第三十四話 裏切り
「フォ、フォルナ? なんだその力は!? お前は何をしているんだ!?」
「……ふん! 私はね、ずっと前から金竜じゃないわ。契約したのよ、銀獅子と」
「銀獅子……契約だと? どういう事だ?」
ここで再び銀獅子の名が出て来るとは……契約とはなんだ? フォルナとは今日初めて言葉を交わしたんだ、何を契約したのか知らないが、どうして僕が刺されるという事になるのか。
「アンタ達の奇行に、私が気づいていないとでも思った? もう数年も前から知っている!! サードスの屑もウザかった……そんな時に銀獅子にスカウトされたのよ、私はそれに乗ったわ!」
知っていたのか……まぁ、あの熱量だ。普通に考えればどこかで知ってしまったと言うのも理解できなくはない。
「……奇行? なんの事か分からないが、俺達を裏切ると言うのか!?」
「黙れッ!! もちろん心に棘はあった……腐っても幼馴染、信頼していた。でもアンタ達は自分達の世界を優先していただけ、ただの隠れ蓑と言われ、私を殺すと言われた時に棘は抜け落ちた」
訳が分からないと言った表情のセカンディ。ゴメンよ、ちょっと君の記憶は壊れてしまっているんだ。
その横で顔を上げ始めたワンス。その目に生気はないが、何やら思う所があるといった様子だ。
「銀獅子のパーティーに加わる為の条件は二つ。六合窟以上の階層から宝を持ち帰る事、そして金竜を……壊滅状態に追い込む事」
なるほど、それで僕を刺して神器を奪ったのか。やめてよ……言ってくれたら神器なんてあげたのに、刺され損じゃないか。
「私は銀獅子から神宝を貸してもらった、もちろんそれだけではワンスを……その神剣を持っているワンスを殺す事など出来ない。でも幸運な事に、私はワンスより強者に出会った」
神宝? 神剣? 恐らく神器の事だろう、ワンスの剣ってそんな凄い物だったんだ。ワンスより強者……僕達の事だろうな、僕はまんまとこの女の策に嵌まってしまったという事か。
「上手く誘導すればアンタを殺してくれると思った。まさかここで奇行に及ぶとは思わなかったから若干計画が狂ったけど、何とかなったわ。アンタの剣を見事に破壊してくれた。その剣がなければ差ほど脅威ではない、セカンディはもっと雑魚……銀獅子のあの方には敵わない」
「……フォルナ、貴様が全ての元凶か……消え失せろ!! 神術・轟雷!!」
目に怒りの火を灯したワンスが立ち上がりフォルナに神術を放つ。
が……その力には以前ほどの圧がない。神剣が壊れてしまった影響なのか、弱体化しているのは明らかだ。その程度では、ウィッチですら突破出来なかった護りを突破出来はしない。
「ふふふ……一度言って見たかったわ、ワンス? その程度の力しかないの? 案外アンタも…………雑魚なのね」
やはり全く影響を受けていない。フォルナが展開している防御結界に揺らぎは見られない、完全に防がれてしまったようだ。
「無駄よ? 防御に全てをつぎ込んでいるの、アンタには崩せないわ。後は時間を稼ぐだけ……精々頑張ってみたら?」
「ワ、ワンス! フォルナを殺す気か!? まずは話を……」
「あれはもう仲間などではない、裏切り者だ」
元パーティー同士で言い争いをしている、この隙に逃げませんか? ヴァルは苦しそうだし、ウィッチもこの状況では苦戦するだろう。
別にフォルナは僕達を殺そうと言う訳ではない、僕達がいなくなっても問題ないはずだ。
〈……ダメだ。我らにこんな事をしておいて、破壊せねば気が済まん〉
(で、でも本調子じゃないじゃん! 体を治してから戻ってもいいからさ!)
『退けろ……ゴミども……それとも、まとめて死ぬか……?』
珍しくヴァルが言う事を聞いてくれない、ゆっくりと三人が言い争ってる場に近づき、警告する。
「貴方の力は知っていますが……その体で何が出来ると言うのです? さっさと逃げ出したらいかがですか?」
「……セカンディ、離れろ」
「……分かった」
僕達の力を身をもって知ったワンスがフォルナから離れる。セカンディは何か言いたい様子ではあったが、ワンスの並々ならぬ様子に素直に応じたようだ。
『あの時黙って魔者の餌に……しておけば良かったな。…………破壊』
「ッ!? なッ!?」
ヴァルが放った破壊の力、それはフォルナの結界とぶつかり轟音を響かせる。フォルナの結界には無数のヒビが入り、今にも砕け散ってしまいそう。
しかし、あと一歩と言う所ではあるのだろうか? 破壊の力は消失し、フォルナの結界は一瞬で修復された。
「は……ははははは!! 無駄よ! そんな事をしても無駄――――」
何度もヴァルから放たれる破壊の力、しかしその全ては防がれる。破壊出来そうなほどまで行くが、フォルナの結界も再生能力が高い。
ぶつけてもぶつけても、何度でも修復されてしまう。
「はぁ……はぁ……はぁ……無駄だと、言っているでしょう?」
『随分と、疲れているようだな? 神術は……有限だ、お前の限界が先か……我の限界が先か……試してみるか?』
ヴァルの言葉に恐怖で顔を引きつらせるフォルナ。ヴァルの狙いはこれのようだ、先ほどからあまり力を込めていないと思ったが、ワザと弱めの力を使う事で守る事しか出来ないフォルナに恐怖を与えているのか。
「そ、そう言う貴方も苦しそうではないですか! そのまま力を使い過ぎれば死にますよ!?」
『死ぬ訳……なかろう……我を誰だと……思っているのだ?』
言葉とは裏腹に苦しそうなヴァル。もういいよ! やめよう!? それかもっと大きな力を使ってさっさと決着を付けようよ!
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