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悪役ヤンデレ王子の婚約者……あれ?私、死ぬのでは?  作者: 木村 巴


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 まずは隣国の森だと言う事で、こちらと向こうの王族に連絡をとる事になるんだって。お父様とヴィル様が国家間(そちら)の調整に行ってくれる事になった。


 流石に他の国を挟むと大変……よね。でも、私も私のやれる事をやるだけよね!


 私はお母様と主治医とともに、体力をつけるべくさらなる運動を始めた。最近、こっそりと運動していた効果が出ている。かなり普通に近い生活は送れていると思う。

 まぁ、若いのもあるよね! 体力がつきやすいって感じるもん。


 もちろん無理は出来ないけど、いや本当、最初に比べたらめちゃくちゃ元気になったと思う。


 歩いても息がきれないし、貧血みたいにふらつく事も苦しくなる事もない。夕方に熱が出る事もない。



 我が国の王族への交渉自体は、ヴィル様が交渉に向かうと入ってくれたおかげですんなり許可がおりた。

 お父様だけじゃなくてヴィル様にも、色々と迷惑をかけてしまった。


 お父様は「これは対精霊貴族としての当然の仕事だよ」って言ってくれる。

 ヴィル様に至っては、この連絡をとる関係で毎日の様にウチに来られるから終始ご機嫌だ。輝かんばかりの笑顔で家にくる。


 あれ? ヤンデレどこ行った? と思うくらい満面の笑みだ。

 ……もしかしたら、このままヤンデレる事なく、健やかに成長したヴィル様になっちゃうのかも。


 それはそれで……好き。


 だって、今だってすっごい好意を感じるもん。ヤンデレの素質だけはすごいあるけども。



 ヴィル様は今日も、交渉の経過をお父様と執務室で話してから私の所に来てくれていた。

 こうして会うのは私の部屋から続くベランダだ。



 王城にはお父様の弟が対精霊貴族部署として常駐しているんだって。だから、王城では叔父さんとヴィル様が中心になって対応しているんだそう。

 でも、きっと王族同士の調整って大変なんだろうな……目の下にうっすら隈が見えるもん。


「ヴィル様……眠れないほど忙しいの?」

「違うよ。これはまた別のこと。ヴィーに会えるこの件があるから、むしろそっちも頑張れそう」


 きっと、半分本当で半分は優しい嘘なんだろうな。ありがとうヴィル様。


「……本当だよ? 基本的に細々した処理なんかは、僕についてる侍従がやってくれるからね。ヴィーに関する事は僕が全てやりたいけど、まだ大人として認められないからね。……しょうがない」

「侍従?」

「そう。僕についてる側近の一人かな。他の側近も側近候補もたくさんいるんだけど、あ〜色々ゴタゴタしてるから、とりあえず大人の侍従が何人かいるんだ」


 そうだったんだ! あ……色々って正妃様関連よね? そうよね。ヴィル様に嫌がらせしてるのよね。あのマザコンのママの方ね。私のヴィル様にぃ!


 私がそんな事を考えて沈黙していると、ヴィル様が慌てて説明してくれる。


「あ、ゴタゴタって言っても大したことないんだよ? そろそろ落ちつく目処は立ってるからね」

「ヴィル様……無理しないでね」

「もちろんだよ。ヴィーに会えなくなるなら死んだ方がましだからね」


 ひん! 仄暗い瞳で何処か遠くを見始めたヴィル様。イキナリ闇落ちしないで。やっぱり不安定なのかな?


「今はっ!」あ。声が裏返っちゃった。ぅ゙ゔん!

「毎日の様に会えて嬉しいね」


「うん……嬉しい……」


 あ。頬染めて、帰ってきた。おかえりなさいヴィル様。

 あぶないあぶない。何か闇落ちする様な要素がお城であったに違いない。



 なんとかギリギリ踏みとどまってヤンデレ気味、くらいでいて欲しい。




「とにかく、僕が王族の代表として一緒に行く事になれたから、安心してね」

「ヴィル様が来てくれてよかった。なんか一緒に行けるの……ちょっとだけ楽しみね」

「……うん」


 もちろん精霊ちゃんのお手伝いに行くんだけど、馬車で隣国まで行くのって旅行みたいだ。私、お泊りの旅行は前世の修学旅行しか行った事ないから、実はドキドキして楽しみだったりする。えへへ。


 侍女さん達も移動に楽なお洋服だったり、正式に向こうの王族に会ったりしても大丈夫な正装まで楽しそうに選んでいた。

 一緒に同行する侍女は二人だけなので、激しい奪い合いが行われたってお母様が言っていた。




 この二週間程は、対精霊貴族としての基本や精霊についても大切な所だけ抜き出して学んだ。付け焼き刃でも知らないよりはいいだろうということで、さわりだけね。

 そこでわかったのは、やっぱり魔力譲渡は可能らしいってこと。


 ……ただ魔力譲渡の練習してみたんだけど、私にはまだ譲渡は出来なかった。これについてはまだまだ練習が必要みたい。

 お父様が言うには年齢が幼いからか、身体が弱い為に自己防衛として渡せないんじゃないかと言っていた。

 だからもう少しして、体力がついたらまた練習する事になった。

 ちなみにその場にいたヴィル様は出来ていたけど、精霊が貰うのを嫌がっていた。

 魔力の性質が合わないと、嫌なんだって。ヴィル様は「闇の精霊……」とか呟いていたから、もしかしたら使い魔以外に契約精霊も欲しいのかしら?

 そのうち可愛い猫とカラスくるよって教えてあげたいけど、我慢我慢。


 あ! その代わりに、小さな水を出す時に「どうぞ」って思いながら水を出せば、祝福の娘なら精霊には魔力を渡せるんだって。

 逆に「ダメ」って思えば、魔力を吸収する魔法を受けても吸われないらしい。

 あ、よっぽど魔力量に差があれば簡単に取られちゃうみたいなんだけど、私の魔力量はかなりあるから取られる心配はないんだって。


 魔法って不思議ね。


 記憶を思い出した時点で、簡単な魔法を使えていて良かった。これ、記憶を戻してからだと上手く使えなかったかも。

 う〜ん。なんか、魔法って本当に不思議な感覚なのよね。

 身体を巡る魔力がわかるんだもん。それは使える様になってるから感じられるんだと思う。

 今は身体を巡る魔力を動かして、痛い所や悪い所に留めておくと自己治療が進むとか聞いたのでそれもやってみてる。魔法使いって、すごっ!

 身体中に魔力を巡らしておくと、丈夫になるらしいの!

 だから偉大な魔法使いは長生きなんだって!




 今回はお父様と私、ヴィル様とその侍従さんが代表で隣国に向かうことになった。

 だからお母様とローズは心配して、一緒に寝たり、直前まで旅の注意事項なんかをこんこんと説明したりしていた。


 今はお母様の心配が、私の事を思ってくれているからなんだってわかって本当に嬉しい。だから、真剣にお母様の話を聞いたわ。

 十回くらいは同じ事の繰り返しだったけれど。


 こうして元気いっぱいに「いってきまぁ〜す」なんて、隣国に出発したんだけれど……。


「ヴィル様、見て、川よ! 大きな橋がかかってるわ!」

「わぁ〜なんて可愛い町並みなの!」


 などなど、この世界の可愛らしい景色に興奮した私は、この旅の三日目にしてもう熱を出した。


 うん。もうね、見るもの見るもの全てが珍しく見えて……はしゃいでしまったのだ。認める。私が悪い。

 でもこの世界を見るのも初めてだし、こうした旅行みたいな事をするのも初めてなんだもん……なんだかうれしかったのだ。


 ただただ興奮して出て熱なので、知恵熱なのかもしれないし、本当に疲れただけなのかもしれない。


「最近はあんまり熱も出ていなかったのになぁ……」


 さっそくヴィル様にもお父様にも心配をかけてしまったかもしれない。

 宿屋のベッドでため息とともに独りごちる。



「お父様とヴィル様が一緒なのも、嬉しすぎる原因の一つなのよね……ヴィル様も楽しんでいるかなぁ? お城にいるより……私といる方が楽しいといいなぁ」


 熱が出ると、どうしても弱音が出ちゃう。熱い身体は寝返りをうつのも、重だるい。


 はぁ〜とため息を再びついて、同行の治癒師が部屋に来るまでの時間をすごす。



「ヴィル様に、もう会いたい……」


 うつらうつらと独り言を言いながら微睡んでいた私は……隣の部屋で全ての独り言聞いて悶えるヴィル様の事なんて、想像もしていないのであった。









第10回アース・スターノベル大賞で「花咲姫」が奨励賞を受賞させて頂きました!


すごい…本当にとてもとても嬉しいです!!どうしよう!嬉しい!

応援してくださった全ての皆さまに感謝してまわりたい!!

うわぁ~ん!ありがとうございます!


あれ?私死ぬのかな?も完結までがんばります!!

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