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第四十一話 コントラクト

 吸い取られ続ける破壊の力。無限に等しい力だ、吸い取られている感覚なんてないし、減った所で影響はない。


 ただ再び破壊の力が放たれてしまうのは、かなり危険だ。



「これだけ無防備なら流石に壊れてくれるでしょう? あと少しでお前は――――」


「――――魅惑の華ッ!!」


「――――……万死……」



 魅了の力と死の力がアンに放たれた。二人が駆けつけてくれたようだ。


 が、アンは表情を歪ませるも二人の力に耐えている。その場から動く事もせず、破壊を吸い続けていた。



「……破壊神……破壊……放って……? ……まだ……足りない……」


「オ、オルクス様……お願いします!」



 アンの表情を見るに、全く効いていないという事はないはず。いくら分体とはいえシニカは最上位神、ウィッチの力も最上位級だ。


 あと一押し、ここに破壊の力が加わればアンを倒せるはず!!



(ヴァル!! 頭をアンに向けて! 破壊を放って!!)


〈……マジで? お前想像してみろよ? 頭を相手に向けて、そこから放たれる神の力……カッコわる――――〉


(――――いいから放て!! そもそもそんなカッコいい顔じゃないんだ! 今更なに言ってんだ!!)


〈わ、分かったよ……もう〉



 まだ動く首を動かし、頭をアンに向けるヴァル。


 体の先端から破壊の力は放てると言う、それなら頭も先端にあたるはず。


 目標確認! 射角よし! 破壊準備よし! 放出口、頭部つむじ付近! 撃てェェ!!



「ギィッ……ギャァァァァァァァ!! グゥガァァァァァァァ!!!」



 恐ろしい叫び声を上げるアン。初めて苦しがっている様子を見た。


 効いてる! 効いてるよ! 良かった、ちゃんと破壊の力は頭からも放出できた! かなりカッコ悪くておかしな光景だけどね。頭向けて何やってんの? って感じ。



「いけるよ!! みんな、頑張って!!」


「こォォォォォのォォォォ!! こんな……ところでェェ!! ……仕方……ない……!! 契約・履行!! アンタ達! 来なさい!」



 アンが神力に苦しめられながらも叫んだ言葉。


 その言葉に反応するように倒れていた銀獅子の男達が立ち上がり、アンの元へ向かって行く。



「そ、そんな!? アイツらは死んだはずなのに!?」


「……死んでる……でも神力によって……強制的に動かされている……」



 神力!? ここに来て神力を使ったと言うの!? ずっと使っていなかった、隠していた力を……いよいよ形振り構えなくなったという事か!!


 男達がゾロゾロとアンの元へ集う。死んだ肉体を強制的に動かし、何をさせるつもりなのか?


 しかしアンの周りはまさに爆心地。三神の神力が渦巻いているんだ、ただでは済まない。その証拠にアンに辿り着く前に肉体が崩壊していっているのが分かる。



「……そう、もっとよ……もっと寄こしなさい!!」



 男達はアンまで辿り着いていない、しかしアンの様子には徐々に変化が見られた。


 あれほど苦しんでいた三神の神力に、抵抗し始めたのだ。破壊の力を通して、アンの抵抗力が増大したのが感じられた。



「……この神力……覚えがある…………契約の神……ラクト……」


「け、契約の神!? それって……確か……」


「……落神(オチガミ)……」



 お、落神? なにそれ……? 落とし穴の神って感じ? シニカとウィッチはこの神を知っているようだけど、そんなに驚くほどの事なのだろうか?



〔落神は、罪を犯したのにも関わらず、裁きを受けずに逃げている神の事です。神道を外れ、外道に落ちた神……下界に逃げ落ちた神の事を言います〕


〈なるほど、それで神力を隠していたのか。神力を使えば神に感づかれるからな〉


{……それより……抵抗が激しい……弾かれる……}



「ハァッハハハハハ!! ()()()から抵抗力の全てを受け取った!! もうアンタ達の力は通じないわ!! 神力を使ってしまったし、もたもたしていられない……これでお終いよ!! 契約・主従!!」



 激しい抵抗力によりヴァル達の力が完全に弾かれる。更にはラクトから破壊の力とは違う神力が放たれた、これが本来の奴の力か。



{……主従契約……抗わなければ……主と従者……契約される……}


(なっ、なにそれ!? 契約って……双方の合意の元に締結されるものじゃ……)


〔元、最上位神です。強制的に契約させるだけの力はあります〕


〈下界にも受信機あれば契約……みたいな組織があるだろ? ……あれ? 別次元の世界の話だったか?〉



 ヴァルは何を言っているのか分からないが、強制的に契約させられる事なんて話は沢山ある。弱者が、強者に都合のいいように契約させられる。合意なんて関係ない、強制だ。ましてや御上の力、神力なのだから。


 強制的に、都合のいいように、拒否する事も破棄する事も出来ない契約の力。


 その力を持っているのが、元最上位神、契約の神ラクト。



「流石にアンタ達には効かないか……でも動けないでしょう? 少しでも気を抜けば契約成立、アタシの下僕となるのだもの。神器で神力も増幅されているのよ!!」



 神力増幅、恐らく詳細な効果が不明だった神力変換の神器か。フォルナから奪ったこの神器だけは、ラクトにとって無意味だと思っていたけど、ここにきて切り札となるとは!



(し、神界に撤退は!?)


〈この状態では無理だ!! 神界に戻る時に神力は纏えん! 神力を消せば一瞬でラクトの操り人形となる!!〉



 再びの万事休す。逃げる事は出来ず、ただ抗い続ける事しか出来ない。


 望みがあるとすれば、ラクトからの神力の放出が止まるまで耐え、隙を見て神界に撤退する事であろうか?


お読み頂き、ありがとうございます


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