105. 手紙③ ありがとう
かわいいシアへ
今日も手紙をありがとう。すごく嬉しい。
姿絵もありがとう。部屋に飾るね。おまけの二枚を見ていたら、冬花祭の出来事が思い出されました。四本の薔薇の髪飾りをもらってくれてありがとう。そして四本の薔薇のコサージュを返してくれてありがとう。僕は幸せ者だね。
クララ嬢とベンジャミン殿は僕から見てもお似合いの二人だと思うよ。彼らは上手くいくよ。
今日は午後から兄上達の視察に同行します。南の鉱山で、サファイアを採掘していて加工する工房もあります。僕にとっては初めての視察です。どんな風に視察を進めていくのか学ばせてもらう予定です。
昨日、仕事が終わってからシアからのもう一通の手紙を読みました。何だかほっこりして、疲れも吹っ飛びました。ありがとう。今日も入っていたから今から楽しみです。
僕は絶対シアをがっかりさせることはもうしないよ。もう少し待っていてね。大人ないい男になるからね。
大好きだよ、シア。
ヴィルノアより 想いを込めて
ヴィルノアは文章を書き終えると最後に四本の薔薇の絵を描いてから封筒に入れ、ジルベールに預けた。
終業後、ヴィルノアは部屋に戻ると、早速フェリシアからの二通目の手紙を開けた。小さなカードには数行の文章が綴られていた。
今日もお疲れさま。
ラベンダーの香りは’リラックス効果があるそうです。
カードに少しラベンダーの香水を振りかけてみました。
匂い、残っているかな。
よく寝て、明日も頑張ってね。
大好きなノアへ
心を込めてフェリシアより
ヴィルノアがカードに顔を近づけると、かすかにラベンダーの爽やかな香りがした。
「ありがとう、シア。」
枕元にカードを空き、その晩、ヴィルノアはぐっすり眠ることができた。
次の日もジルベールはフェリシアからの手紙を持ってきていた。前日にひき続き、手紙は一旦テオドール預かりとなり、午前中の仕事を終えるとヴィルノアにそれは渡された。
ノアへ
今日もお仕事頑張っていますか?
兄様がノアの仕事のスピードがすごく速くて正確で、テオ兄様も助かっているって言っていました。ノア、すごいね。とても頑張っているんだね。15歳の男の子に向ける言葉じゃないけど、えらいね。ノアが近くに居たら頭をなでなでしていたと思います。いい子、いい子って。あっ、これも子供扱いっぽくてだめかな。ノアはきっと子供扱いされるの嫌だよね。うーん、どうやって褒めたらいいんだろうね。ノアを褒めたいんだけど、褒め方が分かりません。ノアの頑張りはすごいって思っていることは通じたかな?
視察はどうでしたか?兄様に聞いたら、いつも通りだったって言っていました。私にはいつも通りがどんなだか分からないけど、何事もなく終えることができたんだっていうのは分かるわ。
昨日シルビアと街にお買い物に行きました。そこでとても素敵な箱を見つけたのでノアに贈ります。つんと澄ました猫の姿がかわいいでしょう。私も同じものを買ったの。ノアからのお手紙を入れるのに使っています。ノアも何かに使ってくれると嬉しいわ。
今のままでもノアは素敵です。急いで大人になることはないよ。今のままでも充分・・・好き。
心からの想いを込めてフェリシアより
P.S. 今日ももう一通書いたので、終業後に見てね。
ヴィルノアは何度も手紙を読み返し丁寧にしまうと、フェリシアへの手紙を書き始めた。
優しいシアへ
シアからの手紙があるので、僕は仕事を頑張っています。
シアに褒められるのは嬉しいです。シアに頭を撫でられるのはすごく気持ちがいいです。えらいねって言われるのも嬉しいです。うん、僕はシアがくれる物はすべて嬉しいんだ。
昨日はラベンダーの香りの中、よく眠れたよ。ありがとう。
箱の猫は、前にシアが話してくれた僕のイメージと重なる猫みたいだよね。ほら、僕はシア以外にはツンっと澄ましているって言っていたよね。だからかな。シアがあの箱を選んでくれたのは。僕もシアからの手紙を入れるのに使うよ。お揃いってなんか嬉しいね。
昨日の視察はサファイアの鉱山で、とても良質な石の産地でした。それに工房の技術も高かったよ。本で読んである程度か採掘状況や加工技術は理解していたけど、実際見ると違うね。
そうそう、石を加工した時に出る破片をくず石と言うんだけど、それらはすべて廃棄されるそうです。でも何だかきれいだったから、少し分けてもらってきました。何に使えるか全くアイディアが浮かばないんだけど、きれいだからシアにあげるね。
シアは二歳年上で、僕から見たら僕よりずっと大人な女性です。それは心も身体もです。だから僕は早く追いつきたいんだ。ずっとかわいい弟って言われてきたでしょう。僕はテオ兄上みたいにかっこいいって言ってもらえるように頑張るよ。シアは兄上にかわいいって言わないでしょう。僕から見ても兄上はかっこいいし、尊敬できる人です。僕の自慢の兄上だからね。だから、兄上のようにかっこいいとシアに言ってもらえるように頑張るよ。
僕はシアが大好きなんだ。だからシアの隣に並んだ時に、シアに似合わないって言われないように、お似合いって言われるように、いい男になるよ。まずは兄上達について、仕事のできる男になるよ。シアの隣は僕のものだよ。
今日もシアのことで頭がいっぱいなヴィルノアより
あっ、これは子供っぽいね。本当のことだけど書き換えるね。
ありったけの想いを込めてヴィルノアより
書き終えるとヴィルノアは手紙と小袋をジルベールに渡した。
ジルベールは優しく笑って言った。
「フェリシアも殿下からの手紙をとても楽しみにしているんですよ。私が帰ると、玄関ホールまでフェリは来て、殿下からの手紙はないか聞くんですよ。おかえりなさい、を言う前にですよ。確かにお預かりしました。フェリシアが喜びます。」
「お願いします。」
ヴィルノアは口元を押さえ、頬を少し赤らめた。




