に三角のふさふさとした耳があるのを想像してみてください。…ねっ、滅茶苦茶かわいくないですか?」
クラスの視線は一斉にエリザベスに集まった。エリザベスは視線を受け止め、さすがの王女様でにっこりと微笑んだ。おおっとどよめきが起きる。
「ありですね。猫耳やりましょう。」
クララがそう言うと全員が拍手をし賛同した。
「衣装はいいとして、何かイベントも企画したいですねぇ。集客につながるような、インパクトのあるものを…これに関してはイベントを企画するチームを作りましょうか。」
クララは必要な仕事を書き出し、数人ずつのグループに分けた。
「それでは、学園祭に向けて頑張っていきましょう!」
「おおっ!」
チームクララは一つにまとまった。




