第四十六話 お約束
七合窟の扉は裏コードによって開かれた。
後はここを通り、最下層で飽和していると言う大地のエネルギーを破壊出来ればミッションコンプリートだ!
『……で? 行かないのか?』
「い、行くよ! 行くけどさ……あの扉、なんか変じゃね?」
開かれた扉は少し様子がおかしかった。今までの入口とは明らかに違う。
なんて言うか……入口が揺れている、砂漠とかでよく見る陽炎のように揺らいでいるのだ。
「……空間……歪んでいる……恐らく……別の場所に繋がってる……」
「別の場所? え……それは困るよ! 七合窟に用があるんだから! ってえぇぇぇ!? ちょっとシニカ! なにやってんの!?」
なんとこの死神、躊躇せずに空間の揺らぎに飛び込みやがった! なんて奴、死が怖くないと言うのか!?
揺らぎに触れた瞬間に消えるシニカの神体、本当に別の場所に繋がっているようだ。
〈死が怖い訳なかろう。死、そのものなのだぞ? ……ほれ、戻って来たようだ〉
死の神でも死は怖いだろ! 僕は破壊神といても破壊されるのは怖いぞ!? これが神と人間の差だという事か? いや、神の感覚がアホなだけだと思う。
「……大丈夫……多分最下層……大地の力……渦巻いていたし……」
「そ、そうなんだ……って最下層!? マジで!? すっげー便利なワープじゃん! 裏コードは伊達じゃなかったんだ!!」
「……どうでもいいけど言っておく……最下層に力……たくさん……人間が入れば……死ぬよ……?」
なんだそんな事、どうでもいいわ! では破壊を纏いまして……行こうか! ラストミッション、僕はこのクエストを完了して英雄になるんだ!!
「よ、よく分からんが……人間は死ぬと言ったか? お前達は、本当に神だと言うのか!?」
「死なんて怖くありません! お姉様ぁ~私も連れて行って下さいよぉ~」
何を今さら、お前達は今まで沢山見てきたじゃないか。神の存在は信じているくせに、実際に現れるとは思っていない。
都合のいい時だけ神に祈り、神の力を借りる人間。勝手に崇拝して、心のどこかで勝手に否定している。僕もそうだった。
下界にいる事がそんなに驚きか? まぁ驚くわね、僕もマジビビったし。神はそこらじゅうにいるよ、カフェで飯食ってたり、ショッピングしたり、雑草生やしたりしているんだ!
「君達はここで待っていなさい。この先は神の領域……死にたいと言うなら構いませんが、助けはしませんよ? これは神の慈悲です、正座して待っていなさい」
凡そ信じている様には見えない表情をするワンス。セカンディはウィッチしか見ていない、ダメだコイツは。
動く事が出来なくなったワンス達を残し、僕達は最下層への揺らぎに飛び込んだ。
――――一瞬にして目の前の光景が変化する。
さっきまで洞窟の入口に、豪華な扉の前にいたのに、今目の前に広がっている光景は大地の力が吹き荒れるマグマだまり。
大地のエネルギーがなくとも、この場に人間がいたらひとたまりもないだろう。それほどまでに高温、念のためウィッチとシニカの様子を確認するが、大丈夫のようだ。
「なんだろう、熱波は破壊されるから何も感じないけど……見てるだけで汗が出てきそうだよ」
『良い経験であろう? ここまでマグマに近づいた人間はオルが初めてであろうよ』
そう言えばマグマで海水浴とか馬鹿な事言っていたね、あの頃が懐かしいよ。まだ数日しか経っていないなんて思えないほど色々あった。
でも、ようやくここまで来れた。
さぁ、それじゃあ始めようか! 僕がこの世界を救うんだ!!
「お前達ッ!! 構えろ!! 来るぞッ!!」
僕の声に反応したウィッチとシニカが警戒態勢を取る。ヴァルも意識を集中し始めたようだ。準備は万端、一分の隙も無い……さぁ、かかってこい!!
「………………あの、オルクス様? な、なにが来るのでしょうか?」
「……なにも……来ないよ……?」
慌てるな、まだ警戒していてくれ。
これはラストミッション、この物語の集大成だ。
となれば……いるだろう? 最後の難関、このクエストの成功を阻もうとするご都合主義なモンスターが!!
『……残念だが、そんな化け物の姿は見えないし感じないぞ?』
「あの…………まだ警戒していた方がいいですか?」
「……早く……破壊しようよ……」
……おかしいな? このままスムーズに物語が進むはずがない。どんな物語でもそう描かれている。なんでか知らないけど都合よく現れる障害、それが世界の掟なんだろ?
……なるほど、はいはいはい!! そっちのパターンね! 僕がこの大地のエネルギーを壊そうとした瞬間にボスが現れる。
もしくはこのエネルギーは摩訶不思議な力で守られていて、僕の破壊が効かなくて、命を懸けてあのエネルギーに飛び込むと言う展開だね?
よかろう! その役、見事に演じ切って見せようではないか!!
「では行くぞ!! ウオォォォォォォォォ!! 喰らえ!! 破壊ィィィィィィ!!! ………………な、なんだと!?!? 僕の破壊が効かな――――」
「――――流石ですオルクス様!! 綺麗さっぱり、大地の力は破壊されました!」
「……パチパチパチ……さすが……お兄ちゃん……」
『ふむ……では帰るか』
……え? 終わり? 嘘でしょう? 散々引っ張られた最終イベントがこんな呆気なく終わると言うの?
ちょ、ちょっとどこ行くの君達? ほ、本当に帰るの?
……ははぁん? そういう事か! 目的を達成して帰ろうとした時にイベントが発生するタイプだね? 恐らく帰還させまいと入口付近にはガーディアンでも…………あれ? ウィッチとシニカは?
『もう帰ったぞ? 我らも早く帰ろうよ?』
「……ガーディアン、いた?」
『がーでぃあん? さっきから何を言っているのだ?』
こうして僕のミッションは終わりを告げた。
霊峰、そして世界は守られた。世界を救うのを邪魔する悪の手先なんて存在はいなかった。
エル姉達が降臨しても即大噴火とならなかった事から、僕達が直接ここに降臨しても大丈夫だったはず。
つまり……終わったはずなんだ、数分で、この物語は。
僕、なにしていたんだろう? 余計な事ばっかりしていた気がする。まぁ、楽しかったしいいけど。
その後僕は軽くマグマ海水浴を楽しんだ後ウィッチ達と合流し、エル姉の所に戻るのであった。
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