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第三十三話 友の痛みは我が痛み

「ア……ガァ……い、痛い……」



 なんという痛みだ、こんな痛みがこの世にあるとは。死んでもおかしくないだろう痛みであるのに、死ぬ事も出来ずに痛みを傍受し続ける。


 頭がおかしくなってしまいそうだ、この痛みから逃げ出したい。



『グゥ……クゥゥ……』



 突然痛みが消えて楽になった、その代わりに聞こえてきたのはヴァルの苦悶の声。支配権を強制的に奪ったようだ。


 なんて奴、自ら痛みに飛び込むとは……僕のせいか、僕が弱いから、僕が招いた事で友が苦しんでしまっている。



(ヴァ、ヴァル! いいよ、戻して!! その痛みは僕の責任だ!!)


〈フハハ……ハハ。我は破壊神、最上の神、ぞ……? この程度の痛み、なんでも……ない〉



 そんなはずはない。ヴァルは破壊神、こんな痛みを、傷を負った事なんてないはずだ。再び強制的に支配権を奪おうとしても拒否される、この痛みの中拒否できるほどに精神力が強い。


 やっぱり最上の神は凄い、凄いなんて言う言葉は失礼か。至高にして崇高な存在、神様。そんな存在が僕の友だなんて、誇らしすぎる。



〈いた~いいた~い……泣いちゃいそう、我、泣いちゃいそう……〉



 ワザと弱音を吐いて僕を笑わそうとしているんだね? ありがとう、こんな状況でも僕の事を気遣ってくれる君が大好きだ。



〈……いや、本当に痛いの。本当に泣いちゃいそうなの〉



「――――あっははははは!! やっと隙を見せたわね!」



 胸にナイフが突き刺さったまま、声が聞こえた方を振り向く。


 そこにいたのは表情を醜悪に染めた女、フォルナ。



『き、貴様……やってくれ……たな』



 ヴァルが苦し紛れに圧を飛ばす。ヴァル、痛みを与えてしまった僕が言うのもなんだけど、僕がこの女と話すよ! 少しでも楽にしててくれ!!



「…………殺す……オルクス様になんて事を……楽に死ねると思うなよ! 人間!!」



 怒り狂ったウィッチがフォルナに神力を放つ。なんでこんな事をしたのか問い詰めたかったが仕方ない、ヴァルの苦しみを少しでも早く終わらせないと!



「ふふふ……あはははは!! なにそれ? アンタの力なんて私には効かないわ!!」



 な、なんだと!? ウィッチの力をまともに浴びたはずなのにピンピンしているフォルナ。確かに魅了の力は男に比べて女には効きづらいって話だけど、人間が抗えるのもじゃないはずだ!



〈神器を……神器を奪われた〉



 神器……そうか、あの神術を神力に変換する宝か! いつの間にかポケットに入れていた神器が無くなっている、刺された後でこの女に取られたようだ。


 狙いは、神器という事か?



「人間風情が……魅惑の契り!!」


「なぁッ……あっクゥゥゥ…………神術・守護領域!!」



 一瞬顔を歪めたフォルナだったがすぐに立ち直す。フォルナの周りに現れた不可視の領域がウィッチの神力に拮抗している。いくら神器とはいえ、フォルナ程度の術師が対抗できるものなのだろうか?


 その後拮抗を続けた力は両方とも消え失せ、再び場に静寂が戻った。



「驚いている様ね? そりゃ今までか弱い女を演じてきたもの、当然ね」


「演じていた……? いつからそんな事を……なんのために」



〔コイツ、オルクス様におかしな目を向けていました。あの神喰らいを破壊した時から、なにか企んでいるとは思っていて警戒していたのですが……申し訳ありません……〕


(そ、そんな! ウィッチは悪くないよ!)



「私はヒーラー、サポーターです。攻撃に乏しくとも、防御に関しては自信があります。神術・絶対領域!!」



 フォルナを中心とした光の結界が作り出される。その圧は先ほど以上、この結界を突破しフォルナに神力を届かせるには相当の力を込めないと難しいかもしれない。



〈我が、やる〉


(ヴァル……大丈夫なの?)


〈絶美神には難しい……あの強化、まだ何かあるぞ〉



 まだ何か……? 確かにフォルナの強化は異常だ。ウィッチの神力は相当に強力だったはず。それなのに神術でそれを完全に防いでいた。



〔神力をぶつけた瞬間、激しい抵抗力を感じました。あれは人間の抵抗力ではありません、恐らくもう一つ……神器を持っていると思います〕



「オルクスさん? 貴方の力は強大ですが、この絶対領域は絶対に破れない絶対の領域だから絶対領域と言うのです」


『絶対など……この世に、存在せん……我が破壊……してくれる』


「絶対絶対うるさいね」



 しかしウィッチの言う通り、神器をもう一つ持っていれば厳しいのかもしれない。神術を神力に変換する神器、抵抗力……己に影響する全ての負に抗う力を増幅させる神器とかだろうか?


 防御に徹したフォルナを打ち破る事は可能なのか?



〈可能だ、所詮は紛い物の力……我達の破壊は全てを破壊する……信じろ〉


(ヴァル……でも、体が……)



「フォ、フォルナ? なんだその力は!? お前は何をしているんだ?」



 この状況について行けないセカンディ、ワンスは凡そ把握しているのだろうが抜け殻状態、フォルナは一体何がしたいのだろう? いくら防御に優れていても、攻撃出来ないならジリ貧じゃないか。


 いったいこの女は、何が目的なんだ?


お読み頂き、ありがとうございます


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