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ガチ恋っ!!ってことで  作者: ゆ


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108/169

108. ソルティア① 嵐の予感

「あっ、ノアだ。」

 冬休みが明け三日程が経っていた昼前のこと、フェリシア達は移動教室の途中、中庭で話すヴィルノアとバルト、そして見知らぬ女生徒を見つけた。見知らぬ女性はヴィルノアの腕に絡みつくようにくっついていた。遠目だったので顔まではよく分からないが、赤い髪の女性だった。

「まぁ、ヴィルノア殿下がバルト以外とお話ししているなんて珍しいですわね。どなたかしら?」

 エリザベスは頬に手を当て首を傾げた。

 シルビアは顔を横に振った。

 エリックは一目見知らぬ女生徒を見ると、思い出したかのように言った。

「ああ、多分隣国カルマ王国の第二王女だ。今期から姉君と共に留学してきたんだ。姉君は兄上と同じ学年で、妹君はヴィルと同じ学年だ。姉君には兄上が、妹君にはヴィルがそれぞれ世話役としてついているはずだ。ヴィルから聞いていないのか、フェリシア?」

 フェリシアはヴィルノアを見つめたまま答えた。

「聞いていないよ。冬休みが明けてから会っていないもん。」

「そういえばお昼をご一緒していないですわね。」

 エリザベスがそう言うと、エリックが頷いて言った。

「ああ、それはあの王女と食べているからじゃないか。まだ学園に慣れないから一緒に食べてほしいと言っているらしいぞ。彼女は王宮の客室からこの学園に通っているんだ。だから、王宮の厨房に頼んでランチを作ってもらっているんだそうだ。」

「ああ、それでいらっしゃらないですのね。」

「ヴィルのことだからフェリシアだけには連絡ぐらい寄こしていそうなのにな。」

「冬休み以来、会っていないし、手紙ももらっていないよ。」

「ふーん、意外だな。あんだけフェリシアにくっついていたのにな。おっ、珍しいな。あいつがフェリシア以外の女の子に腕を貸すなんて。初めて見るな。」

 エリックが身を乗り出すように見て言うと、エリザベスは慌ててエリックの袖をくいっと引いた。そしてエリザベスを見るエリックに眉を顰めて首を横に振ると、フェリシアを見るように目線で合図した。エリックはフェリシアを見てはっと息を飲んだ。フェリシアは何の感情も伺えない顔つきでじっとヴィルノア達を見ていた。そして慌ててエリックは言った。

「心配するようなことはヴィルに限ってないと思うぞ。ヴィルはフェリシア一筋だ。」

「フェリシア・・・大丈夫ですか?」

エリザベスは眉を下げ、フェリシアの顔を覗き込んだ。

「・・・うん。大丈夫・・・。でも、その他国の王女のこと、何も聞いていない。」

「まぁ、急な話だったから話す機会がなかっただけじゃないか。それにヴィルは兄上に任された仕事が忙しそうだしな。」

「ふーん、そうなんだ。」

 フェリシアは心ここにあらずといった様子で答えていた。比較的喜怒哀楽が顔に出るフェリシアが無表情にヴィルノアを見つめる姿は周囲の者達に底知れぬ不安感を与えた。

「フェリシア、本当に大丈夫なのか?」

 シルビアはフェリシアの顔を覗き込んだ。

「うん、大丈夫。」

 返事はするもののどこか上の空で、ヴィルノア達から目を離すことないフェリシアを誰もが心配した。しかし、フェリシアをまとう空気が重く、それ以上皆何も聞けなかった。

「行こう。」

 フェリシアはふいっと顔をヴィルノア達から背けると、授業の行われる教室に向かって歩き始めた。

「ああ。」

 エリック達は黙ってフェリシアの後ろを歩いた。


 その日から、毎日のようにヴィルノアと留学生の王女の様子がフェリシアの耳に届くようになった。ある時は知り合いになった一年生から『ヴィルノア殿下は留学生の王女と毎日べったりと一緒に居て、腕を絡めている二人が登校してきましたの。』と聞いた。ある時は一年生に兄弟がいるフェリシアの同じクラスの者から『ランチを東屋で一緒に食べていて、あーんをする仲らしいですわよ。』と聞いた。またある時は図書室の手伝いをしている生徒から『放課後、肩が触れ合うような距離で隣り合って座り、仲よく勉強していましたよ。』と聞いた。そして、噂は噂を呼び、フェリシアとヴィルノアの不仲説まで校内に流れた。

 フェリシアも実際東屋で食事するヴィルノアや、通学時に赤髪の女子生徒と歩くヴィルノアを遠目に見かけることがあった。

 冬休み前までは当たり前のようにヴィルノアやバルトも一緒に食堂でランチを取っていたが、冬休みが明けてからは二人は一切顔を出さなかった。


 そんな日々が二週間ほど続き、とうとう三週目に入った。ヴィルノア達を除くいつものメンバーは食堂でランチを取っていた。

「フェリシア。大丈夫か。」

 エリックが心配そうな声でフェリシアに話しかけた。

 フェリシアは冬休みが明け、ヴィルノアと留学生の噂を聞くようになってから、日に日に表情がなくなっていき、ぼぅっとしていることが多くなっていた。

「んー、大丈夫だよ。いつも通りだよ。」

 フェリシアは何の感情を浮かべていない顔で、答えた。

「とても大丈夫には見えないぞ。食事はとっているか?ちゃんと寝ているのか?」

「ふふっ、エリックったらお母様みたいね。」

 ふふっというもののフェリシアの顔は無表情だ。

「フェリシア、ヴィルと連絡とっているか?」

「ううん。毎日手紙を送っているけど返事がないの。学園でもなんでだか会えないし・・・。」

 フェリシアはやはり無表情のまま答えた。

「フェリシア・・・。」

 エリザベスがフェリシアに話しかけようとしたその時、フェリシアの背後に三人の女生徒が立っていることに気付いた。



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