第三十九話 起死の妹
再び繰り出され始めたアンからの剣戟。
それを避けようとするヴァルではあったが、傷の影響か動きが鈍い。剣戟の一部を避ける事が出来ず、体に撃ち当たる。
もちろん破壊を纏っているため、体に影響はない。傷つく事も斬り落とされる事もないが、目の前で刃物をブンブン振り回される光景は中々に怖い。
『ックゥ……破壊!!』
「無駄よッ!!」
ヴァルが隙を見て破壊の力を放ってみるも、やはりそれは防がれる。拮抗なんて全くしていない、一瞬で掻き消される。
「凄い力ねぇ破壊と言うものは……アンタは壊された事はあるのかしら? ……壊れろ、破壊ッ!! なんてねぇ!!」
再度剣先より放たれた破壊の力。同じようにヴァルは領域展開してそれを防ぐ。
防げてはいるものの、ギリギリと言ってもいいかもしれない。さっきと同じように、破壊と破壊がぶつかった衝撃圧に僕の体が悲鳴を上げる。激痛のはずだ、ヴァルは大丈夫だろうか?
〈……マズい、右足をやられた〉
(右足と左腕……動かない?)
〈あぁ、ピクリともせん。破壊を纏ったり放ったりする事は問題ないが、このままでは全身動かなくなる〉
体の状況から、破壊の力に耐えられるのは後一、二撃だと思うとヴァルは言う。更に最悪なのは右足が動かなくなった事で回避行動を取る事が出来なくなった事。
サンドバッグ状態だ。
(ねぇ……やっぱり……神界に行く?)
〈そ、そうだね。それがいいかもね〉
{……お兄ちゃん……おっはー……}
〔そうしましょう!! 体を治してから再戦で!!〕
ごめんね、やっぱり僕まだ死にたくないもん。退くだけだよ、戦術にもあるじゃん! 戦略的撤退だよ!! ヴァルの信念? んなもん知らねえよ。
…………ん? 今なにか……。
{……お兄ちゃん……無視しないで……}
(はぁ!? えっ!? シニカ!? シニカなの!?)
{……うん……近くまで来てた……寄ってみた……}
キターーーーーーー!! 最強の援軍! 最上位神! 天蓋! 死の神シニカ様!!
ふはははは! これで勝った! 死の神だぞ? なんでも死ぬんだぞ? 死神シニカちゃんだぞ!!
「ふははははははは!! 惜しかったなアン? 貴様は時間を掛け過ぎた、貴様に死を届ける者が現れたぞ?」
「……いきなり笑い出して、壊れたのかしら? 死を届けるのはアタシでしょ? 何をトチ狂っているの?」
ふはは、ほざけっ!! 何を呆れた顔をしている? お前も神なら知っているだろう? 死を届ける役目を持った、最強の神を。
(シニカ!! 助けて! アイツが僕を虐めるんだ!!)
{……お兄ちゃん……可哀そう……}
(そうでしょ!? だからアイツに死を届けてやってよ!)
{……無理……}
よし、行け我が妹よ!! ……あんだと? 無理って言ったかコイツ?
え、嘘でしょう? この流れで、なにしに来たんアンタ?
{……サードス・スリー……フォルナ・フォー……死んだ……}
(あ……うん、死んだね)
{……それで来た……お兄ちゃん……近くにいた……}
(あ……うん、近くにいたね)
{……アイツ……神なんでしょ……? ……今の私は分体……破壊神に無理なら……私にも無理……}
えぇぇぇそんなぁ~……素晴らしいタイミングで現れたのに、本当にただ寄り道しただけとは思わなかった。
分体か、確かに世界は死で溢れている。影分身でもしなければやっていられないのだろうね……。
{……でも……あの神器……知ってるよ……?}
(えっ嘘マジで!? 攻略本なの!? シニカは攻略本なの!?)
{……? よく分からない……あの神器は……神の力を吸い取り……跳ね返せる……}
え……うん、なんとなくそうではないかと思っていたよ。ヴァルが纏っている破壊の力を吸い取って、放出したんでしょ? そこはあまり……。
もしかしてこの攻略本はハズレか? たまにあるよね、ハズレ。
(……シニカ、僕達の神力が見えない壁に防がれるんだけど……その神器の情報は……?)
{……知らない……}
デターーーーーー!! 大事な所が分からない、後は自分の目で確かめてくれ!! とか言うクソみたいなアレ!! 金返せぇぇぇぇ!!
{……待ってて……本体で調べてくる……神ネットに……載ってると思う……}
神ネット? そう言えば以前ヴァルもそんな事言っていたような……?
時代はネットか……寂しい物だね。アナログの……あの分厚い本には興奮したのもだが、僕も大人になってしまった。
時代は変わった。古臭い、紙に記された記述を目で探すなどあり得ない、知識の海より好きな物を一瞬で釣りあげられる時代なのだ!
〈……なぁ? オルって何歳なのだ?〉
(お前の記憶だろ!? 僕も自分でさっきから何を言っているのか分からないよ!!)
「いい加減壊れて頂ける? その破壊の力、ストックさせてもらうわよ? 動かなくなったアンタからね!!」
ゲゲッ!? 待って待って! まだシニカ検索中なんだよ!
破壊をストック……それが目的か!! あの神器に上限はないのか? しかしこのままではアンの言う通りになってしまう。
動けなくなり、意識がある状態で神力を吸われる。破壊の力を宿した神器、そりゃ素晴らしいお宝になるね!
『ック……何故この剣は壊れん!!』
「ほんっとに馬鹿ねェェェェ!! 吸い取っているのよぉぉぉ!!」
その後距離を取るアン。見た光景だ、この後の行動は分かっている。破壊を放つつもりだ。
{……お待たせ……ワイファイが繋がらなくなって……焦った……}
(それ絶対あの神だよ!! あの下位神の迷惑神!! だから有線にしろとあれほ――――)
〈――――いいから早く教えろ!! 時間がないのだぞ!?〉
お読み頂き、ありがとうございます
宜しければブクマや評価のほう、お願い致します




