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第四十二話 回生の姉

 一向に止む気配がないラクトの神力。


 止むまで耐え、隙を見て何かしらの行動を起こそうと画策していたが、痺れを先に切らしたのはラクトの方であった。



「アンタ達を下僕にするには時間が掛かりそう……残念だけど今回はいらないわ。契約・履行!! そして……この破壊の力でお終いよ!!!」



 再び放たれた契約の力、それに呼び出されたのだろうか? ラクトの周りに突如現れた魔者の群れ。ラクトを守る様に並び、こちらを威嚇してくる。


 契約した魔者という事か? 魔者自体は脅威ではない、しかし魔者に注意を向けすぎるとラクトの神力に飲み込まれてしまう。


 いや、ラクトはもう契約の力で僕達を従えさせようとは思っていない。今まさに放たれようとしている、破壊の力で僕達を破壊するつもりだ。



「破壊の力をストック出来ないのは残念だけど……仕方ないわね。アタシの神力に魔者、そして破壊の力……今度こそ終わりね? ――――死ねッ!! 破壊、解放ッ!!」



 神器より放たれる破壊の力。迫りくる魔者ども。


 ラクトの契約の力を防ぐので精一杯の僕達には、もはや対処できる力は残されていなかった。


 破壊神の力で人生が始まり、破壊神の力で人生が終わるのであれば悪くない。良い夢だった、ありがとう……ヴァルハザード。


 ……あ、転生したら霊峰の事は頼むよ? 僕が転生した時に、焦土と化した世界に生きるのは嫌だから。


 ――――僕は訪れる最後の時を、目を瞑って静かに待った。



≪――――やっと見つけました、ようやく尻尾を出しましたね≫



 ……あれ? 何も変わらない。ヴァル達の意識もまだ感じる、まだ終わりが訪れていない……?


 恐る恐る目を開け、広がる光景を確認する。


 ラクトと僕達の間に誰かが立っている。破壊の力は来ない、ラクトの契約の力も感じない。魔者の姿もない。


 だ、誰だ? その後ろ姿……どこかで見た様な…………!! えっ!? そ、そのニーハイ……綺麗な脚!! も、もしかして!!!



「契約の神ラクト。神界法規に従い、貴女を断罪します。今度は逃がしませ――――」


「――――エ、エル姉ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」



 僕達を守る様にラクトの前に立ち塞がったのは、断罪の神エルフレイヤ。


 神々しく美しい僕の姉、お姉ちゃんが助けに来てくれたんだ!!



「……えっ…………!?!? オ、オルクス!? なんでこんな所に……そう言えば一瞬破壊の力を感じたわ……いいえそれよりもその体、どうしたの!?」


「ははは……話せば、長くなるんだけど……」



 エル姉が慌てながら僕に近づいて来る。相変わらず綺麗な顔だ、でもそんな悲しそうな顔をしないでほしい。


 僕は多分大丈夫。なんでだろう、凄く安心している自分がいる。姉が来てくれたからもう大丈夫、僕を守ってくれるお姉ちゃん……家族の愛は偉大だね。



「な、なんでこんな…………アイツね……? あの落神がやったのね? ……待っててねオルクス、今お姉ちゃんが……アイツを殺してくるから……」



 怒りを通り越し無表情となったエル姉。ゆっくりとラクトの元へ近づいて行く。


 それに気圧され、後退るラクト。取り巻きの仲間も、従属させた魔者もいなくなった。形勢逆転、この怒れる最上位神を退ける事など出来るのか?


 でもエル姉はやっぱり凄いな。ラクトの力と魔者、そして破壊の力を一瞬で消滅させたんでしょ? 流石は僕のお姉ちゃんだ。



「――――いやいやいや、ワシもいるのだよ? さっきからなんで気づかない振りしてるの?」



 ついに話しかけてきたか。実はいたんだよね……もう一神。


 なるべくエル姉だけを視界にいれ、出来ればこのままやり過ごそうと思ったんだけど、そうもいかないみたい。お礼はちゃんと言わなきゃね。



「そ、そんな気づかない振りなんてしてませんよ……ありがとうございます、えっと……コトワリィ様」



 エル姉と一緒に来ていたのは、なんと理の神コトワリィ。


 正直凄く意外だ、エル姉が来てくれるのは分かるよ? 姉だもん、弟のピンチには現れるさ。


 でも貴方は……お母さんの友達のお兄ちゃんの家の近所に住むオッサン……くらいの関係性じゃん。正直もう登場しないと思っていた。



「だからワシはゼンリだとっ……まぁいい。素直に礼が言えるとはお理口さんだ! ……それよりなんでさっきから寝ているのだ? 起きんか」



 なんかイントネーションが変だったぞ? お利口さん……だよね? 起きろと言われても、体が動かないんだ。



『……この体を見て何も思わんのか? 起きたくとも起きられん、中々にこの体は破壊されてしまったのだ』


「まったく、破壊神ともあろうものが情けない……弐の理・原理! ……その体はどのような原理で動くのだ? その体は気合で動く、それがその体の理よ」


『はぁ? 気合? ウォォォォォォォォ動けぇぇぇぇぇぇぇ!! って動く訳あるか!! そんなんで動けば苦労は……動くんだねぇ~動いちゃうんだねぇ……』



 本当に動いた!? 相変わらず痛みはあるっぽいけど、ピクリとも動かなかった体がヌルヌル動く! 気合って、すげぇな。



『なんてハチャメチャな力だ……勝手に我らの体の原理を変えるでない……』


「破壊に言われたくはないわ!! 安心しろ、ずっと続く効力ではない。一時的な力よ……便理な力であろう?」



 便利……じゃないのか? この神と話していると発音がおかしくなりそうだ。訛っているように思われてしまう、田舎者と馬鹿にされるのは嫌だ。


 でも別にずっとそのままでも良かったのでは? 気合でなんとかなるなんて、素晴らしいじゃないか。怒れば強くなるとかと同じ原理でしょう?


 ……いやこんなオッサンよりエル姉だ、あっちの様子はどうだろう?


 エル姉も最上位神とはいえ、ラクトは神器で力を増幅させている。体も動くようになったし、厳しいようなら応援にいかないと!!


お読み頂き、ありがとうございます


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