118. ソルティア⑪ 仲直り
フェリシアは自室に戻るとすぐにヴィルノアからの手紙を開封した。
大好きなシアへ
シアからの手紙受け取りました。ありがとう。
大好きだよ、シア。
頬はもう痛くない?シルビア達に聞いて、あの王女を叩き切りに行きたくなりました。僕のシアを叩くなんて、許せるわけがありません。
シアが王女にきっちり反論してくれたと聞きました。シルビアとエリザベス王女がフェリシアはヴィルノア殿下の気持ちを微塵も疑っていなかったと言っていました。信頼してくれて、ありがとう。
僕はシアが大好きだよ。シアと出会ってから揺らいだことは一度もないよ。大好き、シア。
まさか自分の手紙がシアに届いていないとは思いませんでした。僕のミスです。不安にさせてごめんね。よくよく考えれば気付けたのに。僕が未熟でした。本当にごめんなさい。
あと、王宮に帰ってからエリック兄上が僕の部屋に来てくれて、食堂を出て行ってからのシアの様子を教えてくれました。僕はシアにノアって呼んでもらえなかったことがショックで動けませんでした。本当なら、僕がシアの元に行きたかった。兄上ではなく、僕が行くべきだったんだ。兄上とシアが仲のいい親友のような関係だって分かっていても、シアに寄り添うのはいつでも僕がいいのです。シアのこととなると僕の心は狭量です。情けないよね。
話がそれました。
エリック兄上は、シアがテオ兄上に抱きついたのもキスをしたのも、僕をノアって呼ばなかったのも、全部僕がシア以外の女性に触れられたのが原因だと言っていました。ソルティア王女はすぐにベタベタと僕に触れてきます。振り払っても、迷惑だからやめてくれと言っても聞いてくれません。バルトも協力してくれたけど効果がなく、とにかくべたべたと触ろうとしてきます。とにかく押しが強くて、この二週間うんざりしていました。何で相手が嫌がっているのに、同じこと続けられるんだろうね。分かりたくもないのでどうでもいいことです。ああ、これだと言い訳にしか聞こえないね。
僕は二度とシア以外の女性に腕を絡められることはしないし、どこも触らせません。
僕はシア以外いりません。触れたくもありません。
今すぐにでもシアを抱き締めたい。柔らかいシアの頬に口付けをしたい。シアのノアって呼ぶ声が聞きたい。すれ違ったままなんて嫌だよ。こんな僕ではシアから嫌われてしまうかな。それも絶対嫌だよ。嫌わないでね。ああ、僕がシアを嫌うなんてことは生涯ありません。
シア、大好き。ずっと好き。
まだまだ書き足りないけど、これ以上時間を取るとジルベール殿が帰れなくなるので、今日はここまでで。明日迎えに行くよ。待ててね。早く会いたいな。早く明日になるといいのにね。
おやすみ、シア。
大好きだよ。
心を込めてヴィルノアより
フェリシアは繰り返し何度も読み、その日は手紙を抱き締めたまま眠った。
朝、朝食を急いで取ったフェリシアは早い時間から玄関ホールでそわそわとうろついていた。
使用人たちはそんなフェリシアを温かい目で見守っていた。
「ヴィルノア殿下がいらっしゃいました。」
執事が玄関を開けるとヴィルノアが急ぎ足でフェリシアの元にやってきた。
「シア、おはよう。会いたかった!」
ヴィルノアはそう言うとぎゅっとフェリシアを抱き締めた。
「ノア、おはよう。迎えに来てくれてありがとう。」
ヴィルノアはフェリシアの頬を優しく撫でた。
「腫れてなくて良かった。痛くない?」
「うん、大丈夫。ありがとう。」
フェリシアは頬を染め、ヴィルノアの服を掴んで言った。
「昨日は意地悪してごめんね。」
「ううん、いいんだ。シアは何にも悪くないんだ。ノアって呼んでもらえたし、シアはかわいいし。大好き、シア。」
「うん、知ってる。・・・私も好きよ、ノア。」
呟くように言ってフェリシアは顔をヴィルノアに摺り寄せた。
「か、かわいい。シア、かわいい。大好き。」
ヴィルノアはフェリシアを抱き締める腕に力を入れた。
「ああ。やっぱり。殿下、おはようございます。いつも言っているでしょう。未婚の男女の適切な距離を保ってくださいと。はい、離れて。それにそろそろ行かないと遅刻しますよ。」
ジルベールは腰に手を当て仁王立ちをしていた。
ヴィルノアは名残惜しそうにフェリシアから離れるとジルベールに挨拶をした。
「ジルベール殿、おはようございます。昨日はありがとうございました。」
「いえいえ、大したことはしておりません。そろそろ学園に向かわれた方がよろしいかと。」
「はい。シア、行こう。」
ヴィルノアはフェリシアに手を差し出すと、フェリシアは手を乗せた。ヴィルノアはキュッとフェリシアの手を握るとそのまま指を絡めて馬車に向かって歩き始めた。
「いってきます。」
「「「「いってらっしゃいませ。」」」」
使用人たちに温かく見守られながら二人は馬車に乗り込んだ。
二人が去った後、侍女やメイドたちからはため息がこぼれた。
「ヴィルノア殿下、フェリシア様への愛が半端ないですわぁ。」
「ほんと、ただ漏れ・・・それにあの笑顔。」
「蕩ける様な笑顔、あれで15歳なんて・・・末恐ろしい・・・。」
「朝から眼福です。フェリシア様も一段とかわいらしくて。」
少しの間、玄関ホールは女性たちのはしゃぐ声が溢れていたのだった。




