第四十話 満身創痍
{……あの神器は……神力を完全に……遮断する……あの女の髪飾り……あれがそう……}
〔か、完全に遮断!? そんな物が……どうすればいいって言うのよ!〕
{……遮断出来るのは……神力だけ……神力以外なら……簡単に壊れる……}
神力に対し完全なる防御を誇る神器か。人間のためにあるような神器だね? 神の力が効かないのであれば、人間も神と戦えるようになるという事だろう?
突破口は見つかった。神力以外とは……つまり。
{……神力を纏わず……殴れば壊れる……}
〔き、危険すぎます!! 神力を纏わなければ、破壊の剣で斬られる……そもそも破壊を放たれたらお終いです!!〕
〈……まだあるだろう。神力以外の力が……この場には〉
ヴァルの視線の先、そこにいたのはワンスとセカンディ。
そうか、神術だ。あれを壁に放てば簡単に壊れると言う情報だ。まさか神力の下位互換の神術が……神力で壊せない物を壊す力があるはね。
「ワンスさん!! あの女に神術を放って!!」
急に声を掛けられ驚くワンス。
蚊帳の外にいたワンスとセカンディ。この異様な光景、異様な会話について行けずにただ傍観していた。
役立つ時が来た! この時のために君達は生きていたんだよ!!
〈お、おい……絶美神などにこっそり伝えさせた方が良かったんじゃ……〉
(あ……やべ……)
「なっ!? 気づいた!? させないわ!! アンタ達!! ワンス達を殺しな!!」
やっちまった。ごめん、マジごめん。
こちらも蚊帳の外にいた銀獅子のメンバー達。しかし驚く事などはなく、アンの命令に疑問を抱いている様子もない。
数は十数人か? それがゾロゾロとワンス達に向かって行く。
「な、なんだと言うのだ!? クソ……セカンディ!!」
「あぁ!!」
男達と対峙するワンスとセカンディ。
銀獅子も金色の神徒だ、ただの雑魚という事はあるまい。ならばものを言うのは数、このままではワンスとセカンディが危ない。つまり僕達が危ない!!
『絶美神!! アンは我が抑える!! お前はワンスに神術を使わせろ!!』
「分かりました!!」
{……私も手伝う……分体でも……人間なんて余裕……}
(うん!! お願いシニカ!!)
影より現れたシニカの分体、相変わらず真っ黒だ。この薄暗い洞窟の中では視認するのがやっとだよ。
ウィッチとシニカがワンス達の救助に向かう。
しかしそれを黙って行かせるアンではなかった。
「行かせるかッ!! 放しゅ――――」
『――――させんぞッ!! 抵抗破壊!!』
動かない右足を引きずり、アンに詰め寄ったヴァル。
そのためアンは破壊を放出するのを中断し、ヴァルに意識を向ける他なかった。
意識をウィッチ達に向けている間に、神器の壁が壊されるなんて事になってしまっては本末転倒。ヴァルに意識を向け、ヴァルに破壊を纏わせ続けさせる他なかった。
「ふんッ! 一人じゃ何もできないのね! 最上位神が聞いて呆れるわ!!」
『勝手に吠えておれ! これは我が友の人徳、これが我が友の力だ!!』
アンに付かず離れず、ヴァルは距離を詰めていく。左足で動き右腕でアンからの剣戟を防ぐ。
ワンス達の方に目を向けると銀獅子のメンバーが蹴散らされているのが分かった。もう少し粘ればワンス達を連れて来る事が出来るだろう。
「この……死にぞこないがァァ!!! ッフ! くらえッ!!」
『グゥッガァァァァァァ……ナめるなァァァァ!!!』
一瞬の隙を付かれてアンに距離を取られた。すかさず破壊の力を神器より放出したアン。僕達が使う、神をも壊す力の奔流に飲み込まれるヴァル。
破壊の力は同一の力で相殺するも、脆弱な人間の体だ。体は更にボロボロに、ついには立てなくなり倒れ込むヴァル。
左足も動かなくなってしまったようだ。
『グググ……う、動かん……』
「ふふふ……はははははは!! やっと壊れたか!! 手こずらせてくれる……お陰で破壊の力は空っぽよ、さっさと補充――――」
「――――神術・水切!!」
――――パリィィィィィィィィィィィィィィン――――
後方より放たれた神術、それがアンの壁にぶつかった。ウィッチ達が間に合わせてくれたようだ。
ガラスが割れたような不協和音が響く。見えはしないけど、確かに壊れたはずだ!! ヴァル!!!
「なァッ!? ク、クソッ!! もう一度――――」
『――――し、神器破壊!』
再び不可視の壁を展開しようとしたアン、それをさせなかったのはヴァル。壁がなくなり遮る物がなくなったアンに、破壊の力が迫る。
神器を認識した破壊の力は突き進み、見事にアンの髪飾り型神器をぶっ壊した!!
「し、神器が……ックソ!! 一番アタシに必要だった物を……よくもッ!!」
剣を構え、怒りの表情のまま向かって来るアン。
完全なる防御は破壊された、未だに抵抗力は強大ではあるのであろうが、少なからず神力はアンに効果をもたらすはず!
〈……ダメだ、もう右腕も動かん……〉
(そ、そんな! 目から破壊とか出せないの!?)
〈どこぞのロボットだ? 破壊は体の先端……つまり両腕両足からしか放出できん〉
(……頭からは?)
〈…………多分出せるけど……カッコ悪くね?〉
そんな事言っている場合か!? アンはもう目の前まで来てるよ!? 破壊は纏っているから、剣では僕達を殺せはしないだろうけど……。
……そうだよ、アンはまた破壊を吸い取るつもりだ。……ほらやっぱり!! お腹に剣が当たってる!! コイツ今絶対吸い取ってるよ!!
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