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第三十七話 神器

『雑魚神が!! 失せろッ!!』


「はぁッ!!」



 二人の神から放たれる強力な神力。人間であれば防ぎようがない、次元の違う攻撃。


 しかし目の前に現れた女は神。その顔に焦りなどはなく、悠然とした態度でその力に包まれた。



「ックク……ククク……アッハハハハハ!! 効かないわ!! 破壊と……これは魅了かしら? その程度の力しか持っていないなんて、笑えないわね」



 笑っているじゃないか……。しかしいくら神とはいえ、この強大な力に眉一つ動かす事がないとは。


 ここに来て力のインフレを感じる。今まではどんな物でも一瞬で壊れたのに、ワンスに突破され、フォルナに防がれ、この女にも届かない。


 神器とは、それほどまでの物なのか。



「神器は神にも力を与える。私の所持している神器は四つ、勝てるのかしら? 怪我した破壊神と、男好きの女神さん?」



 余裕だな、アンは神力を纏った気配もなかった。つまり己の中にある抵抗力だけで僕達の攻撃を防いだという事か?



〈……力が、通らん……〉


(ヴァル? もしかして……フォルナに使った破壊の力のせいで……?)


〈…………いや、それは問題なかった。問題は奴だ〉


〔あの女に抵抗された感じはありませんでした。アイツに届く手前……何かに防がれました〕



 何かに防がれた? フォルナのような結界を展開している様子はない。アンから神力を感じる事もない、つまりは……。



〈またしても神器……全く面倒な物を作ったものだ!!〉


〔下界にある神器は昔、神が神界から持ち出し下界で紛失、または盗難された物らしいですが……〕


(……なにそれ? あんなヤバイ物ならしっかり管理してよ!!)


〔も、もちろん今は管理が厳しくなっています!! 下界に落ちた神器は探すのが困難です。そのため神器を見つけたら持ち帰るか、破壊するのが神の役目の一つです〕



 ウィッチ達に怒っても仕方ない。今の所、神器は防御方面に力を与える物のようだ。アンの力がどんな物か知らないが、攻撃だけに注意すればなんとか……。



「さぁ!! もうお終いなの!? なら今度はこっちから行くわよ!!」



 きた!! 攻撃!! これが僕達に影響を与えるほどのものなら危険、ヴァルもウィッチも神力を纏い準備を整えるが、アンから神力が放たれる事はなかった。


 代わりに振り下ろされたのは剣戟。中々に鋭い剣筋だが、なぜ剣術なのだ? そんな物で神が滅ぼせる訳がないだろう?



『……ッ!? これは……』



 アンがヴァルに目にも止まらぬ速さの突きを放った。それを右腕で受け止めるヴァル。


 本来であれば剣は破壊され、崩れ行くはずなのだが、その様子が見られない。



「どう? 中々の剣術でしょう? これはこの器の剣術、それを私の力と神器で増幅したの! アンタ達に防げるかしら!?」



 この器の剣術……つまりアンは僕達と同じ状態という事か! 僕の体の中には僕とヴァルがいる。この女の体にも二人いる……神と人間、アンとは器の女の名前だろうか?



〈剣に微量だが神力が纏われている……が、なんの神か分からん。絶美神、お前はあの剣は受けぬ方がいい、中々の力だ〉


〔わ、分かりました! ヴァルハザード様の援護に徹します!!〕



 その後もアンは剣を振り続けヴァルに襲い掛かった。その間アンは一度たりとも神力を放つことなく、ただ斬りかかって来るだけ。


 しかしいくら剣術に優れていても、神器を用いてもヴァルに刃は通らない。こちらの力も見えない壁に阻まれる。この決定打のない状況、それはアンも分かっているはずだが……。



「……ふふふっ、そろそろ溜まったかしら?」



 急に距離を取るアン。不敵に笑う表情のまま、剣先をこちらに向けだした。



「さぁ、防いでみなさい? 己の力を…………解放ッ!!!」



 剣先から放たれた異常な圧力、異常な力の奔流。


 この力、この感覚……僕は知っている。そりゃそうだよ、今までこの力で楽しくやって来たんだ。


 放出された力は、破壊の力……そのものであった。



『なっ……なんだと!? グゥオォォォォォォォ!!!』



 自身の周囲に破壊領域を展開するヴァル。ウィッチやワンス達もその領域に入っていたため壊れる事はなかったが、強大な力に耐えられなかったのは人間の……僕の体。


 血は出ないが所々に亀裂が入り痛々しい。実際もの凄い激痛のはず、皮膚が割れたのだから。



(ヴァ、ヴァル!? 大丈夫!?)


〈あり得ん……破壊を我以外の者が操れるはずが……〉



「ふふふ……ははははは!! やはりその体は神体ではないようね!! 神体であれば破壊の力は融合するだけ。傷を負ったという事は……その体は脆弱な人間の体、アンタは人間に魂だけ降臨させただけという事」


『……それがァ……ググッ……なんだと言うのだ? 貴様……なぜ破壊を……』



 器となっている僕の体が壊れない限り、正確には僕達の魂が壊れない限り消滅する事はない。


 しかしこの器はただの人間、腕が潰れれば物が持てなくなるし、足を斬り落とされれば立てなくなる。


 この状態はあまりよろしくない。体が傷ついても激痛が走るだけで活動停止する事はないが、これ以上体が損傷してしまうと物理的に動けなくなってしまう。


 ヴァルは問題ないと言っていたが、激痛を受けているためか明らかに反応が鈍くなっているし、何より……破壊の力を十分に出し切れていないと僕は感じてしまった。


お読み頂き、ありがとうございます


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