第三十五話 状況変化
それ以降もヴァルは破壊の力を放ち続け、フォルナと根競べをしていた。
放つ神力はそれほど強大ではないため、フォルナの結界を壊す事は出来ないと言う状況が続いていた。
〈……オルには悪いが、この体は脆弱すぎる。神体であればとっくに傷は塞がっておる〉
(な、なら本当にやめようよ! それか早く壊して帰ろう!?)
〈このような、体に穴が開いた状態で強力な破壊を放った事はない。我もどうなるのか……分からんのだ〉
それってつまり、ワザと力を抑えていたのではなく、本当に強い力を出せないって事!? 出来るのかもしれないが、最悪体が壊れてしまう可能性があるのか。
人間の体で神力を放つ。今まで意識した事はないけど、よく考えれば不釣り合いな力を使っているのだ、何が起こってもおかしくはない。
〈今度我らも、神体を申請しようか? もうこんな体、どうでもいいであろう?〉
(ど、どうでもよくないよ!? 神体って……ヴァルの本体を使えばいいじゃない!)
〈本体は神そのものだ、降臨させれば下界への影響が大きい。そのため神は過去の人間の体を改造し、神体へと昇華させ下界活動用としている〉
(つまり……改造人間?)
〈そう、つまり神は仮面ライ……やめておこう。我は神体を押さえていないでな、神界事務局に申請手続きをせねばならん〉
神界事務局……? やめてよ、神のイメージが壊れる。眼鏡を掛けた真面目そうな神が書類整理している光景なんて見たくない。
なんて馬鹿な事を考えている場合ではない。状況が状況、こっちから手を出しておいて逃げるなんて事はしたくない、そんなのカッコ悪い。
〈安心しろ、あの女の力は有限だ、このまま結界を維持し続ければ底が付く。我らは無限、問題ない〉
「――――ゴクゴクゴクゴク……まだまだです、神術を使用する力を回復させる薬品は沢山あります、もはや無限の力です」
(おい、奴も無限のようだぞ?)
〈……なんて便利なアイテムだ。し、しかし液体だろ? 腹が膨れればそれまで、所詮有限の腹よ〉
――――その後も破壊を放ち、結界が壊れる寸前まで行っては修復され、フォルナが液体を飲む。
というのが繰り返された。何度も同じ事が繰り返される事で周りの熱はすっかり冷め、皆の顔から、いつ終わるんだよ? といった無言の圧が伝わって来る。
しかしフォルナ、あんなに薬を飲み続けて大丈夫なのだろうか? シャブづけだ、中毒になっちゃうよ? 顔色も心なしか悪いし、さっきからモジモジとしているがなんだ?
(ッ!?!? まさかこの女…………ヴァル、そのまま続けてくれ。あの女に水分を取らせ続けるんだ)
〈……こんな状況でも性欲か? その性癖、やめたほうがいいよ?〉
だって僕も飽きちゃったよ……最初はヴァルに申し訳なくて心が苦しかったけど、痛みに慣れ始めたのかヴァルも最初ほど苦しそうじゃなくなったし。
もう大丈夫じゃね? シリアス壊れたし、なんか大丈夫そうだよ? 強力な破壊、いっちゃいませんか?
「…………ウウェップ……苦しい……アンはいつまで待たせるのよ……」
『遊びは終わりだ、役者も観客も飽き飽きだ。ご退場願おう……破壊・守護』
ヴァルから放たれた強力無比な破壊の力。今までの力とは違う強圧がフォルナの結界に突き進む。
どんなに頑丈な守りも、どんなに頑強な護りも関係ないと言わんばかり、いとも簡単に結界を壊して見せた。
「ッッ!? ッく……なんでッ!!」
『動くな……再び結界を張るにも時間が掛かろう? それよりも我の方が早いぞ?』
再び結界を展開しようと動き出したフォルナ。それをヴァルが手の平をフォルナに向け、制止を促す。
少しでも動けば結界を破壊した力が自分に向けられると悟ったフォルナは、ただ立ち尽くす事しか出来なかった。
状況が変わった、ループから抜け出しました。
『さて……報いを受けてもらおうか? どこを壊されたい? どのように壊されたい?』
「わ、私に手を出せば、銀獅子のアンが黙ってはいませんよ!? アンはここ数年で、異常なほど力を付けました。そこのワンス以上ですよ!?」
銀獅子のアン。金竜と同じ金色神徒、実力はワンス以上か。
最上の色、紛れもなく強者、しかしそれは人間の枠の中での話。
『フハハハハ! 片腹……片胸痛いわ!! ここまで圧倒的な力を見せられておいて、何を言っている? 我はまだ本気を出していないぞ?』
「貴方の存在は完全に予想外よ!! そもそもなんで死なないのよ!? 心臓を貫いたはずなのに!!」
血が出ていない時点で気づかないのだろうか、普通ではない事を。
もの凄く痛かったよ、なんでか知らないけど感覚は生きているからね、体は死んでいるのに。痛みに耐えられなくて感覚を壊そうとしてしまったけど、ヴァルのお陰で助かった。
暑さも寒さも感じない、風を感じる事も、あの子の髪のサラサラも、胸を揉んでも何も感じないなんて嫌すぎる。
〈そんな子いるのか? オルに体を許す女など…………いるか、人間ではないがな〉
「そもそもなんでアンは……あの女は何をしているのよ!!!」
「――――ここにいるわよ?」
フォルナ以外の女の声が聞こえたと思った瞬間、目を疑うような光景が飛び込んできた。
フォルナの胸から生えた、銀色の鋭利な刃物。さっき僕が貫かれた時と同じ光景、心臓を一突きだ。今度は第三者として見る事になるとはね。
突然の事に処理が追い付かない。フォルナは刺された、誰に? 何故? 再び変わりそうな状況、黙って早く帰るんだった。
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