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悪役ヤンデレ王子の婚約者……あれ?私、死ぬのでは?  作者: 木村 巴


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愛し子のちから




「助けて?」


 どういう事なの?


「それはどういう意味だ?」

 ヴィル様が私が思ったのと同じ事を問いかけてくれる。


「私の唯一の友達が消えそうなのよ! あっ……えっと……愛し子ってね、私達の生きる力の源と近いって感じなのね。それも本当の所は、よくわからないんだけど……とにかく! 私達にとって愛し子の存在や魔力は別格なの。だから、愛し子の近くにいるだけでも元気になるし、精霊の卵たちなんかは成長が速まったりするの! そもそも私達の存在ってね……」


 そこから精霊という存在に対しての話が始まってしまった。けれど、この精霊の話をまとめると……



「つまり、ヴィーの魔力をその精霊に分け与えるという事か?」

「そう!」

 もうヴィル様と精霊だけで会話をし始めて、私は口を挟む事も出来ない。


「愛し子の魔力は、私達にとっては美味しい魔力なの。そもそも私達の好む味の魔力だから愛し子なのか、精霊に好まれる性質や性格だからそういう(美味しい)魔力を纏うのか、どっちなのかはわからないの」


 卵が先か鶏が先かっていう……永遠の謎なのね。


 そもそも精霊は、力の塊みたいな存在だから実体がある様でない。実体化出来るものは、かなりの力を持つものらしい。

 だから、力……魔力や大いなる思念がなくなれば、簡単に消滅してしまうんだそうだ。


「愛し子の魔力が精霊にとっては薬というか、命の源みたいなものという事か……」

「そうなの! 私達の存在自体が力そのものだから、愛し子の魔力を分けてもらえれば、元気になるはずなの。ただ愛し子の側にいるだけでも元気になれるわ! だって、私が実体化出来るくらいだもん!」


 そっか……祝福の娘としての特別授業って言ってたのは、こういう事に関連したものなのね。きっと。


「魔力を渡すって、どうやるの? 私はまだ魔法の勉強を始めたばかりで魔力の渡し方がわからないわ」

「……そうだな、それでヴィーに何かあっては困る」


 あ、ヴィル様が過保護モードになりそう。でも、私が治してあげられるなら……なんとかしてあげたい。


「それなら、たぶん大丈夫! 魔力譲渡が出来なくても、簡単な水魔法だったり回復魔法だったりをかけてくれればいいと思う!!」


 そうなのか。じゃあ、森に行くことで体力がつくかもしれないし! 一石二鳥だわ!


「ヴィル様……私、なんとかしてあげたい」

「でも、ヴィーはこの前寝込んでいたばかりだし、遠くの森なんて危険だ」

「主治医も、もう大丈夫って言ってたわ! お薬もちゃんと飲むし、無理もしないから、ね。お願い」


 ヴィル様の両手を握ってお願いポーズ。あざといと言われても、前世高校生であった私はここぞとばかりに使えるものは(可愛い今世の容姿)使うのだ。

 ついでにお目々もパチパチしちゃう。


「くっ……」


 よしよし。効いてる。

 私の事、好きだな、ヴィル様!


 私も好き!


「じゃあ、僕から離れないで、具合が悪くなったらすぐに休むんだよ?」

「ありがとう!ヴィル様‼」


 嬉しくてつい、ヴィル様に抱きついてしまう。


「うわ〜ん‼ありがとう!」


 そこに精霊も抱きついて来たり、光のコたちもクルクル回りながら騒ぎだし、わちゃわちゃで収集がつかなくなった。




「とりあえず、お前のいた森はどの辺りなんだ?」

 コホンと一つ咳ばらいして、最初に冷静になったヴィル様が精霊と具体的にどうするのか話し合う。

 まだ顔は赤いけどね。


 問題は、私達が考えていたよりも精霊のいた森が遠かった事だ。


 完全に、こっそり行って帰って来られる様なレベルではない。そうだった。対精霊貴族(ウチ)の領地外だもんね。


 そしたらまず、両親の説得と移動が問題となる。

 だってウチ以外の管轄って事は、その森を管轄している精霊貴族がいるって事だもんね。ヨソのお家の森って……あっこれ、ややこしくなる感じ? そっと静かに行ってくるのは駄目かな? 


「面倒そうだな……移動に関しては私の使い魔を使えば、いや、二人分だといざという時に厳しいか……」


 ヴィル様、面倒そうだと口から出ちゃってます。その後もまだ小さく何か呟いていたけど、よく聞こえなかった。……まぁ、私もちょっとめんどくさいと思ったけども。



 そこから私とヴィル様は、一旦部屋に戻り両親に会いたいと侍女に伝言を頼んだ。

 今までは、ちゃんと話さなかった為にすれ違いが起きた。だから、反対されるかもしれないとか、心配かけるかもしれないとか……色々思うけれど、反対意見も含めてちゃんと話したいし、聞きたい。

 だって、今の私には両親がちゃんといて話す事が出来るから。


 二人に会いに行くつもりだったけれど「改まって話があるとは何事か」と二人揃って慌てた様子で私のテラスに来てくれた。

 だから正直に、精霊が助けを求めて来た事、助けてあげたいと思っている事をお父様とお母様にも話した。



 二人は予想外の話しだったらしく、少し驚いていた様子だった。そうだよねぇ……まだ精霊との約束の十歳前だもんねぇ。


「ヴィオ……驚いたが、話してくれてありがとう。ヴィオは助けてあげたいんだね?」

「うん」

「それでは、向こうの領地には私の方から連絡を入れよう。少し待てるかい?」


 流石に国境を超えているのだ、対精霊貴族間だけのやり取りで済むかどうかわからない。

 さらには国家間のやり取りが絡む事を、お父様がわかりやすく説明してくれた。


 どうやら、最短でも二、三週間はかかるだろうと言う。


 私はここにいる精霊の子に、それでもいいか聞いてみた。

「そんな事は覚悟の上なのよ。人間の掟に従うわ。だって、どのみち愛し子に頼らなければ、あの子はもう助からないもの」


 そう言って泣き出した。


「精霊はそこにいるのかい? 人間界に規則があるように、精霊たちにも規則があるんだよ。今回私達が手を貸すことによって、君に何か精霊側から罰が課せられる可能性がある事はわかっているかい?」


 罰? 驚いてそのこを見ると「もちろんだわ! それだけの禁を犯してここに来てるのは覚悟を上だわ」と声を荒らげた。


「覚悟の上だって……」

「そうか……では、私は娘の願いを全力で叶えよう。でも、一つだけ約束しておくれ絶対に無理はしない事。わかったね」



 私は頷きながら真剣に「はい」と約束した。

 こんなに、なんか大変な事だと思っていなかったから、正直ビビっているけども。ちょっと、助けてあげたかったのと、お出かけしたら体力つくかなと思っただけだったのに……。


 ちなみに私の横で、ヴィル様は私から目を離す事はなかった。うん。瞬きはして欲しい。いやいや、普通は怖いからね。

 私は嬉しいけども。








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